あらすじ
一○年にわたるトロイア戦争の末期、物語は、激情家で心優しいギリシア軍第一の勇将アキレウスと王アガメムノンの、火を吐くような舌戦で始まる。トロイア軍の総大将ヘクトル、アキレウスの親友パトロクロス、その敵討ちに奮戦するアキレウスら、勇者たちの騎士道的な戦いと死を描いた大英雄叙事詩。格調高く明快な新訳。
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Posted by ブクログ
ホメロスの叙事詩。現代文と比較すると文章が少しだけ読みにくいかもしれないが、「トロイア全史」で全体像をつかんだ後に読むと、壮大で感動的な作品に感じられる。アキレウスが死すべき運命の戦いに向かっていくことの原因となるパトロクロスの死のくだりに涙が出る。
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アキレウスとアガメムノンと戦利品の女性をめぐる対立。ギリシア軍を襲う疫病。戦闘への参加を拒否し自分の船に引き籠るアキレウス。メネラオスとアレクサンドロスの一騎打ち。ディオメディスの奮戦。ディオメディス、オデュッセウスの偵察。ドロンの殺害。ヘクトル率いるトロイア勢の猛攻。突破される防壁。
1996年7月18日再読
Posted by ブクログ
トロイア戦争の末期を描いた叙事詩で、主人公アキレウスはギリシア軍として戦っていたが、アガメムノンとの対立により、しばらくの間は登場しない。一方、トロイア軍として戦いに励んだヘクトルはギリシア軍の実力者と一戦を交えるなど、攻防戦が次々と展開される。また、オリュンポスで、ゼウスは中立的な立ち位置で戦争の様子を俯瞰し、アテネやアポロンなどの神々はギリシア、トロイアのどちらかに加担して、時には助けたりするというように、神々の間でも対立が生じる。
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長い。
読書苦手なので読むのが大変でした。
ヘクトールの亡きがらをアキレウスが引き摺ったという話の真偽を確かめたく、原典に近そうということでこちらを読みました。
結果的には自陣にヘクトールの亡きがらを運ぶために引き摺ったのみならず、毎朝の日課のように、何日か、何回か、引き摺っていたので、答えは得られました。ただ、アキレウスが引き摺った心境も理由もちゃんと書かれていますので、腑には落ちます。
アレキサンダー大王がファンになるのも納得です、読めてよかったです。見方を変えれば、領土拡大思想に取り憑かれる権力者が好きな話なのかもしれません。
現代人も抱えている名前を残さないで死ぬ恐怖。何ものかにならないと生きる意味がないのか。
他人を害してまで名声は必要なのか。
近しい人と過ごす何もない安らぎの日々では足りないのか。
自尊心の高いアキレウス。
戦争のさなかの名声を求める心と、アガメムノンへの憤り、もういっそ故郷へ帰ってしまおうか、と考えたり。嫌なことされたら母に言いつけたり。
アキレウスは両極に引きちぎられるように自らの激しい気性に振り回されます。
武勇と妻子を愛したヘクトールの最期の揺らぎ、
メネラオスの戦禍での悲痛な叫び。
アキレウスの復讐。
12人、殺すために選ぶシーンがあるのですが、
あの時は捕虜にしたのはパトロクロスが言ったから、けれどもう…というような部分。半神アキレウスの人間らしさを繋ぎ止めていた楔、
「アキレウスはパトロクロスにおいてだけ辛うじて人間性につながっており」p164 『イーリアス』ギリシア英雄叙事詩の世界 (岩波セミナーブックス)
父に愛され、神に愛され、友に恵まれ、美しい。そんな人が戦争の中で育ち、父にも会えなくなり、友も殺されて、一つ一つ剥奪されていき、嫌いな言葉ですが「無敵の人」になっていく様だと思っています。
プラトンの饗宴p46「パトロクロスのあとを追い、自分も一緒に死のうとしたのです」とあるのですが、この解釈だとアキレウスの戦争を使って殺されるまで殺すタイプの自殺に巻き込まれたトロイアの人々はたまったものではないですね。
メネラオスのように戦争をはじめた側が、長々と続く殺し合いに嘆き、それでももうどちらも終われない、怒りは甘く。死すべき人間は脆く。臓腑の河で血に濡れる人界と、ネクタルをあおるオリュンポスの神々。叙事詩の環。トロイの木馬はまだ出ません。
イリアスの登場人物は、原始的な素直さ、と訳者か誰かが称していましたが、人類史における戦争の繰り返しで、人間が共通理念として獲得した表層的な理性がイリアス内では未発達です。
人や人以外の動物は人間のエゴで殺してはいけなくて、他人のものは奪ってはいけなくて、死体蹴りはしてはいけない。
すべてが守られてはいません。
いえ、未発達…なのではなく、原始的な素直さ、つまり、これが人間の本来の姿なのかもしれないなとも思いました。ただ、現代の書物では、それらが、非倫理的という前提条件で書かれているのに、イリアスではこれが正当なこととして何ら疑問も無く書かれている節があり、それが本当に不安な気持ちにさせるのです。
昔、ドキュメンタリー番組でどこかの原住民の子供たちが猿の死体で遊んでいるのをみた時に感じた時のあの気持ち。現代人も教育を受け共通の理性の白粉を塗っただけで、本当の姿はこっち。原始的な生き物でしか無いのだろう。今後とも人間は何度も戦争をして、世界が統一されるまで戦争し続けて、一つになったとしても隣人を殺し、不審は増して少なく産んで、緩やかに滅びるのでは。と。
小規模戦争の形跡がトロイアから出てるらしく、トロイア戦争の実際は航路の拡大戦争とかの説もあるらしいです。ギリシャとトルコの戦争をギリシャ側がこんな神話にしたとしたらこんなグロテスクなことはないなと思います。
女奴隷たちが空気なのにまともに考え始めると境遇が地獄すぎる点が気分的にマイナス100億点、比喩が多すぎて話が進まない、盾の説明が超絶長いなどひっくるめて星4つでお願いいたします。
よみおわって2年くらいなのですがやはり未だに考えてしまう。そういう作品です。