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Posted by ブクログ
没頭してしまった。結末はもちろんわかっているのだが、判官びいきというか、トロイエ方を応援したくなる。ヘクトルがアルゴス方の防壁を破った瞬間は『このままアガメムノンを討て!』と思ってしまった。それ故、アキレウスの本格的な参戦を望みつつ、彼がいなければ或いは、とか妄想したり。理屈はともかく没入感があった。
比喩表現も素晴らしい。本巻の終盤、拮抗する両勢力を『日銭稼ぎの実直な女(糸を紡いで稼ぐ貧しい女)が、子らのため僅かばかりの手間賃を得るために、秤を手にして、両の皿に錘りと羊毛を載せ、持ち上げながら釣合いをとろうとする』などと表現する。羊毛の皿(トロイエ方)が少しでも重くあって欲しいと願うゼウスの影を見るのは、ただの深読み(勘違い)だろうか笑
興味深いのは、戦局や各々の命運が神々の意向によって大きく左右されているという点である。一般的には、強固な意思をもった人間が、運命に抗い立ち向う物語が好まれるものだが、この叙事詩では如何に神々を味方につけるかがキーポイントであるかのような語り口が見られる。高貴さ・勇敢さ・合理性を兼ね備えていながら、霊的なものも信じている古代ギリシャの戦士たちの心理描写や台詞は、本当に魅力的である。
下巻も引き続き楽しみたい。
Posted by ブクログ
紀元前8世紀ごろ口頭詩として制作されたとされる長編叙事詩。ギリシャ神話を題材とした、トロイア戦争を描く。
概要は有名な話であるし、2004年の映画『トロイ』も観ていたので、大ざっぱな筋書きは知っているつもりで、原典となる本作に挑戦してみた。すでに戦争が10年経過しているところから始まり、冒頭からアキレウスとアガメムノンのケンカが始まるので、多少の予備知識がないとやや面食らうかも。パリスがヘレネを連れ去ったという戦争の原因についても、知っている前提として話が進む。
映画と決定的に違うのは「神々の介入」。オリュンポスの神々が、それぞれのひいきの軍の動向を見守り、敵軍を支援する神を相手に言い争いをしたり、場合によっては肉体を持って自ら戦場におもむき掩護したりする。さらには、ゼウスがイデの山上から戦場を眺めながら、トロイエの勝利のためにあれこれ画策をしたり、お気に入りのヘクトルを守ったり。まるでお茶の間で巨人ファンの父親と阪神ファンの長男が推しの選手をネタに言い争っているかのごとく、またはシム系のシミュレーションゲーム(ストラテジーゲーム)をプレイして各ユニットやキャラクターに干渉するかのごとくである。これによって聞く側(読者)は、人間たちのドラマとそれを俯瞰する神々、両方の間に視点を持つことになり、物語に独特な味わいを生んでいる。こういった要素を現代の基準で映像化するのは難しいだろう。舞台上の演劇ならともかく、映画やTVドラマのような映像作品でこれをやってしまうとコメディになりかねない。先述の映画『トロイ』では、神々の要素をざっくりカットして、純粋に人間どうしの戦記ものとして描いており、これには賛否あるようだが、原典に触れてみた今、これは英断だったと思わざるをえない。
もうひとつ気になったのは、ギリシャ神話をモチーフにした作品ではよくあることかもしれないが、人物名の多さに辟易したこと。クリュセスにクリュセイス、プリアモスにブリセイスなど、語感が似た名前も混乱する。とはいえ、主要な人物さえ把握してしまえば、人名の80%くらいはどうでもいいやつだと後で気づいた。なのでこれから読む際にはご留意いただきたい。
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