あらすじ
全盛を支えた名妓から、淋しい晩年を看取った娘分まで――。スーパースターと五人の女が現代に甦る。
時代の絶頂を極め、近代落語の祖といわれた大名人・三遊亭円朝と、彼を愛した五人の女。
江戸から明治に変わる歴史の転換期を乗り越えた、大名人と女たちの人生が深い感慨を呼ぶ傑作時代小説。
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Posted by ブクログ
江戸末期から明治まで、近代落語の祖と言われた大名人、三遊亭円朝と関わりの深かった女性たちを、身近にいた五厘の目線で噺家の語り口で綴る。
面白かった〜。
落語のことはほとんど知らないのですが、
噺家の生活、江戸時代においては身分などもなかったこと、
吉原のこと、明治になってからの戦争のこと、
鮮やかに情景が目に浮かぶほど細やかな描写で、
それでいて噺家の語り口なので飽きずに楽しく読めました。
円朝を愛した女たち、吉原の花魁、芸者、旗本の娘、など、
複雑な心情を側で見ていた語り手の優しさがいい。
円朝の本心はわからないけれど、語り手が円朝の表情を
話すだけで、その空気感が伝わってくる。
絶頂を極めた円朝も晩年は寂しい様子だったことも描かれる。
庶民の目から見た時代小説。
傑作です。
Posted by ブクログ
落語が好きで、「塩原多助」も、「真景累ヶ淵」も、昔、『明治文学全集』で読んだことがある。
まったく読んだことがない作家の作品だけれど、数年前からずっと気になっていた。
円朝のおかみさんとなったお幸、円朝の子を産んだお里、ひょんなことから関わりを持った長門太夫、養女お節などの女性たちとのかかわりを通して、円朝の半生が浮かび上がってくる仕掛けの小説だった。
それを語るのは、円朝の弟子で、今や本業では食いあげて、五厘という、芸人にくっついて上前をはねる仕事(今でいうならマネージャー?)となった八。
まず印象的なのは、本当に聞こえてくるかのような、歯切れのいい江戸弁。
これに惚れ惚れしてしまう。
江戸っ子の痩せ我慢や、そこに根差す粋。
絶対自分には無理(笑)
円朝の語り口がどんなものかも描かれていて、想像を掻き立てられる。
怪談になるとわざと声を細めて粘っこい話し方をする、なんてある。
小さな声でもよく通った、などとも書いてある。
どんな風だったのだろう。
タイムスリップして聞いてみたい。
怖がりで、だからこそ怪談話に強みがあったという分析も面白い。
Posted by ブクログ
内容(「BOOK」データベースより)
時代の絶頂を極め、近代落語の祖と言われた大名人・三遊亭円朝と彼を愛した五人の女。江戸から明治に変わる歴史の大転換期に生きた彼らの姿、いつの世も深く果てない男女の仲を、語りの名手がいま鮮やかに炙り出す―全盛を支えた名妓から、淋しい晩年を看取った娘分まで、女を活写する傑作時代小説。
Posted by ブクログ
伝法な口調の「語り手」の地の文のおかげで、とにかくスピード感を持って読める。
主人公は円朝自身ではなく、あくまでその周辺の「女」であることが
他の円朝ものとは違う利点。
うむ面白い。
いろんな女。
ただ決め手に欠ける。
そんな読後感。