【感想・ネタバレ】遅刻してくれて、ありがとう(下) 常識が通じない時代の生き方のレビュー

あらすじ

■ピュリツァー賞を3度受賞した世界的ジャーナリストが放つ、全米大ベストセラー!

■1970年代から2000年代初頭にかけて高賃金で中スキルの仕事がなくなり、ミドルクラスが消えた。
グローバリゼーションとテクノロジーが、必須スキルのレベルを引き上げたのだ。
大人になるまで学校に通って「勉強はおしまい」という時代は、もう戻ってこない。
生涯にわたって稼ぐ能力を維持するには、一生学びつづけなければならないのだ。

■協力、共感、柔軟性といったロボットに欠けたスキルを身につけ、人並みに暮らすにはどうしたらいいのか?
人間がAIの力を借りて、もっと生産的で豊かになるような未来を描くには、どうしたらいいのか?

■私たちは移行期にいる。容易ならざる環境だ。
だが人類はこういう移行を何度も行なってきたし、今回もできると確信している。

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Posted by ブクログ

2001年から2016年に世界におきた、イノベーションとグロバリゼーションが世界に与えたものは何かをよく考えようというのが読者への投げかけです。
854頁におよぶトーマス・フリードマンの大作、読みでがありました。
下巻は、地政学的見地から世界の変化を考察するところから、コミュニティの重要さまでを描きます。

結論は、こうです。
「アメリカの悪いところは、無数のコミュニティ、田園地帯、都市部の多くが崩壊していることだ。
しかし、いまのアメリカの良さは、団結して、市民が自分の将来に責任を持てるようにスキルとチャンスを得るのを手助けしているコミュニティや地域も、無数にあることだ。
強権をふるう男ではなく、強力なコミュニティのみが、アメリカを再び偉大にする」

歴史のブレークポイントは、3つ
2001年 グランドゼロ
2007年 デジタル・テクノロジー
2008年 リーマンショック

グローバリゼーションと、テクノロジー、気候変動の同時進行が、中流を支えてきた、高賃金で中スキルの仕事が、高賃金で高スキルの仕事と、低賃金で低スキルの仕事に二分されていく。それが個人のスキルの習得や、社会の制度の変化に追いつかない状況で起きていくといっています。

下巻で気になって点は、次の通りです。
・第二次世界大戦からベルリンの壁崩壊までの期間は、信じられないような経済的平穏期間だった。ために、政治にも平穏を安定をもたらした。あらゆる人々を受け入れ、移民になることが容易だった。
・崩壊しかかっている国はほとんどといっていいほど、国境が直線になっている。19世紀の版図か植民地だったためで、民族、宗教、人種、部族とは無関係に国境が引かれ地形すら考慮されていないからだ。
・アラブの春は、スマホのソーシャルメディアに大きな潜在力があることを明らかにしたが、同時に大きな弱点も暴かれた。ソーシャルメディアでは意思の統一ははかれない。
・リーダシップが誕生するまでの期間を短縮することはむずかしい。シャルル・ドゴール、ドワイト・アイゼンハワー、ジョージ・ワシントンは、もがき、倒れ、起き上がっては連合を1つづつ積み上げて指導者になり、偉人になった。
・ロシアや、中国がサイバー攻撃という非対称戦を実行したのは、ほとんどコストがかからないため、西側では個人が法的に保護されているが、ロシアでは、メディアが規制されているので情報が広い範囲に行き渡るのを防げる
・愚かな人間の行為を浄化できるのは、母なる自然しかない。
・両親は私が幼いころから、人種差別主義者にならないよう私に教えたが、言葉でそう導いたわけではなかった
・アメリカ史としてみんなが陶酔していた最高の時代とは:公共政策と政治がうまく機能しつづけ、排他的でない政治が行われるためには、パイの拡大が欠かせない。収入格差が縮まり、繁栄が共有されて高い成長と高い平等がもたらされた。
・愛着をもって区域と結びつき、社会で私たちが属しているその小さな集団を愛することは、公共への情愛の起源である。
・彼らが信頼を示そうとする前に、私のほうから信頼を示すのです。
・だれもが、自分の習慣をまもってよいが、その根底にある特定の価値観、女性、法の支配、さまざまな宗教、公的機関、コミュニティの空間をどう扱うか をゆるがせにしてはならない。
・ヨーロッパの多くの国では移民をその国の主流の文化に溶け込ませるのに失敗したために、高い代償をはらった。分離したり、隔離したりする未来よりも、共有する未来の方がのぞましい。それには、信頼を打ちたてることがもっとも重要なのです。
・加速の時代には、学校とその後の人生で、だれもが、腕をあげなければならないということだ。そのためには、もう取り残される子供がいる状況を見過ごしている余裕はない。
・思いやりのある大人やメンターが若者にとって死活にかかわるくらいに重要だということだ

目次は以下です。

<上巻>
Part1 熟考
 1 遅刻してくれてありがとう
Part2 加速
 2 2007年にいったいなにが起きたのか?
 3 ムーアの法則
 4 スーパーノバ
 5 市場
 6 母なる自然
Part3 イノベーティング
 7 とにかく速すぎる
 8 AIをIAに変える

<下巻>
 9 制御対混沌
10 政治のメンターとしての母なる自然
11 サイバースペースに神はいるか?
12 いつの目もミネソタを探して
13 故郷にふたたび帰れる(それに帰るべきだ)
Part4 根をおろす
14 ミネソタから世界へ、そして帰ってくる
<その後>それでも楽観主義者でいられる

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2022年07月06日

Posted by ブクログ

しいて言えばテクノロジーの良い影響を描いた上巻に比べ、その負の側面を描いている印象。後半は著者の故郷であるミネソタの話になります。面白いし勉強になるけど、やや散漫な印象と言うのは言い過ぎ?

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2018年09月04日

Posted by ブクログ

フリードマンが「フラット化する世界」を著したのは2005年。世界はフラット化しつつも、まだiPhoneもfacebookもない時代だった。

今では、とてつもないスピードで生活、環境が変化し、人々は立ち止まり考えるヒマもなく、予定を詰め込み、スマホで写真を取りアップすることに忙しい。しかし、環境破壊は臨界点を越えつつあり、多様性とレジリエンスは劣化し、世界は分断化の方向へ向かう。それでも変化のスピードは加速度を増し、AI、バイオテクノロジーが更なる激変をもたらす。

それでも。とフリードマンは言う。立ち止まって考えよう。新しい時代に適応するため、学び続けよう。まだ我々には多様性を受け入れ、人々を守り、成長させるコミュニティがあるじゃないか。みなが協力してテクノロジーを使いこなしていけば、まだ間に合うかもしれない。

2016年の作品で、分断化し、トランプに救いを求めたアメリカ社会の様子を色濃く感じさせる作品。とんでもないスピードで変化(進化?)が進む中、それぞれが身の回りコミュニティを健全なものにしていくことにすがりたくなる気持ちには共感はできるけど、実際の生活でできるだろうか。。

ベストセラーだけあって、読みごたえありです。

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2019年07月06日

Posted by ブクログ

 本書の作者フリードマンの名著「フラット化する世界」が発売されたのは2005年だという。私が読んだのはその数年後だと思うが、インターネットの普及が先進国と新興国の格差を縮小させ世界をフラット化させる、との内容(だったと記憶している)が、その通りになったので洞察の正しさに感服した覚えがある。
 本書は、その後の技術や政治、社会の進展から今後の生き方までを考察したものである。技術的にはクラウドやAIの進化であり、社会は貧富など格差が広がり、世界は気候変動や難民増加で混乱が進んだ。これらを解決するには、人々が助け合って暮らすようなコミュニティが説いている。作者が子供の頃に過ごした社会がそうだったという。
 なんか、年寄りの回顧話の感があるが、さてどうだろう。世界はそのようには進んでいないようだし、フリードマンの洞察に感心する日が再びくるだろうか。

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2019年06月15日

Posted by ブクログ

ミミクリー
ポスト聖書の世界では、この世の最初の日から、神は選択を人間に任せたのだと考える
ミネソタ州セントルイスパーク:多様性を受け入れる努力

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2019年04月09日

Posted by ブクログ

上巻よりも劣る内容。躍動感は感じなかったが、それは米国の事を自分ごとで捉えられないからだろう。
しかし、フリードマン氏の楽観主義にはいつも勇気付けられる。
テネシー州ノックスビルを昨年訪れていた偶然を、フラット化する世界読書時に登場人物と仕事をしていた経験と重なり、また本書も印象に残る作品となった。

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2018年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

加速の時代に対する著者の答えはコミュニティの再生である。

クリントン曰く、「アメリカの良さで治せない、アメリカの悪いところは一つもない」そうだが、著者もまた楽観主義をベースに、各地でコミュニティが再生されることを信じるのだという。

上巻はともかく、下巻はちょっとセンチメンタルな議論に走りすぎのように思えた。

また、「多文化を受け入れ、生涯学習の可能な都市部に暮らすことがアメリカンドリームにしがみつくための前提になる」というのも前作の否定のようでちょっと受け入れ難い

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2018年08月04日

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