あらすじ
おいしくて、いとおしい。 同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。 山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。 それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。 巻末に番外編を収録。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
『食堂かたつむり』を読み終えて、涙が止まらなかった。
本を読んでここまで声を上げて泣いたのは、生まれて初めてだと思う。
“命はどれほど大切なものなのか”という問いが、静かに、だけど強く胸の奥に突き刺さった。
物語が進むにつれて、お母さんの倫子への愛情が少しずつ明らかになっていく。
派手に示される愛じゃない。
人目につかないところで、そっと積み重ねられてきた愛。
その存在に気づいた瞬間、胸が締め付けられて、最後の手紙ではもう涙を抑えられなかった。
エルメスのシーンは言葉にできないほど心を揺さぶられた。
様々な事情を理解したうえで、自ら解体されるために歩み寄る姿は、残酷で、優しくて、尊くて、悲しくて…
大切な存在の死を経験したことのある人なら、きっと涙せずにはいられないと思う。
そして、料理によって人が幸せになっていく描写がとても好きだ。
「料理は祈りそのもの」という言葉が強く心に残った。
誰かのために作る料理は、“幸せになってほしい”という願いの形なんだと気づかせてくれる。
読み終えた今、胸にぽっかり穴が空いたような寂しさと、確かに温かいものが残っている。
『食堂かたつむり』は、間違いなく大切な一冊になった。
出会えて本当に良かった。
Posted by ブクログ
主人公が地元の田舎に引っ越すところから物語がはじまるのでもうこの時点で引き込まれた。これ好きだなって思った。
好きな本はやっぱりところどころ印象に残ったシーンがよく記憶に残っていて、
彼氏にありとあらゆる物を盗まれて絶望するところ(主人公は反応薄く感じたけど読んでいる私の方がショックだった)や、お店を開いてそこに訪れる人たちの物語の雰囲気の良さ、自然豊かな環境、飼っていた豚を解体して食事にしていただくところなど全てがもう魅力的で素敵で読んでいてとても楽しかったし癒された。
解体するところは辛く感じたけど、ものすごく食事に対する意識について考えさせられた。
辛いけど実際当たり前に食べているのだから、こういう仕事をしてくださる方がいることや食べられる動物たちのことを考えるきっかけって必要だなって思った。
可哀想だから食べない、とはならないけどスーパーとかに並べられる肉そのものだけ見ていてもパッと解体される様子が結びつかなくて、感謝の気持ちって忘れてしまいがちなことなので時々思い返したいなと思う。
初めての小川糸さんの作品だった。
この本を読んでもっと小川糸さんの本読みたい!って思った。有名なだけあって本当に素敵な物語だったな。
Posted by ブクログ
優しい気持ちになれる本
美味しいものを自分がすきな人と食べられる時間が何より幸せだよなぁと改めて感じた
初めは主人公にとって最大の宿敵だったオカンが、最後は自分にとっての味方になっていて
もう取り返しがつかない、なくなってから気づくことの方が多い