【感想・ネタバレ】風魔(下)のレビュー

あらすじ

天下を取った家康の、唯一の気がかりは小太郎率いる風魔(ふうま)衆だった。折しも新開地江戸で、日本橋の大店(おおだな)が兇賊に蹂躙される。何者の仕業か? 徳川忍び衆総帥・柳生又右衛門は、小太郎一派に相違なしと断定、ここに風魔狩りの命が下った――。勝利するのは剣の極意か、徒手空拳の技か。乱世を締め括る影の英雄たちが、箱根山塊で激突する! 人気作家が放つ、圧倒的スケールと迫力の時代ロマン巨編(全3巻)、堂々の完結編!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

上中下3巻ほとんど一気読み。

この小説は凄いわ。「剣豪将軍義輝」も「藩校早春賦」も「夏雲上がれ」もムッサオモロかったのに、何故か追いかけ忘れていた宮本昌孝、もっと早くに読めばよかったと思う反面、美味しいご馳走をここまで引き伸ばしてきたのがちょっと嬉しかったり…

さて、主人公の風魔小太郎は単独だと正直若干魅力に欠ける。強い、デカい、男前、優しい、義理堅い、モテる…完璧すぎてオモロくないのだ。だが主人公の周りを固める連中が実にいいのである。敵役の忍者連中、柳生又右衛門、服部半蔵、伊達政宗に豊臣秀吉、徳川家康、秀忠に至るまで、味わい深く、悪いやつは悪く、しぶといやつはしぶとく、道化は徹底的に道化で、天下人までもが風魔小太郎を彩るために踊ってみせる、彼等所謂脇役たる登場人物の名演が完璧すぎる主人公を見事に際立たせる。

時代小説作家の中でも剣戟シーンを名人級に描く宮本昌孝の筆で、彼等脇役たちVS風魔小太郎(及び風魔一族)の対決が描かれると、もう時間も何も忘れてひたすらページを繰るのみ、テンポとリズムが抜群に良くてボリュームたっぷりなのに、軽快さを感じるぐらい。まだるっこしい歴史解説などの中だるみすら休憩とか間とか好意的に捉えてしまう。

クライマックスから最後にかけて、これはもう男ならこういう風にカッチョ良くなりたいと、妄想重ねる素晴らしさ。そりゃ大もてするわ、とライバルならずとも嫉妬すら沸いてこない完敗気分である。最後まで読んだ人にだけ味わえるこの醍醐味がまた良い。

強い男たちが戦うあたりは夢枕獏的でもあり、隆慶一郎「影武者徳川家康」をリスペクトしているところもあり、忍びの小説と言う事で勿論山田風太郎リスペクトでもあり…、時代小説、歴史小説が好きな人には是非とも読んでもらいたい傑作である。

難点を言えば、簡単にたくさん人が死にすぎるとこかな。戦国群雄割拠の時代背景を考えるとこれはもうしゃーないんだけど、キラいな人はそこがひっかかるかも。

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2013年08月28日

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