【感想・ネタバレ】地球移動作戦(下)のレビュー

あらすじ

魅波は伯父のブレイドが拡張現実(AR)上で使用していたACOM(人工意識コンパニオン)のマイカを自分のパートナーにする。世論は人類救済策として、良輔が提唱した地球を移動させるアース・シフト案とジェノアPが提唱した人工意識(AC)に人類の精神を受け継がせるセカンド・アース案に、二分されていた。魅波は父の代理として公開討論会に出席する決心をするが……地球に迫る巨大な厄災を前に、この星は大きな選択の時を迎える。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

天体衝突を避けるために知恵を絞る大仕掛けなSF

遊星のニアミスによる大災害を必死で避けて、最後に残るのが地震と津波なので、この時期に出したのは英断かもしれない。
文庫版の後書きは震災に言及があった。私は、被害者に配慮して話題そのものも避けるという意見にはあまり賛同しない。災害に立ち向かう力強い物語は、読む人を元気づけることもあると思う。
SF的なガジェットの大きなものは、おおよそ3点。
夢のタキオン駆動装置、ミラー物質で構成される、見えないけど重力のある遊星。仮想現実に住む人工知能。
見えない遊星が危機を作り、現代科学ではとても不可能な対策に、タキオン駆動装置を使うことでぎりぎりの答えを導く。人工知能は添え物のようではあるが、山本弘SFではある意味主題だ。ここではAIは多くが肉体を持たないが、人との関わりはアシモフ以来のパートナーとして重みを増し、共に歩む隣人として、大きな存在になっている。
ミラー物質天体や、タキオン機関を使った大仕掛は、そのようなものがあったとした世界での、知恵パズルが淀みなく展開されて、面白かった。こういうお話で、決定的な敗北はまず有り得ないにしろ、人間の及ぶ限界のプロジェクトという感触は良く描けていてのでないかと思う。
そして、半分ぐらい使って描かれる、神と人とAIの関わり。
この世界のAIは、無理に近い努力を諦める言い訳に使われかけて、人類を守るためにさらに衝撃的な事件を起こす。多くの人に友として認められたAIの人とはまた違う機微が面白い。こういうのだと、友人にも良いよなあ、と思う。

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2011年07月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 再接近時の地上でのカタストロフについては、文庫版の発売時期が時期だけに3月12日が色濃く思えますが、原書単行本は2009年刊なんですよね。ちなみに新規追加のあとがきの日付は2011年4月12日。

 主たるエネルギー機関にタキオン噛ませているので、情報の時間遡行ももちろん絡んでいます。それが本題じゃないのでかなり地味ですが(無ければ無いで問題ない構成ではある)。
 過去への警報で多元宇宙を分岐させている自覚は登場人物にもあるらしいので、当然作戦に失敗した時間軸もどこかに存在しているでしょうし、もっとうまい具合にTASって最良解を導き出した時間軸もあるのでしょう。

 本編以外で一つ気になったのは、上巻表紙のマイカかなぁ。あの容姿でツインテはミスマッチだと思うの。もうちょっと童顔なら…。

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2011年05月23日

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