あらすじ
ソクラテスは国家の名において処刑された。それを契機としてプラトンは、師が説きつづけた正義の徳の実現には人間の魂の在り方だけでなく、国家そのものを原理的に問わねばならぬと考えるに至る。この課題の追求の末に提示されるのが、本書の中心テーゼをなすあの哲人統治の思想に他ならなかった。プラトン対話篇中の最高峰。
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Posted by ブクログ
対話の流れがはやすぎて時々迷子になった。
興味深かったのが、どんな人にも固有にもつ才能があり、それを見つけ出して国家のために役立てることの重要性を話していた。
知識という言葉はあくまでもカテゴリーという意味づけで〇〇の知識という使われ方をしていることを再確認した。
Posted by ブクログ
中学生哲学。
「不正のほうが正義よりも得になるなどとは、けっして思わない。」
中学生日記のセリフかとも思えるこの一節。
これが対話篇の始まりであり、
国家論の始まりでもあり、
かつ実はこれが結論である。
Posted by ブクログ
訳が藤沢令夫氏で非常に読みやすい。1979年の訳とは思えない。
最初の正義問答は面白かったけど、すぐにソクラテスの独り舞台となってしまう…というか、「パイドン」といい、プラトンが自分の思想を開陳する時にそうなっているんじゃないかということに気づいた。アカデメイアの講義もこんな感じで、ひたすらよいしょされながら話を続けていたのだろうか。
正義とは何か→国家における正義とは何か→個人における正義とは何かという感じで探究する中でプラトン理想の国家について語るのが上巻の主な内容。有名な「知恵・気概・節制・正義」や哲人政治などの要素も出てくる。
私有財産や貧富の差が国家を堕落させる、というところから始まる理想の国家の中身は非常に全体主義的なもので、徹底した優生政策(出来の悪い人間が作った子供は殺す!)と無菌室のような教育によりそれを実現させようとするものである。共産主義っぽいけど、共産主義のほうが真似ているのか、思考の始まりからただ似通っているのかは勉強不足で分からない。子供は誰が誰の子供か分からないように育てて資質によって職業を決定すると言っていたかと思えば、のちの軍隊の運営の箇所で当たり前に職業世襲っぽいことを言っていたりとその時その時のトピックで場当たり的に話をしている感は否めないのだが、プラトンの理想主義と、理想にわずかの傷も許さない完璧主義は伝わってくる。やはり人間の繁栄を志そうとすれば優生思想に行き着くのは自然な成り行きなのだろうか、ということを少し考えた。
Posted by ブクログ
「お金の所有が最大の価値をもつのは、ほかならぬこのことに対してであると考える。……たとえ不本意ながらにせよ誰かを欺いたり嘘を言ったりしないとか、また、神に対してお供えすべきものをしないままで、あるいは人に対して金を借りたままで、びくびくしながらあの世へ去るといったことにないようにすること、このことのためにお金の所有は大いに役立つのである。」(26頁)
個人と国家の共通項を探し、一方を他方に当てはめている。
演繹のし過ぎ、というのは現代的な感覚だろうか。
優れた国家に必要な三つの徳…知恵、勇気、節制。
勇気と知恵は、国家のある特定の部分に存在するが、節制は国家の全体にいきわたっていて、支配関係について支配者と被支配者との間で合意されている状態(293頁~)。
上記3つの徳に匹敵するのが正義。
正義とは、自分が自分の仕事だけを果たすこと。
国家のためという観点から、男女の平等を肯定する(357頁~)。
望ましい国制を移行するためには、哲学者が王になって統治するという変革が必要である(404頁~)。