あらすじ
江戸時代に空を飛ぼうとした男がいた!
近江国友の鉄砲鍛冶の一貫斎は旺盛な好奇心から、失敗を重ねながらも反射望遠鏡を日本で最初に作り上げる。
「日本のダ・ヴィンチ」と呼ばれた男、稀代の発明家の生涯。
直木賞作家、山本兼一さんの遺作が文庫で登場。
江戸での訴訟に勝ち、国友村に戻った一貫斎は、江戸滞在中に請け負った反射望遠鏡の制作に夢中になった。
レンズの制作で、失敗を重ねる最中に、墨をすらないですむ「懐中筆」や油を足さない「玉燈」等を発明し、潜水艦も模索する。
後年日本のダ・ヴィンチと呼ばれる鉄砲鍛冶の生涯を描いた傑作時代職人小説。
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Posted by ブクログ
江戸時代のダ・ヴィンチと呼ばれた国友一貫斎の半生記。もともとは火縄銃職人なのだが、創意工夫が好きな発明家気質で、空気銃、天体望遠鏡、灯油ランプ、万年筆などをほぼ独力で発明した実在の人らしい。
エジソンもそうだが、とにかく失敗してもメゲない。失敗作の山を築きながら改善点を治しさらなる工夫を重ねて少しでも完成品に近づける、そのモチベーションが素晴らしい。
ただ残念ながら、損得勘定の観点から考えれば、必ずしも良いものでもないだろう。実際作品中でも「それをなんぼで売りまんの?」と突っ込まれるシーンも再々出てくる。夢をまことにするなら、現実(まこと)のツラさも克服しなければならないわけで…。
それでも、モノづくりに一意専心こだわり続け、空気が読めなくなって周りが見えなく、周囲から「変人」呼ばわりされても、気にせず自分の生き方を貫く姿勢。それでいて弱気な時は人の忠告に青ざめてうなだれる素直さ。こういう人物の生き方は読んでいて心地よい。下手な自己啓発本より勇気もやる気も沸いてくる。
「工夫し改善していくことの楽しさ」ならモノづくりじゃなくても、マラソンでもクライミングでも、仕事だけでなく趣味や生活の中でいっぱい味わえるやないか!
そう思えてきて、無性にソワソワとなってくる作品である。