あらすじ
比類なき崩壊の詩情、奇蹟の幻想譚。スペイン山奥の廃村で朽ちゆく男を描く、圧倒的死の予感に満ちた表題作に加え、傑作短篇「遮断機のない踏切」「不滅の小説」の二篇を収録。
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Posted by ブクログ
表題作を読み進めると季節的に今がぴったりだなと思いながら読んでいた。孤独や過去、亡霊と向き合い、側にいる雌犬と黄色い雨が降るこの村で死を待つお話。一人語りが続き、声帯を震わせた言葉は出てこない。静まり返り、朽ちていく村で言葉を発したところで誰かに(読んでいる自分のところにも)届くわけではないのだから。というような感じでずっと地の文が続きます。
終盤では私(父)が語り手だと思っていたのに、急に息子のアンドレスが語り手かのようにふるまう所でかなり混乱した(妻はサビーナってまだ言っているし)。語り手の私の命が尽きようとして全てが混沌としていく中で色んな境界が曖昧になっていき、このような語り口になったのかななんて考えてみたり。あとは訳者あとがきで驚いたのは舞台となるアイニェーリェ村は実在していたこと(すでに廃村)。他に短編が2つあるのだけどどちらも面白かった。
Posted by ブクログ
花ちゃんに出会ったばかりの頃におすすめして貰った本を、六年越しに見つけた。snowdropに売っていた。時間はかかるけれど、僕は忘れない。
黄色のことを真剣に考えたことがなかったと気付かされた。見過ごしてきた。この作品では、死に近しいものとして描かれている。そこに付随する懐かしさや風化してゆくさまなどと共に。
黄色というと、稲穂の実りや夕暮れのきらめきなどを想像する。黄色とは僕にとって一瞬間の光景であったのかもしれない。だからこそこの作品で段々と黄色に染まってゆく村の景色が新鮮で、それが死という永遠に向かってゆく道程がうつくしかった。
Posted by ブクログ
朽ちていく村に一人残った男。彼が生きているのか死んでいるのか、境目が曖昧に溶けていく。音もなく降る雪のような感触の文章にいつの間にか引き込まれていった。