【感想・ネタバレ】ビッグデータと人工知能 可能性と罠を見極めるのレビュー

あらすじ

ビッグデータ時代の到来、第三次AI(人工知能)ブームとディープラーニングの登場、さらに進化したAIが2045年に人間の知性を凌駕するというシンギュラリティ予測……。人間とAIはこれからどこへ向かっていくのか。本書は基礎情報学にもとづいて現在の動向と論点を明快に整理し分析。技術万能主義に警鐘を鳴らし、知識増幅と集合知を駆使することによって拓かれる未来の可能性を提示する。

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Posted by ブクログ

副題を意識しないままに読みはじめた。人工知能を完成させるためのビッグデータ……そんな誤解があった。しかし、本書を読み進めるうちに、人工知能に対する誤解や、SFに出てくる「意思」を持った機械、人類に君臨するコンピュータが出現することの困難さを理解できた。p.147「そういう疑問をふまえて、近未来のコンピュータ文明のあり方をさぐるのが本書の目的」が腑に落ちるのだ。基礎情報学をもっと知りたい。

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2023年11月18日

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近い将来AIに人間が振り回されるという状況にならないように、新設されるデジタル庁の方々にぜひ読んでいただきたいものだ。

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2021年01月20日

Posted by ブクログ

著者の作品は記憶にあるだけで、過去に2冊読んでいた。
「マルチメディア」「マルチメディア」
多分そのときにはそれほど印象に残らなかったのだが、今回は非常に感銘を受けた。

80年代からAIをタイトルにした著作があり、コンピュータの専門家である。
本作は比較的平易に書かれわかりやすい。

最も興味深かったのが、シンギュラリティを含め、AI・ロボットの可能性をほぼ否定しているところだ。

一般的には近い将来AIに人間が取って代わられる、所謂「シンギュラリティ」が問題としてメディアを賑わせている。
どちらかというと、それは決定事項として語られる。
しかし、著者はそんな心配はしなくても良いと説く。
AIと人間には決定的な違いがあり、それは理論的に超える事ができないのだと。
マインドアップローディングやシンギュラリティなどSFの世界のおとぎ話であると。

思えば「2001年宇宙の旅」でHAL9000に宇宙飛行士は殺される。
鉄腕アトムは人間の指示を無視して太陽に突っ込んでいった。
両者はAIについて逆の可能性を見ているが、早くからシンギュラリティを夢見ていたということか。

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2018年12月18日

Posted by ブクログ

昨今のIT産業の背後にある文化的な思い込みというのが非常によくわかる。技術は中立であるが、その運用やそれを取り巻く言説は、中立ではありえない。
つい先日読み終えた「ダーウィンの思想」と同様、科学の成果の背景にある考え方を強く意識する必要がある。

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2017年09月17日

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ずっと日本のコンピュータの進歩に携わってきた著者のAIに対する俯瞰した冷静な視点を知りたくて開いた新書でした。が、熱い熱いアンチ・シンギュラリティ論でした。その熱さは著者も関わった1980年代の日本の第五世代コンピュータプロジェクトの失敗体験から来ているのかもしれません。シンギュラリティを礼賛するカーツワイルの楽観主義をもともとコンピュータ開発の根本にあるユダヤ系普遍主義者たちの理想主義や宇宙観にあるとし、それを相対的文明論で批判していきます。そう、AIを理系の技術ではなく文系も巻き込んだ大きなテーマとしてみんなで考えることを提唱しています。AIと共生する時代のリベラルアーツの必要性を語る本でした。予想を超えた読後感。

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2017年03月25日

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今のIT業界のホットトピックである「AI」と「ビッグデータ」(ついでに「IoT」も)について、客観的かつ分かりやすく説明している本。一般人向けに丁寧に書かれており、非常に読みやすい。でも、AIに関して奇天烈な夢や妄想、あるいは情熱に取りつかれている業界人こそ、本書をしっかり読んでいただきたいものだと思う。
個人的に本書が優れていると思うのは、計算機(コンピュータ)は出現した時点で本質的に人工知能を志向していたという解釈と、その考え方を遡及するとヒルベルトに辿り着くとしているところ。だから、第1次AIブームの人工知能が、巨大な演繹マシンとして構想されたのは極めて自然なことなのである。
確率・統計と帰納・アブダクションから実用的なAIを実現しようする今の風潮は、私の価値観と真逆なので困っているんだよね。とはいえ、そのおかげで利権のおこぼれにありつけるのも事実だし、しばらくは隅っこで大人しくしているつもり。

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2017年03月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・ビックデータとプライバシー
ビックデータと個人情報保護の問題について。これはよく問題になりますが個人的には便利であれば人は自分の個人情報さらけ出すことに対して嫌悪感がそれほどないのではないかと思います。例えばスマートフォンをみんな所持してますよね。GPSがついているので、いつどこにいたっていうこと情報が世に流れており、それを追跡すれば誰がどの会社が働いてるなどいった情報はすぐにわかります。またfacebookやラインといったサービスなんて誰と誰がどのような繋がりがあるかということを簡単に提供しているわけですけれども便利さに魅了されてそんなこと気にしてない人のほうが多いと思います。それが何故かニュースではある企業から個人情報が漏れたと大騒ぎしていますが、少しセンシティブになりすぎなんじゃないかなと個人的には思います。といった当たり前の問題には触れられてなくて、問題なのは企業が顧客に対して行う告知が難しくなることだと言っている。企業は顧客から集められる情報をこんな風に使いますと告知を行うのですが、ビックデータを分析できるようになってからはその告知をとる時点でどのようなデータと組み合わせでどのような分析をするかってとういところまで言いきれないということが問題だと提言しています。また、ビックデータ分析によって人の行動パターンを予測しすぎて人の人権を侵害してしまうのではないかというよくある問題についても触れられています。例えば幼児を対象とした性犯罪を犯す人物はこういった身体的特徴や性格を持っているだから監視しようとなってしまっていいのか、ということです。これは、もともと人間は他者を評価するときにある一定のステレオタイプを介して判断しているのと同じだと思いますし、むしろ、ひとの偏ったステレオタイプよりもデータを分析してわかった結果のほうが完璧とはいいませんけどまだマシなんじゃないないでしょうか。という一般的な議論はやはり通り越していて、筆者としての問題提起はデータ分析をして出てきた結果のせいで誤認逮捕してしまったとなったときに責任の所在がプログラマになるのかそれともそのデータを活用した人になるのかそれが曖昧なるということです。






・機械と生物の違い
機械と人間が大きな違いは「臨機応変さ」と「優先順位の変更能力」です。例えば機械のプログラミングするときはプログラマーがプロブラムを起動させる際に起こりうることをあらかじめ想定してプログラムを書きます。その起こりうることからもれた事象が発生するとエラーとなってしまいます。例えば最近やったことでいえば、エクセルである列に入っている月の三ヶ月前のその右に表示するという簡単なプログラムを作ったのですか、単純に考えてマイナス3すればいいだけですけれども1月2月3月をただ単にマイナス3してしまうと-2月-1月0月となってしまいます。人間の場合そこは臨機応変に判断できるというのが違いです。優先順位の変更能力ですが、例えば今話題の自動運転だと、目的地を設定すれば渋滞などスルスル避けて最短の時間で目的を達成する能力をすごく高いのですが、その過程で家族が倒れていたりしても素通りしてしまいます。人間だったらすぐさまに目的地を変更して助けよう気持ちが普通は働きます。つまり、人工知能はある目標に向かって効率的に進むことは大得意なのですが、途中で別の優先すべき問題がおこった時対処するのが難しいのです。

・文系と理系の融合が必要だ。
ITの改革がそれほど進んでいない理由はやはり文系と理系がきっぱり別れすぎていることだと考えています。一昔前までは理系の人はとりわけITに関する人はコンピュータの前だけで作業していればよく文系の人もそれをマネジメントするだけでよかったのですがITの発達によって、スマートフォンやIoTのようにありとあらゆるものにITが介在するようになり、IT抜きにもう企業戦略や政治や経済を考えることができなくなりました。それにも関わらず文系と理系の融合がなかなか進まないのは文系の人にも理系の人の意識に問題があると思います。文系の人は理系の人をただの技術屋だと思っていて必要なときにただ請負として利用している、ある意味で見下しているケースがあると思います。また、理系なんて全くわからないと考えることを放棄してしまっているとい人もいるでしょう。また理系のひとで自分の趣味だけにもっとして会社の未来なんてどうでもいいや社会なんてどうでもいいやと考えて文系の分野に全く関心持たない人が多いことが文系と理系がなかなか繋がらない大きな理由です。この問題を解決する方法はコテコテの文系の人の中でもある程度理系に理解がある人一方でコテコテの理系の中でも文系にある程度興味を示している人をいかに見つけるかが大事。また、それを繋げれるような人材も大事だと思います。要するに相手の立場に立って物事を考えられる人が必要になってきます。

・スペシャリストとジャネラリストの関係
これは凄く面白い。著者的にはインターネットの発達によって情報量が増えすぎ人がスペシャリストになることさえも大変な時代になっていると感じている。より、専門家が知り得る領域がどんどんどんどん狭くなっているという問題提起をしています。そうなってしまうと他人への理解がまったくなくなってしまって、もともとかいきにくい世の中になるじゃないかとおっしゃっています。しかし、これを解決するのもインターネットで、うまく活用すればたくさんの人の意見をすぐに集約することができ、ある意味でゼネラリストの意見をスペシャリスト受け取れる状況になっており、スペシャリストは自分の分野外の新たな知見を取り入れつつ自分の専門領域をさらに込めることができ、より一層よくなるのではないかと考えている。

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2017年02月10日

Posted by ブクログ

著者の見解にはおおむね同意です。
ただ,読み終わって少し経ってから,一つの疑問がふと頭に浮かびました。
「人間はミドリムシ一つ作れないのだから,より複雑な脳と同じ働きをするAIを作ることなどできない。」というアナロジィについてです。
ここで比較すべきは,「脳と同じ働きをするAI」(=脳の動きをシミュレーションするプログラム)と,「ミドリムシの動きを完璧にシミュレーションできるプログラム」ではないでしょうか。

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2016年11月17日

Posted by ブクログ

さすが西垣通と言わざるを得ない。
視点が高いし、指摘が的確すぎる。
最近再来した人工知能ブームやシンギュラリティということが強調されることに、どう説明したら良いのか分からない違和感の様なものがあったのだが、それに対して正面からばっさりという感じ。
ああ、やはりそうなんだと。でも今まで誰もそう言ってくれなかったから。
シャノンの情報理論から端を発する、情報にまつわる文系・理系の問題等これまで長いことモヤモヤしていたことにもスッキリ答えを貰えた気がする。
これは、タイトル以上に社会情報全般を網羅した標準テキストだと言えるのではないだろうか。
別の目的で購入したのに、読んで非常に得をした、大当たり。

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2016年11月02日

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ビッグデータ、人工知能両方の初心者の立場として本書を手に取りました。副題が「可能性と罠を見極める」ということで、本書はまさにその両方について書かれているのは理解できました。ビッグデータと人工知能はセットで考えるべきであること、また両者が掛け算されることでディープラーニングというテクニックが可能となって、ここから汎用人工知能や人知を超える?人工知能の可能性が議論されている、といったことが書かれていました。そして著者の一貫した主張は、「人工知能は人間を超えない」です。私自身はこの主張は説得力があったと思います。確かに特定分野では人間の能力を超えて何かができるとは思いますが、それをもってして人間を超えた、と判断するのは間違っているでしょう。この分野の新聞、雑誌記事は少し冷静な視点でこれから眺めてみたいと思いました。本書が面白かったのは、かなり哲学的な要素も入っていたことです。主観と客観の対比、オートポイエーシス理論、また宗教観などで、その多くは私も共感しました。情報学の中身に入ると、やさしく書かれているとはいえやはり意味がわかりづらい箇所が多かったのですが、大枠の意味は伝わりました。興味深く拝読させてもらいました。

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2023年04月30日

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これからの日本が迎えるであろうAI社会がどのようなものなのか、人間にどのような影響を与えるのかが分かった。映画で見るように人間の力を超越したAIが世界を支配するなどと人間に悪影響を与えることはないのかなと感じた。

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2020年08月11日

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情報工学の専門家によるビッグデータと人工知能に関する本。主として人工知能について、どういうものかが説明されている。今後どうなっていくかについては、人間の脳に並ぶとか超えることは考えられないというのが結論。人間の脳と同じような仕組みを目指すというような研究開発は失敗する可能性が高く、安易に乗らないことを警告している。説得力があった。ただ、自らが関与した研究や哲学的な論述など、回り道が多いようにも感じた。
「ビッグデータ分析の最大の魅力は、当初の使用目的とは異なるさまざまな角度からデータを眺めることで、思いがけない発見が得られることに他ならない」p30
「(人工知能キーワード「論理」→「知識」)人間は問題を解決し意思決定をおこなうとき、筋道を立てて論理的に考えようとする。だが、それは積み重ねられてきた社会的体験に基づく知識を踏まえたものなのである。難しいパズルに挑戦するときのように、論理だけで判断するわけではない」p59
「人間は日常、常識に基づいてフレキシブルに行動している。だが、この常識というのがクセモノで、いわば矛盾や誤りだらけのしろものなのである」p64
「軍需産業の支援の下で、人工知能技術が進歩発展していく可能性は高い。そして、その詳細は一般には決して公開されないだろう」p103
「ロボットに搭載された人工知能は、基本的に、論理処理を行う機械である。そして、ロボットの「体」は、多細胞生物である動物とはちがって、あくまで人工知能の指令に従って動く忠実な物体である」p131
「科学技術分野は多かれ少なかれそうだが、日本のIT業界は原則として、徹底した欧米追従である」p163

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2018年10月21日

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単なるバズワードの解説本ではない。
シンギュラリティに騒ぐ世間を批判し、AIではなく、IA (Intelligence Amplifier)こそ来たるべき未来だと説く。地に足をつけて、自分もこの時代のエンジニアとしてコンピュータの可能性を広げていきたい。

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2018年08月21日

Posted by ブクログ

シンギュラリティ。最近よく聞くこの言葉を真っ向から否定する、わかりやすい論考だった。
フレーム問題の記述では、某厚労大臣のごはん論法を思い出した。そうか、あの違和感は人と話している感じがしないことからくる違和感なのかと変に納得した。

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2018年07月14日

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最近、何冊か人工知能関連の本を読んだが、本書が一番納得感があった。ディープラーニングはビッグデータを統計的に処理する手法の一つに過ぎず、今の技術の延長に汎用人工知能はない。その論拠を、機械と人間の違いから説明していく。
人工知能という言葉は何かと誤解を招きがちなので、本書のような主張は、メディア等でもっと周知すべきだと思う。

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2018年01月11日

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情報を専門とする学生にぜひ読ませるべき本である。ただし、これをそのまま卒論の資料にはできないので、あくまでもどう考えるかの本とするべきである。

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2017年03月16日

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2045年 人工知能が人類を越えるーーシンギュラリティ(技術的特異点)仮説。

中公新書にしてはやけに感情的な文章。
著者の主張を端的に言うと、人間と機械はどこまでいっても違うのでシンギュラリティなんて来ないよ、といったところか。

1956年 米国ダートマス会議から人工知能ははじまった。
以降、厳密な論理であったコンピュータは、曖昧な知識との矛盾に苦しんだ。2010年代に入って、それを克服させつつあるのが「深層学習(Deep Learning)である。
深層学習とは、(本来コンピュータが苦手としていた)パターン認識のための機械学習の一種。その特徴は「ニューラルネット(神経細胞網)」と「特徴量設計の自動化」。これが脳の仕組みに似ている、という印象を与える。

シンギュラリティに対する悲観論。「人間はそれを支配できない」「人類の終焉」。
しかし著者の考えでは、人工知能が人類を超えてしまったが故に人間に理解できなくなる、ということはつまり、人間にとってはメチャクチャな結果を出力する廃品と判断されるだけである。

どうやら人工知能の進化は、曖昧さに対応するために厳密性を捨てた、つまり正確性を犠牲にしているようである。「間違えても学習していけばいいじゃないか」と。
それゆえ、人工知能を過信してはいけない、機械の誤判断を正せるのは人間(の暗黙知)だけだ、という著者の主張には説得力を感じる。
しかし、人工知能が高度になるにつれ、コンピュータの出した結論に対して「これは誤りだ」という判断を下すこと、それ自体が難しくなっていくのではないか。それこそがシンギュラリティの本質なのではないか。
というわけで私はシンギュラリティ悲観論に一票。

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2017年03月12日

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自分が大学生の頃に携わった人工知能研究は、第2世代のブームだったようだ。
当時は、素直にプログラムを書いて、コンピュータに処理させれば良いことを、自然言語処理をさせて、プログラムを書かなくてもコンピュータが人間の意図を理解して、処理するという状況を目指していたと思う。
第3世代のブームである現在は、ビッグデータ、集合知と統計処理の活用。気をつけなければならないのは、相変わらず^、コンピュータには、プログラム(予め、書いたもの)が、必要だということ。自己学習すると言っても、その自己学習の仕方は、予めプログラムされている。そのことを忘れては、ならない。

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2017年02月09日

Posted by ブクログ

AIを技術的側面からではなく、社会科学的な側面から捉えたいと考えている人に最適。
生物と機械の違いが本書の基本テーマ。感銘を受けた。
しかし、「AIは仕事を奪わない」という主張は、現実の労働市場を知らない学者さんの意見という印象で、同意できない。

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2016年12月01日

Posted by ブクログ

「ビッグデータと人工知能」
しばらく前から社会にあふれるデータをビッグデータと言って話題にはなっていた。そこに来て、囲碁でコンピューターが人間に勝ったと言うことで人工知能が急に脚光を浴びるようになってきた。
その上、2045年にシンギュラリティが起こるという予測を楽観論、悲観論を合わせてマスコミが煽っているので、ますます注目されて来ている分野である。
しかし本書は技術的に冷静に分析していて、特にシンギュラリティ仮説は欧米のキリスト教的な価値観によるところが大きいと指摘して、欧米人は人工知能は神が与えたものとして信じ込むかも知れないと言う。
一方著者は知能とは生命が生きていくために発達させてきたものであり、コンピューターによる人工知能はどこまで行っても計算と考え、知能ではないとし、計算結果を神のお告げのように信じ込むことの危険性を指摘している。
議論が進むにつれて次第に哲学的、宗教的になってしまい、技術論を越えてしまう。
コンピューターがいくら進化しても意識を持つことはないかも知れないが、人間側が意識を持っていると感じることはあり得るので、結局は人間の問題なのだろう。
コンピューターが進歩して意識を持ってもいいような気もするが、その意識は人間には認識できないかも知れない。
また、人間も有機物からできた計算機だと考えられなくもないわけで、やっぱりかなり哲学的な話になる。
いずれにしても現在の技術の延長線上では人間の知性に匹敵するコンピュータを作るには膨大な開発費とそれを動かすための莫大な電力が必要になり、開発した結果がとても天才とは言えない普通の人間の知能だったら、ただの笑い話になってしまう。

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2016年11月12日

Posted by ブクログ

AIが人間の意思決定を凌駕するシンギュラリティは来ないという。なぜなら、AIは意味解釈ができず、意志を持たないから。

2016年の本でLLM以前だからもう古くなってしまっていることは否めない。意志をもたないことは今でも同じだと思うが、意味解釈についてはかなり実現してしまった。というかむしろそもそも人間の意味解釈自体が確率論的連想にすぎなかったなんじゃないかということがわかってきたと理解している。

AIは道具ということはごもっとも。

「インターネットや人工知能技術の基層には、高みを目指す一神教的な理想主義と宇宙観があるのだ」という考え方には、プロ倫的な意外性に面白さは感じるが、根拠は希薄でちょっとついていけない。偏見にもつながる。

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2024年10月06日

Posted by ブクログ

6年前の本だけど、そもそもこの分野に詳しくないから十分勉強できた。
著者は人文系の学問にも通暁していて、その視点からも現代の技術観を検討しているから、文系でもなんとかついていける。

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2022年06月14日

Posted by ブクログ

【ノート】
・西垣センセーの情報学のテキストは、難しそうな面構えの割に読みやすい印象があったので、本書も期待して読み始めたのだが、人間と人工知能との比較検討が乱雑。特に中盤から終盤にかけてはその印象が強い。

 例えば。

 芸術は過去にないものを創り出すものだが、人工知能は過去のパターンから持ってくるだけなので、よって芸術は人間によってしか可能たり得ないというくだりがある。著者のお仕事と本書の性格から言って、では、人間が芸術を創り出す時の知能のプロセスが、人口知能のそれと、どう違うのかということを提示してくれて然るべきでわ?

・ただし、人工知能肯定派(カーツワイルとか)は、まだ解き明かされていない人間の知能の働きを、モデル化という形で単純化したまま、処理速度の向上を以ってシンギュラリティの強力な論拠としているが、それでは知能の働きの大事な部分がこぼれ落ちたままになるという主張には強く同意。とは言え、色々なものの解像度が粗くなっていくのは、例えば音楽のアナログ→デジタルへの移行やインスタント食品なんかとも共通な現象なので、文明の発展の必然なのかもという気持ち(諦念に近い)もあるけど。

・それと同時に、人工知能に感情や心がないと断定はできんでしょうとも思う。人間だって、人体を構成している物質は分かってるけど知能や心の働きは未解明。もしかしたら未知の物質なり引力・斥力の働きによる動的生成なりで動いているのかも知れない。だから、トランジスタやシリコンでできているものにも「心」の動きがあるかも知れない。戦国魔神ゴーショーグンで「機械は友達!」とかって言ってたアレだ(違うか)。

・AI礼賛なバラ色SF未来への批判的論旨をふむふむと首肯しながら読み進めていったら、あれれ?肝心なところの紐解きはスルーですか?というのが散見される印象。ただし、読む価値はある本だと思う。

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2018年10月28日

Posted by ブクログ

この本を読むと、人が工知能が仕事を奪われてしまうとか、
意識を持った人工知能によって支配されてしまうとかいう心配はしなくていいようだ。他の人工知能関連本ではずいぶん煽っていたようだが。これは喜ぶべきことなのか。

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2018年04月14日

Posted by ブクログ

この人はITなどという言葉で呼ばれる前から
この業界にいる人ですが、正直、僕には全然合わない。

AIの知性というものに限界があるのだから、
万能であるかのように思ってはいけない、
という主張それ自体は受け入れましょう。

というよりも、それはむしろ当たり前なんです。
ただ、その主張をする時に
万能AIという夢想が一神教的なものに通じているとも述べるのは
あまりに粗雑な議論です。

少なくともその夢想がヨーロッパから来たという証はなく
同時発生的に同じような概念が自生するという
可能性をほとんど顧みていない。
また、これは議論の中核ではなくて、単に言ってみた程度の話であり
要は万能ではないという主張を補強する為の小話です。

まぁ、こういうのは手癖でやってしまって自覚はないんでしょうが。

人間と同じでないから人間と同じ知性にならないのは当たり前です。
どこまで成長してもそうでしょう。
それでもなお、シンギュラリティは起こりうると私は考えています。

何故なら、人間とは違う形の知性が存在しうるからです。

優劣とは関係なく、理解が不可能であっても
意思を持っているとみなすことが、
それが人間の能力のひとつなのです。

ヒューマニズムにとらわれるのでなく、
絶えず人間という概念を拡張しようと試みることの一端に
シンギュラリティの夢想は揺らめいているのです。
(ここはとても危うい言い回しですが)

まぁ、情報処理の発展史については概説を抑えていますよ。

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2017年11月25日

Posted by ブクログ

昨今話題となっているシンギュラリティについて批判的な論を展開している。読み手の感想として切り口はあまり鋭くない。ただし、本書の最後にAIではなくIAという概念を用いて説明しているところでようやく著者に歩み寄ることができた。AIに仕事を奪われる未来ではなく、IA知能増幅のユーザーとして、高いスキルや知識を身につけることを志向すると良いのだと感じた。

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2017年04月30日

Posted by ブクログ

人工知能から知識増幅、集合知へ。
の前向きな人工知能ビックデータ本。
ビックデータとは、機械学習の発展・ブレイクスルー、人間を超える?、自由プライバシーセキュリティ、集合知・協働・知識増幅。

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2017年04月16日

Posted by ブクログ

2017.0304 シンギュラリティーなぞ起きない。人間と人工知能はまった別の存在で、人工知能が人間の知能を再現することはない。人工知能はいかに使うかが大切。

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2017年03月07日

Posted by ブクログ

人工知能って何ができるものなのか、実際何をやっているものなのかを理解しておく必要がある。
ビッグデータの扱いについても同じで、統計ってものの正体はけっこう意外なものだったりする。ややこしいのは統計処理って真実とは違うものなのに、現実の現象を割と言い当てたりするってこと。
まさか技術的特異点に到達できるとは思わないけど、そうだと勘違いする時代は来るかも。やだなぁ。

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2017年02月18日

Posted by ブクログ

AIについてのテクニカルの話ではなく、シンギュラリティはない、AIとの折り合いのつけ方についてかたる話。

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2016年12月04日

「IT・コンピュータ」ランキング