あらすじ
小さな事件が原因でアリゾナ警察を追われ、酷寒のミズーリ州の片田舎ヴィクトリーへと飛ばされたベテラン刑事ベティンガー。町は荒廃し犯罪が横行、同僚刑事たちの行動も怪しげで、よそ者の彼に冷たい。当初は彼らにも疑惑を抱くが、徐々にその誤解も解消してきた頃、残虐な連続警官殺しが発生した。仲間を殺された刑事たちの怒りの捜査は、やがて壮絶な闘いへ……レオナルド・ディカプリオ映画化のヴァイオレンス巨篇!
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
なるほどタイトル通りの”虐殺”が繰り広げられる。
ストーリーは単純ながら、ブラックユーモアを通り越してエッジのたったセリフの応酬、皮肉でペシミスト的な比喩や暗喩が散りばめられ、まるで近未来のディストピアのような破滅的な街を背景に、刑事達と殺し屋?の執念の捜査と闘いが繰り広げられる。
ここまで残酷な描写が必要だとは思われず、その分、物語のカタルシスが下がったのは間違いないが、緊迫感、疾走感は並大抵のものではなく、昔ミッキー・スピレーンを最初に読んだ時のような衝撃がある。そういう意味ではこれだけ暴力描写があふれた中でも際立ったピカレスク調のハードボイルトと言える。
しかし、その中で本書が救われるのが、この狂気の中にあって主人公はどこまでも家族のことを考えて行動している点。たとえ常軌を逸してきてもそこに家族への愛情がある故、この小説はドラマとしても成り立っていて、夫と妻、父と娘、そして描写が少ない分、父と息子の交流が胸を打つ。
作者のストーリーテラーとしての力量は間違いなく、今後の作品を期待。
しかし、これを映画化、というのはどうだろう?
比喩も暗喩も使えないし、映像化できないシーンも多いだろうし。しっかりとした脚本とデビッド・エアーのような監督がみつかればいいかもしれないが…。