あらすじ
この子はあたしたちみんなで育てる。よそにはやらないよ――千里眼を持つ女家長マーサの決断により、赤ん坊はヴァイン家の8人の女たちに育てられることになった。フランクと名づけられた男の子は、大戦の残した傷跡から立ち上がろうとする町で、風変わりな一族に囲まれて大きくなってゆく。彼だけの秘密の話し相手、〈ガラスの中の男〉とも一緒に……。現代英国幻想小説界の巨匠が鮮やかに描き上げた、生と死のさまざまなかたちを見つめる家族の物語。世界幻想文学大賞受賞作。
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Posted by ブクログ
グレアムジョイスは初読。世界幻想文学大賞受賞作ということで、久々に海外ファンタジーの大作を読んでみたくなり、手に取った。
正直、期待していたファンタジー感バリバリの作品ではない、ちょっと変わった人々の「秘密の花園」って評があったが、言いえて妙。
これくらいなら現実にあってもおかしくないな…と思える程度の霊感をもつ母、霊感をもたない娘たち、やや現実離れした感性を持つ末娘、その末娘の子供もちょっとした霊感を持つ。母と娘と孫と娘たちの亭主…一族のリアルな戦後イギリス暮らしを、半歩だけ現実からずれた視点で描く家族小説なのだ。
戦争(ドイツ軍の爆撃やダンケルクなど)という大きな災いが終わって、少しずつ平和な日常が戻っていく中で、少しずつ撒かれる伏線、伏線の結果、ちょっとずつずれていく生活、その結果発生する家族のズレ。それらを丁寧に描きつつ、最後には伏線が綺麗に…でもおだやかに回収されるのである。刺激という意味では物足りないかもしれないが、十分にドラマチックであり、幻想文学でありつつ、十分にヒューマンドラマである。
末娘の子、孫のフランクを一家全員で育てるんだという、祖母であり家長であるマーサの宣言から、続く物語。イギリスであれ、日本であれ、日常は十分ドラマチックで半歩ずれたところにはファンタジーが活きているんだなぁ。
オモロいというよりは、充実した読書時間だったなぁという感想でした。
Posted by ブクログ
7人姉妹の末っ子のキャシーが男の子を産んだ。
キャシーは少し変わった子だから、その男の子を養子に出した方が良いと皆は言った。
キャシーは男の子を渡す日に、彼を連れて帰ってきた。
この子は外にやらずに育てると。
キャシーの母親のマーサは、彼女には育てられないと、いい、ほかの姉妹みんなで男の子を育てると決めた。
彼の名はフランクと言う。
どう説明してよいのか、分からないのだが、このあらすじは間違っていないのだが、コレは幻想小説大賞を受賞した作品なのだ。
そして面白い。
非現実的なことがいかに起きようとも、それが家族の愛情に影響しないというか、なんというか。
私、翻訳作品を読むときに、登場人物の名を覚えるのが苦手なのだが、7人姉妹+各々の旦那さんや彼氏+子供が出てくるのに、全く混乱し無かったくらいのキャラ立ちである。
読み始めてよく分からないなーと思ってもそのまま読んで欲しい。出来事を味わって欲しい。