グレアムジョイスは初読。世界幻想文学大賞受賞作ということで、久々に海外ファンタジーの大作を読んでみたくなり、手に取った。
正直、期待していたファンタジー感バリバリの作品ではない、ちょっと変わった人々の「秘密の花園」って評があったが、言いえて妙。
これくらいなら現実にあってもおかしくないな…と思え
...続きを読むる程度の霊感をもつ母、霊感をもたない娘たち、やや現実離れした感性を持つ末娘、その末娘の子供もちょっとした霊感を持つ。母と娘と孫と娘たちの亭主…一族のリアルな戦後イギリス暮らしを、半歩だけ現実からずれた視点で描く家族小説なのだ。
戦争(ドイツ軍の爆撃やダンケルクなど)という大きな災いが終わって、少しずつ平和な日常が戻っていく中で、少しずつ撒かれる伏線、伏線の結果、ちょっとずつずれていく生活、その結果発生する家族のズレ。それらを丁寧に描きつつ、最後には伏線が綺麗に…でもおだやかに回収されるのである。刺激という意味では物足りないかもしれないが、十分にドラマチックであり、幻想文学でありつつ、十分にヒューマンドラマである。
末娘の子、孫のフランクを一家全員で育てるんだという、祖母であり家長であるマーサの宣言から、続く物語。イギリスであれ、日本であれ、日常は十分ドラマチックで半歩ずれたところにはファンタジーが活きているんだなぁ。
オモロいというよりは、充実した読書時間だったなぁという感想でした。