あらすじ
今年いちばん泣ける映画、もうひとつの物語。
余命わずかと宣告されたご主人さまは、自分と同じ姿をした悪魔と取引をした。「この世界からモノを一つ消す。そのかわりに、キミの命を一日ぶんだけ延ばす」と。電話、映画、時計……。モノが消えていくたびに、ご主人さまと結びついていた人の記憶までが失われていくようだ。そして悪魔は、世界から猫を消すと提案する。ボクのことなんて消してしまっていいんだよ、ご主人さま……。最後に、飼い主が選択した決断とは!?
感涙のベストセラー原作の映画『世界から猫が消えたなら』を、主人公の飼い猫であるキャベツの視点で描いた、感動の物語。
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Posted by ブクログ
◾️record memo
いつも不思議に思うんだ。どうして人間は、自分で勝手に決めたきまりごとにしばられて、それを「苦しい」とか「辛い」とか言ってるんだろうって。
健全でつつがない人生を送るためには、これらたくさんの“自分で勝手につくったきまり”を守らなきゃいけない。挙げ句それを「ストレスだ」とか言ってる。
だったら守らなきゃいいじゃないかと思う。会社に行くのなんてやめて、好きなものを好きなときに食べて、好きなときに好きな人に会いにいけばいい。人間はなぜか、「そんなことできない」と思い込んでいる。すぐ身近に猫という実践者がいるというのに、まるでそれが見えていないみたいだ。
だけど人間は変な生き物でさー。人間って、生まれ持った“自分”がないんだよ。まわりのいろんなものをくっつけて一つにまとめて、ようやく“自分”を作り上げてるみたいなんだよね。
猫は人間とちがって、まだ子猫のうちから自立し、独立した生活を営むものだ。だからボクは、ボクの母猫と暮らしていたという人間が、ボクとその兄弟四匹をそれぞれダンボールに入れて、「もらってください」と書かれた紙切れ一枚といっしょに路地裏に放置したことを恨んでいない。居場所は自分で勝ち取るものだと母猫に教わったし。
Posted by ブクログ
ベストセラー小説のもう一つの物語。
「せか猫」といわれ映画もヒットした小説のもう一つの物語。主人公の飼い猫キャベツ視点で描かれた物語。
印象に残った文
『ボクは、そしてご主人さまは、世界中のあらゆる物とつながっている。人や物、世界とのつながりそのものが「自分」なのだ。』
『この手紙を書いている私は、もうすぐこの世界から消えてしまいます。だから、その前に、自分は何をしたいんだろうと、あれこれ考えてみました。おいしいものを食べたい。いろんなところに行きたい。おしゃれをしたい。そんなことを考えているうちに、私は気づいたのです。私が、死ぬまでにしたいことは、ぜんぶ、あなたのためにしたいことなんだってことに。ですが、私はもう、あなたのために何かをしてあげることができません。なので、これから、私の知っている、あなたの素敵なところを書き出してみます。
あなたの素敵なところ。あなたは、いつでも私の味方でいてくれる。
あなたは、誰かが喜んでいるときや悲しんでいるときに、その気持ちに寄り添うことができる。
あなたの可愛らしい寝顔。そのくせ毛。
ついつい鼻を触ってしまう癖。必要以上に人に気を遣ってしまう性格。
私が風邪をひくと、いつも家事を張り切ってやってくれたあなた。
私が作った料理を、本当においしそうに食べてくれたあなた。
あなたにはわからないかもしれません。あなたが生まれてきてくれたことで、私の人生がどれほど素敵で輝いていたか。
だから、私はあなたに伝えたいのです。生まれてきてくれて、ありがとう、と。
「·····ありがとう」
ご主人さまは下唇を噛みしめて肩を震わせていた。ボクはご主人さまの膝の中で顔を上げる。両の目から涙がこぼれていた。瞼を割って、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちてくる。
いつまでも、あなたの素敵なところが、そのままでありますように。
手紙はそう締めくくられていた。ご主さまが手紙を封筒に戻す。とてももろい砂糖菓子を皿に載せるときみたいに、丁寧に、ゆっくりと、少しだけ怖がっているみたいに。そして愛おしそうに。』
『〈あなたがいなくなったら、私の世界はまた変わる。大勢の人の世界が変わってしまう。きっと、想像もつかないくらい、大きく変わってしまうんだと思う〉「··········」〈だけど私は生きてやる。私の世界にあなたを刻んで、しっかり、図太く生きてやる。だから安心して。あなたは一人じゃない。この世界から、絶対にあなたを消したりはしないから〉』
Posted by ブクログ
キャベツの視点から描かれていて、前作では描かれなかった場面から切なく感じることがたくさんあって泣けた。「人や物、世界とのつながりそのものが、「自分」なのだ」この世界に溢れるかげかえのないものに感謝して生きようと考えさせられた。
Posted by ブクログ
原作を、表紙の猫に惹かれて何年も前に読んでおり、今になっての映画化ということで、その波に乗って登場したのですよね、この作品は多分。
人に薦められなかったら原作の文庫本だと思ってスルーしていました。あ、キャベツ側からの話なのねって言われるまで表紙見ても気づきませんでした。
どなたかも書かれてましたが、私も当初キャベツの語り口調、悪魔の語り口調、馴染めなくて若干もやもやしました。
でも読み終わってみたら、何だろう。
何年も前に読んだ原作よりも「いい」と思ってしまいました。もちろん原作読んだ上でのキャベツ側からのストーリーということでいいと思えるのだと思うのですが、それでも単純に「こっちのストーリーテラーのがいい」と思ってしまった。
読み手である自分が、原作を読んだ時よりも多くの人を喪ってきたせいか、それともこちらの著者である涌井学さんの文章力のせいかもしれません。
「ご主人様」とその大切なものとの関わりや繋がりがせつない。もちろんキャベツとの繋がりとキャベツを拾ってきた父さんや母さんとの関わりも。
「海の上のピアニスト」私のこれまで観た中のナンバーワン映画です。死ぬ前に観るなら自分なら「海の上のピアニスト」です。その映画が登場したこともじんと滲みたポイントの大きな一つ。