あらすじ
「せっかく生まれてきたんだから、いろんなことをしよう。おかしいことも、恐ろしい事も、ひとを殺すほどの憎しみも、いつか」。バイブレーターを母親として育ったさせ子との出会い、妹の恋人だった竜一郎との恋、鋭敏な感性に戸惑う弟への愛が、朔美の運命を彩っていく。孤独と変化を恐れない朔美の姿は、慈雨のように私たちの体と心に染み込み、癒してくれる。時にくだらなく思えてしまう日常の景色が180度変わる、普遍的な名作の誕生。
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Posted by ブクログ
「人間っていうものは本当に、いれものなんだ、と思うんだ」という言葉が好きだった。中身はどうにでもなる。生きているとそう感じることが多いので、特に共感した部分だった。
アムリタを読むと、人が生きていくには本当に何でもない日常みたいなものが必要不可欠なんだなと感じる。おいしい水をごくごく飲むようなもの、と表現されているように。それくらい必ずあったほうがいいものなんだなあと思った。
また弟が何気なく言った言葉が好きだった。
「好きなひとといて、今みたいな楽しい気分の時に見たら、星もUFOも関係なくてただきれいに感じてびっくりするものなんだね」
Posted by ブクログ
ああ、なんて人間ってバカバカしいんだろう。生きていくということや、懐かしい人や場所が増えていくということはなんてつらく、切なく身を切られることを切り返していくんだろう、いったいなんなんだ。(P、127)
人と人がいて、お互いがこの世にひとりしかいない、二人の間に生まれる空間もひとつしかない。
そのことを知ると、ましてそこになにか特殊に面白そうな空間があることを知ると、無意識に人は距離をつめてもっとよく見ようとする。(P、133)
人間は、心の中で震える小さな弱い何かをきっと持っていて、たまに泣いたりしてケアしてあげたほうが、きっといいのだろう。(P、295)
Posted by ブクログ
1995年紫式部文学賞受賞作品。
「吉本」ばななさん時代の本。
文庫化して初版平成9年のもの。
久しぶりに押入れから出した。
夏になるとよしもとばななさんの本が読みたくなる。しっとりした空気、キラキラ輝く太陽…夏特有のこの雰囲気を的確な言葉で表してくれるのは、ばななさんだけという気がして。
『アムリタ』を初めて読んだのは大学生のころ。23年も前なんだ…
この物語を読みながら友達との楽しい遊びや旅行、一日が終わる夕日の物悲しさと最大級の美しさ、二度と訪れない儚さや切ない感覚にキューンと胸が締め付けられたり。
読みながら忘れていた感覚が蘇った。
今は夕日が沈む頃バタバタと食事の用意している。日常生活を刻むことに必死でキューンとする時間はない。
でもね、子供が独り立ちするまで期間限定。後で振り返ればこれも貴重な懐かしい甘い時だったとなるのだろう。
主人公朔美は、今まで何気に過ごしてきたことも妹の死や強く頭を打った事故によってそれらを機に思考が変わり出す。
当たり前のことなんてなくて、様々な出来事も人との出会いも縁や何か力が働いている。
人生辛いこともある。でも時々人生の中で出会う幸福感を得られるもの=甘露、アムリタなのかな…と。
ハッと気付かされたのは何気に飲んでいる水も命を繋げるものだということ。ほんとうに何気に自分自身を大切にしているんだ、私は私が愛おしいんだって気付いた。
ばななさんの物語を読むと日常生活の一つ一つのことに意味があって美しさを感じられる。丁寧に生きたいと思う。
『アムリタ』を初めて読んだときの日記はもう捨ててしまったけれど、どんなことを書いていたんだろう。当時の恋人とも別れ、親や妹とも離れ、全く違う生活を営んでいる。
ただもう今は、摂食障害に悩んでいた自分自身が大嫌いな私ではない。
次読み返すとき、私は何を思うだろう。
Posted by ブクログ
非日常と日常を描いているはずなのに少し違う。そんな不思議な本でした。頭を打って記憶を一時的に無くしてしまった朔美の、色々なものに触れることによって頭を打つ前、あるいは頭を打って新しい環境に変わったことで新たに気づいたことを「今の自分」の肌で感じているのが印象的でした。
Posted by ブクログ
「人間のしくみはたいていとても単純でよくできている。複雑にしてしまうのは心と体がバラバラに働き、心のほうが暴走してゆく時だけだと思う。そういう時に、人間は何かの隙間を見る。その隙間には世にも美しいものも、戻れないくらいに恐い闇もつまっている。それを見るという体験は、幸福でも不幸でもないが、その思い出は、幸福な感じがすることが多いのだと思う。」p298
「そんなふうに、何が起ころうと私の生活は何も変わらないまま、とどまることなく流れてゆくばかりだ。」p304