あらすじ
「せっかく生まれてきたんだから、いろんなことをしよう。おかしいことも、恐ろしい事も、ひとを殺すほどの憎しみも、いつか」。バイブレーターを母親として育ったさせ子との出会い、妹の恋人だった竜一郎との恋、鋭敏な感性に戸惑う弟への愛が、朔美の運命を彩っていく。孤独と変化を恐れない朔美の姿は、慈雨のように私たちの体と心に染み込み、癒してくれる。時にくだらなく思えてしまう日常の景色が180度変わる、普遍的な名作の誕生。
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ああ、なんて人間ってバカバカしいんだろう。生きていくということや、懐かしい人や場所が増えていくということはなんてつらく、切なく身を切られることを切り返していくんだろう、いったいなんなんだ。(P、127)
人と人がいて、お互いがこの世にひとりしかいない、二人の間に生まれる空間もひとつしかない。
そのことを知ると、ましてそこになにか特殊に面白そうな空間があることを知ると、無意識に人は距離をつめてもっとよく見ようとする。(P、133)
人間は、心の中で震える小さな弱い何かをきっと持っていて、たまに泣いたりしてケアしてあげたほうが、きっといいのだろう。(P、295)
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弟以外にも色んな能力ある友人が出てくる させ子は歌があるけど彼氏も凄い能力ある。隠居生活いうけど、乗り越えて来てるし辛かったんだろうな、きしめんもメスマも能力あるけど、さらりという所が、それを受け入れるのが凄いって。弟が友達になってたのも凄いけど、自分の能力を受け入れる、まだ4年生が、人事にもこれからどうなるって思うけど、自分から家を出て施設に行って また家に帰る。もうやってるんだよね。記憶失くしても、不安でも、記憶が溢れても、自分を見失わない朔は凄い。友人がいれば大丈夫だと断言する
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アムリタ(下)
最後の方の、させ子や純子さん達から届く朔美への手紙が心に痛いほど沁みてくる。すごく良い。
上巻含め、これまで読んできたことの答えみたいなものが語られてる気がして、何度も胸が詰まった。
平凡な人生のなかで、今日も命があり、明日も生きていくこと。そのかけがえのなさに、うまく言えないけど、あらためて気づくことができた。
読んで本当に良かった。
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タイトルのアムリタ。
本棚にもう一冊ありました。野崎まどさんのアムリタ。
これも結構好きでした。
アムリタの何たるや、ですが。読み進めて、昔利尻岳登山をした時を思い出しました。麓に日本最北の甘露水があります。
あとがきまで読んで。
ばななさんは当時いろいろとあったのでしょう。
そこで生まれた本書なのだと思います。が、なかかなどうして。異次元感が味わえます。でも、それは本当に異次元なのでしょうか。異次元は存在するのでしょうか。
最近2冊続けて読んだ、オムネクの世界を彷彿とさせます。
ばななさんは何かを感じていたのだと思います。
「哀しい予感」は、私にとってインパクトのあるお話でした。わかっていて、それでいてどうすることもできない展開が待っています。
「アムリタ」でも不思議な世界が待っています。
弟さんが成長とともに能力を失っていきます。
私たちも、幼いころの記憶は、失ってしまうことが普通です。
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些細な表現が美しすぎて
ゆっくり丁寧に読んでしまいました。
日常をこんな風に受け取れたら
なんて素敵なことなんだろう。
この本を読んだ後はいつもよりすこしだけ世界の輪郭がはっきりとする。
優しい世界に体が包まれる。
心身のチューニング本。
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ぶっ飛んだ設定なのに大仰な感じが全くせず、むしろ日常がより一層の日常感を持って丁寧に穏やかに、美しく流れていくの
大人になればなるほど良さがわかるもののような気がする
吉本ばなな、好きだな
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1995年紫式部文学賞受賞作品。
「吉本」ばななさん時代の本。
文庫化して初版平成9年のもの。
久しぶりに押入れから出した。
夏になるとよしもとばななさんの本が読みたくなる。しっとりした空気、キラキラ輝く太陽…夏特有のこの雰囲気を的確な言葉で表してくれるのは、ばななさんだけという気がして。
『アムリタ』を初めて読んだのは大学生のころ。23年も前なんだ…
この物語を読みながら友達との楽しい遊びや旅行、一日が終わる夕日の物悲しさと最大級の美しさ、二度と訪れない儚さや切ない感覚にキューンと胸が締め付けられたり。
読みながら忘れていた感覚が蘇った。
今は夕日が沈む頃バタバタと食事の用意している。日常生活を刻むことに必死でキューンとする時間はない。
でもね、子供が独り立ちするまで期間限定。後で振り返ればこれも貴重な懐かしい甘い時だったとなるのだろう。
主人公朔美は、今まで何気に過ごしてきたことも妹の死や強く頭を打った事故によってそれらを機に思考が変わり出す。
当たり前のことなんてなくて、様々な出来事も人との出会いも縁や何か力が働いている。
人生辛いこともある。でも時々人生の中で出会う幸福感を得られるもの=甘露、アムリタなのかな…と。
ハッと気付かされたのは何気に飲んでいる水も命を繋げるものだということ。ほんとうに何気に自分自身を大切にしているんだ、私は私が愛おしいんだって気付いた。
ばななさんの物語を読むと日常生活の一つ一つのことに意味があって美しさを感じられる。丁寧に生きたいと思う。
『アムリタ』を初めて読んだときの日記はもう捨ててしまったけれど、どんなことを書いていたんだろう。当時の恋人とも別れ、親や妹とも離れ、全く違う生活を営んでいる。
ただもう今は、摂食障害に悩んでいた自分自身が大嫌いな私ではない。
次読み返すとき、私は何を思うだろう。
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吉本ばななさんをこれまでもいくつか読んできたが、長編(?)作品はこれが初めて。これまで吉本さんから感じ考へてきたことのすべてがこの中にちりばめられてゐる。
もう魂はかうでしかないと知つてしまつた時、時間の水平線から垂直に立ち上がつてしまつた時、それでも、生ある限り、再び流れに身を任せるしかできない。忘れては思ひ出し、別れては出会ふ。しかし、ひとは後戻りできない。生まれたからには、死に向かふばかり。
誰かと共に生きていく。そこに見えない何かがまるであるかのやうだ。記憶、時間、目に見えないものが確かに生まれ、積み重なつていく。
だからこそ、水を飲み干すやうに生命を飲み干すのだ。アムリタは、一度飲んだら終りの不老不死の妙薬などではなく、この過ぎゆく時間の中で、いつも飲み干し続ける、生命そのものではないか。
沈む夕陽も、揺れる木々も、大切なひとの声も、突き刺す風の冷たさも。妹真由はさうした淵にたつて、いつも震えてゐた。失くしてしまふのが怖かつたのではない、再び出会つてしまふのがたまらなく、苦しかつたのだ。
朔美と彼女を取り巻くひとたちとの時間は、変化しない事実と、変化していく現象によつて紡がれていく。ただ生命が生命であるやうに紡がれる。あとがきで筆者本人は稚拙だと自嘲するが、それは、小説とは言へこれがあるがままの端的な事実だからに他ならない。
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「神様が飲む甘い水」 「運命の中を泳ぐような水のようにサラサラ流れるようは生き方を、美しいものを手放して美しいもので満たされる人生の仕組みの美しさ、愛とは存在そのもの、生きるとは切望、混沌・矛盾・不完全さが最高」 と教えてもらった 世界の描写の仕方がほんとうに好きだな思った。
優しい人しか出てこなくて、善悪のお説教はなく、「感動的なストーリー」ではなくありのままの日常を通して生き方や在り方を教えてくれる本でした。 少し長かったですが、読んだ後は肩の力が抜けてこれからも大丈夫なような、なにかを失うことが怖くなくなるような、本当に「水のような」生き方ができるようにしてくれる本でした。 そうは言っても、現実はこんなに美しくないので日常の荒波に揉まれるうちに私はきっと今日の会得を忘れて心が荒むでしょうが、そんな時はまたこの本を読み返そうと思いました。
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2018.12.12
アムリタは何度も読んでますが、ひさびさに再読。
※ぴんときた箇所を抜粋
自分の恋人が同じ朝と夜、同じ時間の流れの中に同時にいると思うだけで、いつもの夕方も甘く見える。電話をしても、のびのびと話せる。夜が静かで長く感じられる。ふだん淋しいと思いたくなくて無理して麻痺させていた感覚が、ひとつひとつ開いていくのが目に見えるようだ。
→この表現すき。自分もパートナーとはこうありたいなあ。
真由が弟に伝えたことば
「由ちゃんも早熟だから気をつけて。私みたいに急がないで。お母さんの作ったごはんとか、買ってもらったセーターとか、よく見て。クラスの人たちの顔とか、近所の家を工事でこわしちゃう時とか、よく見て。あのね、実際生きてるとわかんなくなっちゃうけど、楽屋にいるとよく見えるの。空が青いのも、指が5本あるのも、お父さんやお母さんがいたり、道端のしらない人と挨拶したり、それはおいしい水をごくごく飲むようなものなの。毎日、飲まないと生きていけないの。」
→近所の家を工事でこわしちゃう時とか、よく見て。というのがなんだか心にひっかかった。
「ひとりのひとが何かすると、波のようにみんなに何か影響があるんだねえ。」
→わたしが太鼓のグループをやめたとき、ひとりひとりに送るところを皆が見えるところに送ったのは、そういった意味合いもあった。
どんどん手に入れては、手放していく美しさ。強くつかんではいけない、あの海も、遠くへ去る友達の笑顔も。
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アムリタの下巻。
なんだろう、精神的な病、心霊的なもの、超能力的なものっていうものの境目ってなんだろうって思った。
つらい、こわいとも感じるし、
すてき、幸せなこととも感じた。
朔美の感受性が謎で仕方ないと共に、
かっこよくさえ感じた。
登場してくる人物それぞれがとても魅力的で、
現実の私の世界のみんなも、
よくみたら魅力的な人で溢れてるのかな
と思った。
そして竜一朗のことはやっぱり好きになれない。
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いやー。
やっぱり、一気に読んじゃったなぁ、下巻。
上巻は緩やかに、休み休み読んでたけど、下巻は一気だった。
吉本ばななさんの著作初めて読んだのですが、そりゃ売れるわ。
勝手な想像だけど、その時、その時に感じた、いや、生まれた言葉を紡いで、文字通り徒然なるままに、書いて、勝手に人物が動いていて、その人物が書いた日記のよう。
あー。わかるわー。
上手く言えないけど、初めてこんなに感想書きました。
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非日常と日常を描いているはずなのに少し違う。そんな不思議な本でした。頭を打って記憶を一時的に無くしてしまった朔美の、色々なものに触れることによって頭を打つ前、あるいは頭を打って新しい環境に変わったことで新たに気づいたことを「今の自分」の肌で感じているのが印象的でした。
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とてつもない悲しみも逆に喜びも同じ熱量でいつまでも続くものではなくて、だからこそ毎日そこにある当たり前の暮らし、日常の力はとてつもなくて、どんなに深い傷を負っても人類がここまで生命を繋いでこれたのはそのおかげなのか、と思った。それさえあれば生きていけるというのは本当だと思った。
このお話ではサイパンのように、日常とはかけ離れたところにある、時間の流れが日本の自分の日常とは全く違うゆっくりしたところで人生のいっときを過ごすというのも、自分の中に確固たる日常生活があるからこそ素晴らしい体験なのだと思った。後からその記憶を思い返すときに、その時に隣にいた人の記憶ごと懐かしめることは素敵なことだと思う。
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読み途中で本を閉じるとき、これまでにない幸せを感じた。不思議でキラキラした世界に包まれ、まだ少しその世界が残っているあいだの贅沢感がたまらない作品だった。
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「人間のしくみはたいていとても単純でよくできている。複雑にしてしまうのは心と体がバラバラに働き、心のほうが暴走してゆく時だけだと思う。そういう時に、人間は何かの隙間を見る。その隙間には世にも美しいものも、戻れないくらいに恐い闇もつまっている。それを見るという体験は、幸福でも不幸でもないが、その思い出は、幸福な感じがすることが多いのだと思う。」p298
「そんなふうに、何が起ころうと私の生活は何も変わらないまま、とどまることなく流れてゆくばかりだ。」p304
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つらかった思い出ほど、後から振り返るとあたたかくなる。それを知っていることで今の景色が変わることもある。
それでもやはり変わらず毎日を過ごすだけかもしれない。その日常を、ていねいに。
◯空が青いのも、指が五本あるのも、お父さんやお母さんがいたり、道端の知らない人と挨拶したり、それはおいしい水をごくごく飲むようなものなの。
2023.12再読
◯言葉にしてはいけない、人生だとか、役割だとか、そんなことは。限定された情報に還元してはいぇない。
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普通に生活できることのありがたさ、その脆さ
それこそ頭を打っただけでおかしなところにやってきてしまうことなんてありえるんだろうなぁ
でもそういう経験をしないと生活のありがたさなんて正直感じないわけで
だからときどきこの本に目を通すことにしよう
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個人的には「その後」が無い方が良かったな。と思う。抽象的な表現がかなり多いのでゆっくりじっくり丁寧に情景を想像出来る心の余裕がある時に読むのがおすすめです。
Posted by ブクログ
軽くスピリチュアルで、主人公は大した仕事をしていなくて、身近で人が亡くなっていて、南国で緩く過ごしながら日常の美しさを愛でて、恋をする、ザ・吉本ばななの世界。
アムリタって何やねん、と思いながら上巻から読んで、かなり後半になってからやっと意味が分かりました。
楽そうな仕事も、南国での緩い暮らしも、スピリチュアルなところも、とにかく全て私のツボにどハマりするんだよなあ〜と改めて思いながら読んだ。
それ以上の感想は特にない…
Posted by ブクログ
私も、長期間何処かでぼーっと過ごす時間を持ちたい。そこで何かを得る/得ないは気にせずに
頭を空っぽにしてただ時間に身を任せたい。
上巻読んだ時はこの人の作品あってないな、もう読まないなと思ってたのに 人生が楽しく豊かなものに思えた
Posted by ブクログ
この本が言いたいことはそういうことでは無いし、中心の話題では無いことは分かっているけど、もうなんか、不倫とか…違う人を好きになるとか、そういうのはしばらく読みたく無いな‥と思った
まだ自分はそういうことを受け入れられるほど大きく見られない
Posted by ブクログ
ばななさんは表現の仕方が美しいですね。
妹が自殺して、主人公は頭を打って記憶喪失になり、弟は不思議な能力に目覚め不登校になり、主人公は亡くなった妹の彼と関係を持ってしまう。
登場人物の皆が、なかなかな背景があるのに重すぎない。
主人公が前向きと言うか、日々の暮らしの中で幸せを見つけるのが上手い。
主人公が記憶を失った時の過去と今の自分とのちぐはぐ感や、記憶と自分が繋がった時の喜び。
私は記憶を失った経験はないがすごくリアルに感じました。
Posted by ブクログ
日常の中で起きるできごとたちを、詩的に描写した作品でした。
よしもとばななさんの作品は好きでよく読むのですが、この作品は表現が詩的、哲学的で個人的には少し難解でした。
今は自分の感度と作品のチャンネルが合ってなかったのかな…
またしばらく置いて読んだらたくさん感じることがあるかもしれない。