あらすじ
弱小野球部の三ツ木高校は、エース月谷と主将笛吹のもとで確実に実力をつけていった。急成長を遂げるチームの中、捕手の鈴江は月谷の投球に追いつけず苦しむ。一方、ライバル東明学園の木暮も、思わぬ乱調でエースナンバーを剥奪される危機に。それぞれが悩みと熱い想いを胸に秘め、最後の甲子園へ向けて走り出す!! 感動の高校野球小説、クライマックス!
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Posted by ブクログ
公立高校野球部が甲子園を目指す物語。とはいえ、エースもキャッチャーも、それぞれの選手もまっすぐに、悩み成長してゆく姿が鮮やかに映し出されている。
団体スポーツのみが持ちうる共通の境地、”皆で勝利するという至上の歓喜”は、一度その興奮を覚えてしまうと、忘れられない。一種の麻薬のようなものでしょうか?そして、あてどもなく、その陶酔を求め続ける、酔い続ける。たとえ、自分自身の勝利でなくとも、自分が関わるものでも、そして応援するものの勝利であっても。こうして、野球への思い入れが世代の中で伝わっていくのでしょうか?
描かれる世界は、よりメンタルな部分が多い。エースのキャッチャーへの信頼、キャッチャーのエースへの信頼、自信、諦め、希望。単なる遊びの延長だったスポーツ(野球)が、高校を過ぎると、専門職(大学・社会人・プロ)にあるいは趣味(草野球)に分かれるのだろう。最後のターニングポイントで、『実力』『壁』『限界』と向き合いながら、挑戦する。その経験は、ゆっくりと得難い思い出となってゆくのだろうか。最後の夏として。ただし、その先も目指して。
気になったフレーズは以下:
★いっそ倒れられたら楽だろうなぁ。…。だが、あと一本。もう一本だけやってみよう。そう思って、一歩を踏み出す。練習はその繰り返しだ。
★今は、たしかにあの時よりはるかに練習しているし、実際に成果も表れている。しかし不満も多い。どことなくギスギスしている。強くなるというのは、こういうことなのだろうか。
★体中の血が沸騰する瞬間が、確かにあった。他のものでは絶対に得られない。
★当たり前だろ。いつだって不安だよ。どうすりゃ生き残れんのかって。
★これが現実。努力だけではどうしようもない壁。…。正々堂々勝負したのだから、負けてもすがすがしいだなんて、到底思えなかった。悔しい。死ぬほど悔しい。それしかなかった。