あらすじ
不意の出会い、気まぐれや衝動。無数の偶然に促されて、私たちみんな、進んでいく。自分にしかたどり着けない、見知らぬ場所に向かって――
幼い頃、泰子の家でいっとき暮らしをともにした見知らぬ女と男の子。まっとうとは言い難いあの母子との日々を忘れたことはない泰子だが、結婚を控えた今になって再び現れたふたりを前に、確かだったはずの「しあわせ」が否応もなく揺さぶられて……。水面に広がる波紋にも似た、偶然がもたらす人生の変転を、著者ならではの筆致で丹念に描く力作長編小説。
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Posted by ブクログ
「堅実」の真逆をいく生き方が、自分には決してできそうもなく、かと言って羨ましくも可哀想でもなく、そういう人生もあると描かれている。
何かに必死になって生きて行かなくても、ただ流されてもそれもちゃんと生きているんだな、と眼から鱗。
不思議すぎて謎すぎて、でもそれに納得のいく説明なんかもなく。
それをただ受け入れるということ。
こんなに誰にも感情移入できない小説もめずらしい。
でもそれはそれでちゃんと小説として面白いんだよなぁ
Posted by ブクログ
特別なことはいらない、当たり前を続けることが生活をつくりあげる。
「一緒にいたい」「この人となら生きていける」と互いが思うには、「生活を一緒に、一生続けていけるかどうか」。
幼い時から人当たりがよく、いわゆるモテるとされて来た男性を軸に展開される話。数年つきあってきて、そろそろ結婚しようかと思った矢先振られた言葉は、「怖くなってきた。普通の生活が普通じゃない」と言われる。その意味がわからず、仲のいい女性に相談しその解を聞くと納得すると同時に、自分の過去の家庭環境のせいだと振り返る。「例えば人が3食ご飯をとることが普通と思ってても、あなたは毎日お菓子でも平気でしょう?そういうのが怖いって感じる」。男の母親は住まいを転々として生きるために男頼りに暮らしてきた。そのため「続ける」「積み上げる」ことは重要でないという価値観が生まれてしまった。
「普通に生活する」ということは、個々人全く異なる。育った環境が違う性格が違う2人が、一生一緒に暮らしていくには、地味で華やかでなくても、普通と互いが思う生活を繰り返していけるかどうか。特別な日に特別なことをするよりも、日常を心地よく暮らしていける方が、幸せに近いのかと思った。
Posted by ブクログ
作中で、智のことを「根無草」と表現した文があった。
それはそうかもしれないけど、そもそも生まれたときから根っこなんてなかった直子・智親子。
正直、「よく生きてこられたなぁ」と思った。随分と「ただれた人生」だったーーー(汗)
感じたことのない感情で胸焼けして、何故か麦茶をガブ飲みしたくなった。
読み進めている最中、直子だけが突出して「モンスター」みたいに錯覚したが、実はこの作品に出てくる女性達、ほぼ全員おかしいと気がついてから、一気にページを捲る手が止まらなくなった。
どこか狂気を孕んでいて、常識という枠なんて最初から知らない・または気付かないふりをしているような気もする。
そして、それぞれの女性達の特徴は、少なからず誰しもが抱く感情・言動だと感じた。
非常識な他人の行いのせいで、人の人生が捻じ曲がるなんて、実はそうそうあることではなく、
むしろそれはただのきっかけにすぎず、本当は自らの選択でいかようにも転がるものなんじゃないか。
作中の泰子の心情にはそう書かれていて、あー作者が言いたいのはここだと思って、共感できた唯一の内容だった。
直子のような根無草人生を羨ましいと思う人は、実は相当数いるんじゃないか。
知らない・考えない・差し伸べられた手は全て掴む…楽だし悩むことなんてなさそうで、実に「簡単」に見えるからだ。
それをしないからこそ、「一人前の大人」だし、自分を律するというのは、一生をかけた努力と習慣の連続なのだと思うからだ。
初の角田光代作品がこれでよかったのだろうかww
次にどんな本を読むべきか、読後感はとても複雑。
Posted by ブクログ
幼い頃少しだけ一緒に暮らした智が突然現れる。そこから、「普通」に暮らしていた泰子の生活が変わっていく。
泰子を始め直子、一代。みんなたくましい。
それに比べて、男性陣はみんなほわほわして優しい。
直子はダメダメだけど、どんな時にも誰かに助けてもらえる。何か人を惹きつける不思議な魅力があるんだろうね。
何かが始まったら終わることはない。始まったら切り抜けなければならない。でも、どんなふうにしても切り抜けられる。なんとでもなる。って直子の言葉良かった。