あらすじ
巨大で獰猛な白いマッコウクジラ“モービィ・ディック”に復讐を果たすべく、過酷な航海を続ける捕鯨船ピークォード号は、ついに目標の白鯨を発見。船長エイハブと乗組員たちによる、熾烈な戦いの結末とは。
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Posted by ブクログ
非常に読みづらかった。ほとんどが本筋と直接関係がない鯨や捕鯨についての薀蓄となっており肝心の白鯨との対決は最後のわずか三章のみ。
どこかでこの作品が世界文学の名作の1つに挙げられている理由が、文字通り世界規模のスケールで物語が展開しているからだという評を見たことがあるが、たしかに多数の人種と国、地域にまたがる話であった。だが、せっかく主人公と冒頭で仲良くなったクィークェグも、中盤以降は出番がほとんどない。伏線というわけではないのか?ただエイハブ船長が終始信頼を寄せていた(と思われる)のは、銛手や拝火教徒たちといった「異教徒」たちであった。少なくとも彼らは書かれた内容において白人と同等に扱われていた。
膨大な鯨の薀蓄以外に関しては、破滅へと争い難く向かっていく指向性をだんだんと目立たせていく書き方は見事なものだと思われた。それは他船との交流であったり、狂気の代弁者エイハブ船長と理性の防波堤?スターバックとの対話・対照で描かれていたりした。
エイハブは隅から隅まで狂気に侵されているというよりは、ある程度それを確信的に、打算的に動いている感があった。というのは、彼は自分の乗組員たちを悲劇に巻き込んでしまう必要があったからである。スターバックは、白鯨を追うことが破滅へと確実に向かうこと、陸を2度と見れないことを意味すると感づいていたにも関わらず、また他の乗組員もさながら我が国が勝ち目のない戦争に誰も賛成しないままに突入したように、結局は悲劇から逃れられない運命にあった。
人間対自然の構図と言ってしまえば短絡的に過ぎるかもしれないが…。
全般的に捕鯨船の用語・知識に彩られていて、明確にイメージを描きながら読み進めることが難しい時もあった。それでも作者が豊富な経験と聖書その他の読書に裏付けされた知識を持っていることがよくわかったし、仰々しいような、叙事詩的な表現や描写、台詞回しも含めまさに壮大な物語であったことは間違いないと感じた。