あらすじ
スウが侍女として入ったのは、俗世間とは隔絶した辺鄙な地に建つ城館。そこに住んでいるのは、スウが世話をする令嬢、モード。それに彼女の伯父と使用人たち。訪ねてくる者と言えば、伯父の年老いた友人たちだけという屋敷で、モードは親しい友人もなく、蔵書狂の伯父の手伝いをして暮らしていた。他に話し相手もないそんな環境で、同い年のスウとモードが親しくなっていくのは当然のことだった。たとえその背後で、冷酷な計画を進めていようとも。計画の行方は?二人を待ち受ける運命とは?話題沸騰の新鋭サラ・ウォーターズが贈る傑作長編。CWAヒストリカル・ダガー受賞&第1位「このミステリーがすごい! 2005年版」海外編ベスト10。
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Posted by ブクログ
昔、少しだけ読んで読むのを
やめていた本。
田舎の泥棒一家が金持ちを夢見て
その夢をスウに託して…
モードの夢見る脳内お花畑っぷりに
スウは可哀そうにと憐れみを浮かべる
そして私も笑
それは次第に同情に変わり
モードを見る目も変わってくる。
男女、女女、とにかく
人と人の絡みが、文章によって
こんなに濃密なエロスになるとは…
サラ・ウォーターズもだが
中村有希さんの翻訳力にも脱帽である。
上巻最後の天地がひっくりかえる
どんでん返しは見もので
下巻にすぐさま手が飛びます。
下巻も渦巻く陰謀に
早くその答えを知りたくて
ページを捲る手がとにかく止まらない。
最後に明かされた答えは
登場人物も読む私たちにも
絶望と衝撃をあたえます。
Posted by ブクログ
あまりにも凄絶な恋の残酷。
緻密に練られた構成による怒涛の展開、人間ドラマの機微、ミステリーの要素を堪能しながら、「人を想うことの残酷」を感じさせる小説。
その残酷ゆえの官能が悦びがあまりにも力強くて、読後放心状態。
まさに「二人は、お城で幸せに暮らしましたとさ」という結末ではなかろうか。天晴。
Posted by ブクログ
初のサラウォーターズ。どんな作風なのかとか全く知らずに読んだ。想像してた以上におもしろかった。
一言で例えるなら、両手を固く握られて右へ左へとめちゃくちゃなワルツを踊らされているような感じ。
まず何よりストーリー展開がレベチだった。
単に、泥棒娘がお金持ちのお嬢様を騙すためにお城へ潜り込む話だと思っていた。お嬢様と友情が芽生えるのかなと思いきや芽生えたのは愛だった。(ここまで直接的な女の子同士の恋愛は読んだことなかった)
まずそれだけで衝撃だったのに、気狂い病院へスゥがいれられたときはホントにびっくりした。モードのしたたかさには戦慄した。ここで立場が逆転してしまうのがおもしろい。
その後も、母ちゃんが計画に噛んでいたことや、モードとスゥは赤ちゃんの時に入れ替わっていたことなど、全く予想しない展開が続き、読むのが止まらなかった。
次に登場人物たちも奥深く描かれている。
スゥの口悪く荒っぽい感じも真新しかったし、モードに至っては頭の弱い常識知らずのお嬢様と思いきや、スゥよりもはるかにしたたかだった。
母ちゃんもいろんな面を見せてくれた。
スゥを一番愛してくれていた母ちゃん、しかしその愛は偽物で金目当てにスゥを売った冷血な母ちゃん、けれど結局、娘のモードもスゥもどちらも愛していた故に最後まで苦しんだ母ちゃん…
彼女たちはじめ、紳士やジョン、ディンティなどもみんな深く描かれている。
暴力描写もあり、特に気狂い病院でスゥが看護師からいじめられたり水責めに合うシーンはかなりきつかった。
最後、酷い道を歩んできたモードとスゥが、お互い偽りのない姿で心を通わせ合うことができて良かった。2人が刺し違えなくて良かった。
2人ともよく頑張ったよ。
Posted by ブクログ
『半身』がおもしろかったんだよなぁと手に取り。
ヴィクトリア朝がドンピシャで好みなんですよね。
良い意味で混沌とした不潔感が文章の中に再現されてて、やっぱりこちらもおもしろかった!
信じてたのに覆される感もたまらんです。
そう言う意味では『半身』よりもディープかも。
Posted by ブクログ
背徳感とミステリーは相性がよいのかな。
良心の呵責にとらわれて騙したつまりが、嵌められていたスウ。いっぽう、紳士に泥棒ファミリーへと連れてこられたモードはとんでもない真実を知る。
途中の経過がかなり退屈なので、飛ばし読みしたが、筋は拾えた。
諸悪の根源たちは最後に成敗されるのだが、ひょっとすると、リチャードもサクスビー夫人ですらもさほど悪人ではないのでは、と思える部分もある。金欲にとられた人間はみずからを滅ぼす、というのが本作の教訓なのだろうか。二人の誤解が解けるラスト。
しかし、個人的にこういう騙し愛みたいなのは好きじゃない。物語としては面白いのだけど。