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すごく好き
「物語る」「見る」ということのちから。
名越は最後まで己にしか興味がなく(でも、みんな結局そうだと思う。それをどこかで手打ちにして折り合いをつけて生きているんだと思う)、
全てが嘘に囲まれた反動で、一切の嘘や折り合いをつける事が出来なくなり、
人とコミットしても、結局全てに「本当の自分」を求め、俺は何故?俺は何?という自意識への執着に囚われた。見えるもの全てに己がうつるのは当然な流れだと思う。
途中の、虚言癖をやめ(ざるをえなかっ)た辺りは重要な分岐点だったように感じる。
一旦嘘で固められた豪華な自分をやめ、中途半端な場所に居ながら落ち切ることもできない。嘘で固められた自分をやめた筈なのに、本当の自分も分からず、落ちぶれたと感じたくない為に嘘の時の自分を逃げ道の嘘に使う。そのサイクルから抜けたあの瞬間に、どこにもないもの(自分)を求めるより、そして「本当の自分」を求めているようで周囲の目に本当は物凄く過敏だ、表裏一体だ、と、何もない0の自分だけを(どうでもいい周囲に惑わされず)見つめて、そこから今たしかにそばに居る伊藤や世話になっているケンさんらと、ひとつひとつ積み上げて、いずれは実感も取り戻せたんじゃないだろうか。
でもそれは、名越自身が、イタさんに向かって放った言葉と同じで、無責任な感情なのだろう。名越は元々がオールオアナッシングな性質だから、「本当の己」への執着は手放せないのが現実かもしれない。
人の性質とはなんだろう。見たいものしか受けとれないのか。変えられないからこそ性質なのか。人と関わるって、何なのか。悲しく、怖くなる。
本当のトラウマを自らにも隠すためにハリボテの(わかりやすい)トラウマで覆うところや、
何気なく言った言葉や、だれかに向けた言葉は実は己を表しているのは、正に現実でも常に感じている事で、伊藤との掛け合いの中でのえぐりあいの描写など、凄まじい。
山本英夫はのぞき屋のスマイルみたいなキャラ好きですね。作品がぐっと読みやすくなるしかわいい。伊藤、実は責任感強くてめちゃくちゃいい奴。
ラストは星野智幸の「俺俺」も彷彿とさせる。
Posted by ブクログ
頭蓋骨に穴を開けるトラパネーションをしたことで人の姿や形が化け物ように見えてしまった、主人公名越、ただの幻覚かと思いきや
人の心がどうやらリンクしてその奇妙な形をみせてる様子、
その心の闇を見ることによって人の心に触れ、いいも悪いも解消して行く、
主人公の名越はいったいどこへ向かって行くのだろうと期待をはせた最終巻、最終的には見ることに疲れオレ自身を見て欲しいと、人の様々な奇妙な形は消えてなくなり自分自身へと姿を映す、自分が一番自分をわかってるという表現なのか、ラストの爽やかな笑顔がもの悲しい。
ななこという人物は結局人違いで、自分をわかってくれる人になりかねる人を夏越自身が求め、彼女にとらぱネーションを施すことによりお互いの心を見つめあいつながることで永遠の絆を求めたのだろうか、しかし見えたものは自分自身の顔とのセックス、衝撃すぎる展開に、なんだこれはと叫ばずにはいられない。
人は一人で死んで行くかもしれないけど、一人じゃ産まれない
夏越さん自身がもう少し他者に心を開いていたら、もっと違ったラストになっていたのではないかと思いをはせる作品でした。