あらすじ
にんじん――。髪の毛が赤くてそばかすだらけのルピック家の三番目の男の子はみんなからそう呼ばれている。あだなをつけたのはお母さんだ。お母さんは、にんじんに夜の暗闇のなかをにわとり小屋の扉を閉めに行かせたり、おもらししたおしっこを朝食のスープに混ぜて飲ませたりする……。だが、にんじんは母親のいじわるにも負けずに成長してゆく。生命力あふれる自伝的小説の傑作。
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Posted by ブクログ
痛い。痛過ぎる。表紙イラストのかわいさ故、ディズニー的ハッピーエンドを期待して購入したが、初っ端から虐待の嵐。顔が引き攣るシーンが度々出てくる。毒親の発言が自分の思考と化していた(刷り込み、思い込み?)が、大人になるにつれ、自分の意見をちゃんと言語化できていく。最後の、「ああ、誰も僕を愛してくれないんだ」のセリフが出た時は、苦しいながらも、ちゃんと自覚して言葉にできて良かった、とにんじんの成長を感じた。
Posted by ブクログ
『にんじん』なんて可愛らしいタイトルの意味が切なくなってしまった
最後まで主人公のにんじんは誰にも名前を誰も呼ばれなかったのだ
お母さんのにんじんへの仕打ち、価値を見いだした途端気にかけ始めるお父さん、兄、姉もにんじんのこと下に見てるのがよくわかる
そりゃ、にんじん、歪むよね
途中途中に入る動物へのにんじんの仕打ちがにんじんの歪みをあらわしていたように感じた
なんかどのエピソードもパンチすごくて、それでも誰かに愛されたいと願い叶わず、から回るにんじんの姿が上手く表現されている
全て話、母親から離れたいと願ったのに父親になだめられるようなこと言われたにんじんの気持ちを思うとあまりにも痛いですね…
世界に絶望して、それでも愛を求めるにんじんの姿に誰か抱きしめてあげてって思いが募りました
名前は世界で産まれて初めて貰う愛情だと思っている
この本を読んでもっと人の名前を大切にしようと思った
Posted by ブクログ
訳者による解説が秀逸である。今から読むならこの高野優さん訳の新潮文庫版をおすすめしたい。
にんじんはかわいそうだけど、にんじんも小憎たらしいところがあるからそこまで感情移入できないというような書評や感想を目にしたことがあるが、なぜにんじんはそういう言動に及んでいるのかということだ(訳者の違いによって、よりどっちもどっちと受け取れるような訳になっているものもあるのかもしれない)。
誰がなんと言おうが、このにんじんという作品は母親に苦しめられている少年が母親を拒否するまでの成長を描いた物語である。
なんとなく児童文学ぽく扱われている気がするけど、大人こそ読むべき本ではないかと思う。