あらすじ
1789年7月に勃発したフランス革命は、以後のあらゆる革命の基本になった。社会主義はもちろん、いまの日本の「改革」志向も、すべてこの革命に通じている。だが、その真実は何だったのか?「保守主義の父」と呼ばれる著者、エドマンド・バークが喝破したのは、革命による混乱が生じた国家で、急進主義的な改革を推し進めようとすれば、その国の事態は日を追って収拾がつかなくなる、ということだった。挙げ句の果てに、その政府は人々が唖然とするような「トンデモ政策」を打ち出さざるをえなくなる。まさに、2011年の民主党政権の有り様と同じではないか!本書は、バークの思想の現代性を読み取った訳者・佐藤健志氏が、フランス革命が進行するさなかに書かれた名著をバージョンアップしてよみがえらせたものである。21世紀の今日、チュニジアやエジプトの革命はいうに及ばず、日本の「革命政府」が生み出した混乱を理解するうえでも必読の書。
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革命思想にご用心
一部ご紹介します。
・「革新」に憧れる精神とは、身勝手で浅はかなものだ。自分たちの祖先を顧みない者が、自分の子孫のことを思いやるはずがない。
・人は自由や権利を相続財産のように看做せば、「前の世代から受け継いだ自由や権利を大事にしなければならない」という保守の発想と、「われわれの自由や権利を後の世代にきちんと受け継がせなければならない」という継承の発想が生まれることをわきまえる。そしてこれらは「自由や権利を、より望ましい形にしたうえで受け継がせたい」という進歩向上の発想とも完全に共存しうる。
・社会が複雑なものである以上、「多くの目標が不完全に、かつ途切れ途切れに達成される」ほうが、「いくつかの目標は完璧に達成されたが、そのせいで残りの目標は放置されたか、悪化した」よりもましだ。
・長年にわたって保たれてきた価値観や慣習が失われることの損失は計り知れないものだ。それは航海中の舟が羅針盤を無くすことに等しい。われわれは自分たちが正しい方向に進んでるかは無論、そもそもどんな方向を目指しているかさえ分からなくなり、沈没してしまう。
・誰であれ、いずれは神の御前に立ち「自分の行動について申し開きをしなければならない」とわきまえていれば、無責任な行動や恥知らずな言動をしようとは思わなくなるものだ。
・民主制が機能するためには、民衆はエゴイズムを捨てなければならない。宗教の力が無ければ不可能なことだ。
・国家というものは、今生きている者と、墓石になった祖先と、これから産まれてくる子孫とで育まれる精神の共同体なのである。
・私有財産無くして自由はなく、自由無くして美徳はない。
・民主制には暴政との共通点が数多くある。民主制において、多数派は少数者に対して最も残酷な弾圧を加えることができる。
・われわれは歴史から正しい教訓を学ぶとは限らない。気を付けていないと、人々の目を曇らせ、争いを惹き起こすために歴史が悪用されることもある。
・あらゆる変更の目的は、これまで享受してきた幸福を今後も維持すること、すなわち保守に置かれるべきだ。そして、変更を行う際も、「問題のない箇所はそのまま残す」ほうがいい。古くなった建物の補修工事を行うように。付け加えたいものがあるならそれも結構だろう。しかし、祖先が残していった大切なものだけは守っていくべきだ。