あらすじ
カサンドラに拉致されたサフィアは、霊廟で発見された手がかりをもとにウバールの場所を突き止める。一方、カサンドラの襲撃を逃れたペインターたちも、ウバールを目指していた。砂漠でかつて繁栄を極めながら、神の怒りに触れて砂に埋もれたとされるウバールには、本当に反物質が存在するのか? 不思議な力を持つ部族の力を借りながら、ペインターたちはギルドの攻撃に立ち向かう。だが、ペインターが相手にしなければならないのは、かつてのパートナーのカサンドラが率いるギルドの部隊だけではなかった。ウバールには超大型の砂嵐が迫っていたのである。砂嵐の影響で不安定になった反物質は、その膨大なエネルギーを放出し始めた。果たしてペインターはギルドの野望と反物質の暴走を阻止することができるのか?幻の民の秘めたる力とは……〈シグマフォース〉原点の物語、注目の後編!
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Posted by ブクログ
ジェームズ・ロリンズによる後のシグマフォースシリーズに繋がる作品の下巻。
上巻でペインターはシグマにギルドと繋がっている人物がいることに懸念を抱き、偽の情報を流していたが、あっさりとカサンドラに筒抜けになっていたことでシグマの上部にギルドとつながりがあり、シグマを裏切っている人物がいることを確信する。
一方、サフィアの出生の秘密が明かされ、やがて特殊な能力を持つ一族の血を受け継いでいること、キャラとの関係にまで話が広がり、これまで疑問だったことの一端が明かされる。ここから物語は急展開を見せ、失われた都市「ウバール」へと導かれていく。
本作後半では猛烈な砂嵐が吹き荒れ、やがては執拗にサフィアを追ってきたカサンドラさえも戦闘を中断せざるを得なくなるほどになる。原題である「Sandstorm」はまさにこの状況を描いているし、砂嵐によって引き起こされる悲劇は、まさに邦題の「ウバールの悪魔」そのものだ。そして、その状況は一歩間違うとウバールのみならず、世界に破滅をもたらすほどのものだった。
日本の読者は先にペインターが司令官としてシグマを率いている作品を目にしているため、本作でもペインターは生き残ることが前提として読み進められることになるが、それでもペインターを巡る状況は常に危機一髪であり、ちょっとでも気を抜くと命を落とす状況をこれでもかと用意している。読者を引きつける物語の展開もさることながら、随所にちりばめられた蘊蓄もまたこのシリーズ、ひいては本作者の特徴として興味深い。静電気や絶縁のくだりはおやっ?と思うところも多々あるが、物語として面白ければ許されるか。
Posted by ブクログ
シグマフォースのペインター・クロウの若き日のお話。反物質がテーマになっている壮大なスケールの物語。シグマフォースを知らなくても、単独で読んでも面白い。
Posted by ブクログ
シグマフォースシリーズ第0弾。なぜ「0」かというと、邦訳第1弾『マギの聖骨』より前に書かれた作品だから。グレイやモンクなど現在のメンバーは登場せず、まだ司令官になる前のペインター・クロウが主人公として活躍し、敵対組織「ギルド」と戦う。舞台や設定は共通であるものの、「マギ」以降のシリーズとは関連が薄く、今までずっと未訳のままだった。
現在刊行されているシグマフォースシリーズ(1~4)は本作を読まなくても特に困らないと思うが、来年(2014年春)に刊行予定の "The Doomsday Key"(仮題『ケルトの封印』)はいよいよギルドとの全面対決になるようで、その準備としてこの時期に出版されたらしい。
ストーリーの内容は、
大英博物館で謎の爆発事件が起き、シグマフォースのペインターがパートナーと共に調査に向かう。が、同時にギルドも工作員を送り込み、学芸員のサフィアを拉致しようとする。難を逃れたサフィアはスポンサーのキャラ、元婚約者のオマハ、ペインターらとともに中東のオマーンへ向かい、失われた都「ウバール」の謎を解こうとする。
……というもので、最初に書かれた作品に対して言うのも何だが、あまり新鮮さを感じなかった。人間関係もペインター、サフィア、カサンドラが次作のグレイ、レイチェル、セイチャンと重なる印象あり。第5作の準備として読んではみたものの、読まなくてもあまり影響ないんじゃ? という予感がするなぁ(単なる予感だからまだわからないけど)。
独立した作品として見ると、考古学的謎解き+冒険活劇+ロマンスという要素は悪くないし、展開もスピーディでサクサク読ませる。だからこそ、最初に読んだ方が新鮮で面白かったろうなーという残念感が拭えない。シリーズ物はやはり書かれた順に読むべきであると改めて確信した。