【感想・ネタバレ】順列都市〔下〕のレビュー

1,078円 (税込)
539円 (税込) 12月18日まで

2pt

あらすじ

ソフトウェア・デザイナーのマリア・デルカは、思いもよらぬ申し出を受けた。天才的人工生命研究者ランバートが考えだした人工宇宙―オートヴァース内に、ひとつの惑星全体と、さらには高い知能をもつ生命体に進化する原始有機体を設計してくれというのだ。だが、地球にあるすべてのコンピュータの計算能力をあわせても、走らせることさえできないプログラムを作る目的とは……?

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Posted by ブクログ

ネタバレ

途中内容を理解するのに諦めるシーンも多い難解な内容だったが、奥深く壮大なスケールで描かれる宇宙創世の話はさすがイーガンといったところ。
エピローグで描かれた現実世界のマリアの姿の物悲しさが後を引いた……

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2017年01月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 1994年発表、グレッグ・イーガン著。ソフトウェア化された意識〈コピー〉が一般化された世界。富豪のコピー達に、宇宙が消失しようとも永遠に生きられる方法を提示する男。N次元オートマトンを駆使した、膨張し続けるTVC宇宙(エリュシオン)内に、コピー達と彼らの住む街〈順列都市〉を作り、さらに簡略化された物理法則を持つオートヴァ―ス宇宙を作る。やがてオートヴァ―ス宇宙側(そこに住む知的生命体、ランバート人)から、TVC宇宙への浸食(より高次の万物理論の暗示)が起こり始める。
 久しぶりのイーガンだったが、やはり一筋縄には理解できない。依然読んだ『ディアスポラ』以上に難しいと感じた。おそらく難解な部分そのものが、本小説の核だからだろう(『ディアスポラ』では難解さは味付けのように感じたのだが)。
 コピーという概念自体は使い古されたテーマだろうが、物語前半の経済的な制約やオートヴァ―スについての実験のリアリティー、数学的知識(塵理論と発進の原理)、コンピューターやセルオートマトンなど科学的知識を駆使して独特な仮想世界を生み出すあたり、とても新鮮だった。不死の概念を塗り替える思想はおもしろいし、何より最後の方のオートヴァ―ス側からの浸食がスリリングだった。別の物理法則をもった宇宙同士がぶつかり合うという話は、我々人間の科学的進展もまたランバート人のような過程を進んでいることを暗示しているのだろう。神の不在(本作ではランバート人にとってのエリュシオン人の不在)、神すら包括されている高次の物理法則。興味深い。古くからある、普遍的なテーマだ。さらに物語の裏に流れているであろう、数学の絶対視(TVC宇宙もオートヴァ―ス宇宙も数学の基盤からは逃れてはいない。どちらも数学に比べれば不安定なのだ)。以前から個人的に考えてきたことだったので、何だかイーガンに共感できてホッとした。
 本作を読むといろいろと勉強したくなってくる。数学、意識についての哲学、コンピューター工学。特にセルオートマトンについては非常に興味が湧いた。
 気になった点が二つ。一つは量子力学について。前半部分で、現実に比べてオートヴァ―ス内で突然変異が起こりにくい理由として登場したので、後半に重要な役割を担うと期待していたのだが、そんなことはなかった。もう一つはN次元オートマトンの作り方。本小説における一番の重要な装置だと思うのだが(これがないと宇宙が作れない)、ただ開発されたというだけで何の説明もない。もう少し詳しく説明してほしかった。

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2016年08月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

上下巻あるうちの「下巻」。こちらに入ると俄然話が進んで一気に面白くなる・・・のだが、最後の半分は「順列都市」内の話になって、いきなり数千年ほど時間がたったりしてしまい、そこにいくともうSFと言うよりはファンタジーになってしまう。

最初読んだ時にはエリュシオンと塵理論の話がさっぱりわからず(というか最初からわかる人は皆無だろう・・・)解説しているサイトを色々読んで、二回目をようやく理解。わからなかったのは、エリュシオンを動かしているハードウェアを停止しているのに「なんで数千年もエリュシオンは動き続けるのか?」ということ。。

で、これを理解する・・というか解釈するためには塵理論が必要なんだけど、これって物理で言うところの素粒子論に近い処がある。たぶん大学で物理を学んだ人にはイメージがわくんだろうけど、塵理論というのはようするに「ある一瞬を切り出しても因果律を無視したあらゆる世界の可能性が含まれている」ということを言っていて、エリュシオンの中で数千年がたってていても、私たちが感じることのできる実時間では数秒もたっていないということなのだ(というかそもそも時間がたつ必要がない。因果律がないので)。

こういった可能性に考えが至ると、結局この話で書かれている不死性というのは時間の近くの仕方による・・という結論が導かれるのだけど、そこまで書くと話が長くなるし、自分でもなにを言ってるかわからなくなりそう。

とにかくほっぽり出した感がある最後と言い、難解さが半端ない作品ではあるが、まるで今のコンピューターの状況をかなり正確に予想していて、一読の価値ありである。

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2014年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オートヴァースをはじめ、話が難解で理解しきれない部分も多かったが、塵理論などはわからないなりに(解釈が間違ってそうだが)面白かった。塵のように散らばる要素を認識したものが世界であり、時間というものも、人間の勝手な認識の仕方に過ぎない、という感じ...?
終盤の、ランバート人が独自に納得のいく歴史を作りそれが真実になる、というあたりが特に面白かった。人類が今正しいと信じている歴史も、捏造かもしれないと仄めかすようでもある。

同じイーガンだと、「宇宙消失」のほうがとっつきやすく熱中して読めたので、その意味で⭐️3にした。

読みながら、デッド・チャンの「あなたの人生の物語」やリングシリーズの「ループ」を連想した。

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2020年06月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

単純セルで形成された秩序と法則が、仮想世界の生き物によって乱され崩壊していく。
正直23回失敗したとか失敗と分かっている世界だの、言っている意味と理屈がよく理解できなかった。

ピーとケイトの数千年に1回の計算、外界から切り離され保たれる主観と流れていく「実世界時間」。圧倒的なスケールでこの中で1番好きなカップル。

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2020年05月12日

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