あらすじ
ニコニコ動画を育てあげ、KADOKAWA・DWANGOのトップとなった川上量生氏が生き方、働き方の哲学を語りつくす。
ウェブメディア「cakes」(ケイクス)の大人気連載「川上量生の胸のうち」を単行本化!
「もしドラ」の担当編集者でありcakesを率いる加藤貞顕氏が、川上量生氏の本音を次々と引き出していく。
「よくわからないからこそ、解きたいと思う」
「『しょうがないな』と思われるポジションをつくる」……
常識とは真逆の結論、1億年先を考える思考、さらにテクノロジーと笑い――。若き天才経営者と呼ばれる川上量生の胸のうち、頭の中がわかります。
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Posted by ブクログ
カドカワドワンゴの川上さんとケイクスの加藤さんの対談本。
川上さんはもちろんだけど、加藤さんも相当頭良いオタクだなという印象。とにかく二人の思考の切り口とバックグラウンドにある知識の量が面白くて笑けてくる。
とにかくアタマが刺激される良質な一冊でした。
・ニコニコ超会議はあとから振り返ると意味があった。mixiは終った感でたけど、ニコニコはやってる感出せた。
・カドカワドワンゴの経営統合に関して、任天堂を引き合いに出して、プラットフォーム自身がコンテンツを作るべき。コンテンツを作らないプラットフォームはコンテンツが安くなる。地獄になる。
・論理が多くなればなるほど現実を正確にエミュレーションしやすくなる。その過程で何とか論理を成立させようと無理矢理考える。詭弁になったらだめなのでビジネス的にも成立させようと頑張る。
ストーリー戦略のストーリーはこじつけ。
・クリエイターが増えれば増えるほど多様性は失われる。ラノベのストーリーの話。
・才能とは希少性
・インターネットは多様性を失わさせる
・オタクって「敵にまわすと恐ろしいが味方にすると頼りない」
・孤独は形質じゃなくて状況。なので希少性にはならない。
・論理の後付けの事例:ヨーロッパのスコラ哲学。神は存在するという前提で理屈を考えた。
・文系の論客は言葉は道具だと捉え、論理を手段として扱う。理系の研究者は論理的に正しいことは何なのかということに興味がある。理系は論理を使って世の中の一般法則とか真理を探している。
・説明の量を増やせばだいたいは説明が付く。フーリエ解析みたいなもん。
・イデオロギーの本質は知識の体型なんだと。世界をエミュレーションするための膨大な論理というものは力を持つ。ある程度世界を正しく論述できてしまうから。これがイデオロギーの本質。共産主義とかね。
Posted by ブクログ
ニコニコ動画の会社(ドワンゴ)創業者で取締役である、川上量生氏の思考法・働き方などについてインタビュー形式で書かれたビジネス・自己啓発本。
彼は、ニコニコ動画の社長でありながら、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに無給で弟子入り(丁稚奉公)したり、KADOKAWA(角川書店)の角川歴彦会長に気に入られて経営統合して後継者になったりと、天才だけど変人なんだろうなと、以前から興味を持っていたので、この本を読んでみた。
読んでみると、発想が斜め上過ぎて、ちょっと常人では参考になりそうもない話が多いけど、共感できるところもいくつかあった。印象に残ったのは、以下のようなこと。
ニコニコ動画の会社経営
・出勤や食事が不規則な社員(主にプログラマ)のために体操服の女性が朝弁当を無料で手渡し(ラジオ体操も)する「女子マネ弁当」
・あえて、ニコニコ動画のユーザインターフェースを使いづらくする(ユーザの共通敵となることで話題を提供)
インターネットメディアのあり方
・ニコニコはメディアとしては思想を持たず「何もわからない」というスタンスで(バカなフリをして)右も左もあらゆる情報を平等に垂れ流す。
・誰でも作品を発表できる場ができクリエイターになりやすくなれば(オープンになれば)なる程、作品の多様性は減っていく(競争が激しくなり最大公約数にウケるものが氾濫するようになるため)。
働き方
・日本の賢い人は、あまり働かず楽して儲かる仕事(省庁・商社・金融業界)をしてる。頭悪い人は夢を追いかけて「やりたいこと」をやろうとする。川上氏は、それがバカなことだと分かっていて、バカを一生懸命にやる『愉快犯』でありたい。
・バカな馬ほど良く走る。賢い馬は肉になる。
・新入社員試験に受験料制度を設け、今の就活状況(1人が何十社も気軽にノミネートして受験するせいで、ほとんど不採用)に一石を投じる。
論理思考
・川上氏の語る「理系と文系の違い」が面白かった。
「理系は論理を使って、世の中の真理を探す。文系は先に自分なりの結論があって、世の中を動かすための手段として論理を使う。」
理系と文系それぞれに論理的で賢い人は存在するが、お互いに話がかみ合わないことが多いのはそのため。
感じたこと
・川上氏は、とにかく論理的で理系でヲタクで人と違う発想をする人なのだけど、基本的には怠けたい・競争をしたくないという性格らしい。何故そんな人がここまで成功できたのかというと、やはりニコニコ動画に参加し、それを面白がる日本人のヲタク文化・ポップカルチャーという風土があればこそなんだと思う。
・ニコニコ動画(ドワンゴ)は、無機質で人を孤独にしがちなコンピュータ・ネットを、人と人・人と社会をつなげるプラットフォームとして提供し、今よりも面白おかしい社会へ変えてくれるかもしれない、貴重な会社なのだと感じた。今は若者・ヲタクの中だけの閉じた世界かもしれないけど、KADOKAWAとの統合で今後どのようになっていくのか。注目したい。
Posted by ブクログ
ドワンゴ会長の川上さんのインタビュー集。
この人を見ていて思うことは、技術や知識に明るいこともそうだが、洞察力、思考力、表現力が抜群に高いということ。また、理系出身らしく自説を論理的に伝えるのが得意である。書籍の内容自体も秀逸で興味深かったし刺激的ではあったが、それ以上に、1つのテーマに対する着眼点、分析の仕方、そして表現の仕方などに唸らされることが多かった。私などは普段多くの情報に接しても、それらの情報を大して考えもせず鵜呑みにしてしまい、疑いを持たず、そのまま取り入れてしまうようなところがある。しかし、彼はそのように一筋縄で納得する人間ではない。常識とされているようなこと、世間で言われているようなこと、当たり前すぎて誰も目を向けない所にスポットを当て、分析を加え、確固とした自説を組み立てていく。
ホリエモンにも似たような所があるが、共通点としては「自分の頭で発想し、思考し、行動する」ということに対して不安を感じていないように見えるという点ではないだろうか。その説が正しいか、違っているかなどは問題ではなく、自分なりのスタイルを確立しているところである。川上さんがいる限り、今後もドワンゴは若者にフィットしたサービスや企画を提供し続けていくだろう。