あらすじ
【第51回毎日芸術賞受賞作】非戦論を主張しながらも脚気治療のために満洲へ赴いたドクトル槇。戦地で軍医を務める森鴎外や田山花袋らと出会いながら、彼もまた否応なしに戦争に巻き込まれていく。その傍ら、地元の森宮では鉄道敷設反対とともに社会主義運動が起こり、街全体が奇妙な熱気と不穏な空気で覆われる。様々な思惑の飛び交うなか、槇と永野夫人は秘かに禁断の恋を育み……。激動の時代を紡ぐ歴史大河長編、完結。
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Posted by ブクログ
おもしろいなあ.いわゆる「大河小説」である.森宮(新宮)の人々を中心に,毒取る(ドクトル)こと槇医師を主人公,日露戦争を背景として描かれた人間模様.人物描写があっさりしすぎているような気がしないでもないが,物語が主人公と言ってもよいので,これはこれでよし.また,戦争はあくまでも背景で,これも詳しく書きすぎると坂の上の雲になってしまうので,これもこれでよし.
Posted by ブクログ
戦争に反対していた「毒取る」槇は、脚気に苦しむ兵士を助けるべく医者として戦地に赴く。
そこには、脚気について誤った主張・治療をしなければならず苦悩する森林太郎(森鴎外)がいた。
森宮に帰国後、槇はもとの生活にもどるが、
そこでは社会主義運動が広がり始め、怪しげな空気に包まれていた。
槇は、はからずもその騒動に巻き込まれてしまう。
上巻を読み終えた後、本書の題材である「大逆事件」について少し調べてみました。
槇のモデルとなった医師は、大逆事件で無実の罪で処刑されています。
だからきっと、「この物語も悲しい結末をむかえるんだ」と身構えて読んでいました。
しかし、最後まで読んでいくと、槇は想い交わしていた永野夫人と結ばれます。
二人で海外に移住します。
ハッピーエンドなのです。
「永野夫人」という存在は創作なので、この時点で史実とは一致しないのですが、
槇のモデルとなった大石誠之助が悲しいおわりを迎えているというのに、
こんな幸せな結末って、アリなのでしょうか。
史実を題材にした物語なのに、こんな真逆な終わり方なんて・・・。
もっと鳥子署長がイヤな感じで槇にからんでくると思ったのに、あっさり身をひいたしな。
納得がいきません。
「大逆事件」のこと、あまり調べないで読めば、
もっと違う感想をもっていたかもしれません。