あらすじ
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。
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朝起きると巨大な毒虫になっていたグレーゴル。家族の働き頭だった彼だが、毒虫になったために働くことができなくなったばかりか、大迷惑な存在になってしまった。そんな、家族のお荷物となってしまったグレーゴルの心情や、お荷物を抱えることになった家族の心情がよく描かれた作品です。
グレーゴルが家族に迷惑をかける度に、グレーゴルに対する家族の態度や扱い方が酷くなっていく描写がすごくリアルで、グレーゴルにも家族にも同情してしまうため、「道徳的にダメな扱いだけど、現実世界でもこうなってしまうんだろうな…」と考え込んでしまいます。
ただ読むだけでなく、グレーゴルがなってしまった「巨大な毒虫」が、はたして何のメタファーなのかを考察するのもこの作品の楽しみ方の一つです。
物語に対する自分なりの解釈を見つけられるまで何度読み返しても飽きないような作品なので、是非お勧めしたいです!
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Posted by ブクログ
話の内容は奇妙キテレツであり、虫の動きが事細かく描写していてるにも関わらず、読み込んでしまう、魅力がある内容であった。それだけでなく、いろいろな解釈ができ、不思議なことを自然に読ませる(虫になったこと、周りの変化が薄いこと)本だとも感じた。作者は駄作と評価しているが、恐ろしいほど魅力がある。
自分がグレゴールになったらと想像すると、同情と恐怖を感じた。働き者が一体どうして不運な運命になったのか、家族は冷徹な態度どう感じたのか、いろいろ想像を膨らませてくれました。
Posted by ブクログ
いかに人間が本質ではなく存在でものを捉えてしまっているのかがわかる気がした。それと同時に実存主義に興味を持つきっかけにもなった。
虫になり家族に貢献することができなくなり煙たがられてしまうことは何かのメタファーであるのだろうが、そこ以上に社会の持つ不条理とそれに生きる自分たちと云う面で見てしまった。そして、その不条理に対して人間はどう動くのだろうか。この小説の場合、グレーゴルは自らが虫になったことに対していつのまにか慣れてしまう。そのことがひどく恐ろしく、印象に残った。
Posted by ブクログ
「100分で名著」で興味を持ち読みました。
感想としてはグレーゴルは父や母、妹などに虐待に近いことをされているとも言えますが、
グレーゴルは虫になったときに病にかかったといっていましたが実は醜い姿になっていたのではないでしょうか?
責任感の強そうなグレーゴルは疲れて病にかかり虫になった幻覚を見て虫のような動きをしていたのではないでしょうか?
もしくは夢落ち説もあるのかなと思いました。
また、作者のカフカも人生や願望に寄せて作っているのかと思いました。
当時20世紀では不治の病の結核によりカフカは彼女と結婚ができず40歳で亡くなりますが、亡くなる直前に書いた本「城」では主人公が城まで行こうとしますがいくら歩いても着かない…。
などカフカは自分の居場所がないと思っていたのか分かりませんがこの「城」の主人公がカフカと似たようなことをしている、と100分で名著ではそのような事を言っていました。
太宰治著の「人間失格」では主人公が、絵は作者達の心を示しているものと判断していましたが、それは絵だけには留まらず、小説、漫画、つまりは作者達の作品等は全て彼らの心を示しているのでは?と思いました。
カフカや太宰治、2人ともどのような気持ちで執筆していたのでしょうか?
今までの人達が作った様々な作品らは、どのような思いの中で作られたのか、それを知りたく思います。
Posted by ブクログ
言わずと知れた文学界の金字塔、フランツ・カフカの「変身」。
ある朝目覚めた主人公は自分が一匹の大きな虫になっていることに気づく。虫になってしまった主人公とその小さな世界(家族と家の中)の変化と行く末を描く物語。
有名な冒頭以外は知らなかったので、新鮮な気持ちで読むことができた。文章が面白いし引きずられるということはないんだけど、徹頭徹尾、主人公が深刻な鬱状態ですごく悲しい。自分が虫になってしまっていること、消えてしまいたいと思っていること、それでもなんとか家族や職場に迷惑はかけまいと思っていること、誰かにぞんざいに扱われても怒る気持ちが湧かないこと。主人公が自分を大切に思えていないのがよく分かる。そのままラストまで駆け抜けてしまう……
全体的に湿度も少なくてさらさら読めるし、主人公の死後、残された家族が雲が切れたようににわかに幸福へ向かっていく結末も個人的には好きなんだけど、あまりに鬱の解像度が高くてカフカが心配になるよ
●あらすじ
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。
(新潮社HPより引用)
Posted by ブクログ
不条理文学の代表的な作品です。
主人公が支えてきたことも忘れて、家族が一致団結して良い方向に向かいます。家族から見れば自分たちへの不条理を乗り越えて明るい明日へ進む話ですが、主人公は受け入れられず、理解されず、一人孤独に死んでいきます。
毒虫への変身のため、古めかしいファンタジーだと受け取りがちですが、このような不条理は今でも突如として人々を襲います。コロナ禍での差別的な視線は同じものだったのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
学生時代、半分まで読みながら、
雨にぬれてボロボロになり捨ててしまったカフカ『変身』を再読しました。
朝、起きたら一匹の気持ちの悪い虫に変身してた男の話。
これはなんの寓意があるのか?
といろいろ考えてしまいますが、
要はその、虫になった、というファンタジックな部分が鍵で、
あとはオートマチックのように筆が滑って
できあがっていく物語のように思えました。
なぜ、足が無数に生えた気持ちの悪い虫なのか。
『変身』が本になるときには、
カフカは虫そのものを表紙に描いてはいけない、と
出版社に急いで手紙を出して表紙絵の案を先読みして
拒否していたようです。
なぜ?なのか。
僕の解釈だと、ファンタジーというものの
深層意識性というところに必然性があると思うのです。
また、絵画のような、言葉では言い表せられないけれど、
その配置と色づかいは理にかなっている、というように、
うまく言い表せないけれど、変身したものが虫というのは、
非常に理にかなっているのだと思えます。
これは、実際に、文章の中身を想像して読んでみて、
その喚起させられるものの心象を顧みることでわかると思うのですが。
だって、寝る間もないくらいに働いて、
歩合制の外交販売員の仕事を頑張っているわけです。
忙殺されているわけです。
両親がいて妹がいるけれども、
彼らとコミュニケーションをとる時間も無い。
それも、家自体が借金を抱えているからで、
働けども働けども楽にならないし、
主人公のグレーゴルはそんな家族間の関係も
無味としたもののように感じ始めている、
実際を知る由は無いのだけれど、
そう確信に似た観念を持っているのは、
やはり仕事に追われていて、
人間らしい時間を持つことができていないからです。
だから、そんなグレーゴル自体がもう
異形の世界に足を突っ込んでしまっている。
荒んでいっている心に相当する外見が、
気持ちの悪い形をした虫だったというわけではないのか。
たとえば神様的な存在がいて、グレーゴルを見ている。
おまえの心の歪み具合、それはひとえに家族のためだったにしても
そんな背景は鑑みない、おまえ自体のその心の歪みとしてしか見ない、
そして、その心の歪みにもっともぴったりな体躯にしてやろう。
そんな神様的存在のきまぐれが、
グレーゴルを虫にしたのではないか、と僕は考えました。
意識の深層であげる悲鳴を具現化したのが虫。
そこには、せわしい生活の送り方などのスタイルも加味されていて、
ぴったりな芸術的転移をもって虫にされている。
物語っていうのは、舞台の基盤ができれば、
つまり設定が決まれば勝手に走っていくというところもあるんですよね。
虫になるという設定が決まった時点で、あとの物語の進みは
ある程度決まったものだったのかもしれないな、なんて思いました。
まあ、物語すべて、ただの悪夢だという話もあるようですが、
はてさて、ひとつに決まった解釈はありません。
読者がどう感じるかの自由が十分にある小説です。
カフカの写実的なところは、
僕の、小説を書く姿勢とおんなじかもしれない。
まあ、僕の写実性は大したことはないかもしれないですが、
絵描きがまず写実性を磨くように、
小説家も最初は写実性を磨く方がいいとぼくは思うわけ。
そうやって基礎力をつけてからだし、
ファンタジックなものをこしらえるにしても、
写実性の重力がなければ、ふわふわした建物になってしまいますから、
読んでいてもうまくないんじゃないかなあと想像がいきます。
最後に。
巻末の「解説」を読んでですが、
カフカは孤独が辛いから結婚しようと思ったものの、
そうすると相手の女性が自分の心にまで入ってきて
孤独を失わせてしまうから拒絶する。
そういう葛藤、わかるなあと思いました。
Posted by ブクログ
主人公が救われなくて苦しい
でも彼の心情を知ることができるのは読者である私たちだけで、彼は言葉を話せないのだから家族は知る由もないよな
虚無感に襲われている
Posted by ブクログ
朝、目を覚ますと、自分が巨大な虫になっていた――。有名なこの冒頭から始まる本作は、主人公グレゴール・ザムザの肉体的な「変身」を通して、彼を取り巻く社会、とりわけ家族という最も親密な共同体の冷酷な変容を、圧倒的な筆致で描き出した文学作品です。
物語の主人公は、変わり果てた姿になってもなお、人間としての意識を保ち続けます。しかし、言葉は通じず、家族との意思疎通も叶わず、彼は徐々に「家族の一員」から「異物」へと扱いが変わっていきます。とりわけ悲痛なのは、家族が彼を“すでに死んだ者”として受け入れ、そして前を向いて生きようと決意していくその過程です。
彼を切り捨てた事で、精神的に自立していく家族達。それは主人公にとっても家族が変身してしまった事と同義であり、救いの道が閉ざされた主人公は、肉体が死を迎えるより先に、その人生に終わりを告げられていました。
本作は、障碍者や社会的弱者に対する無理解や排除を寓話的に描いた作品とも解釈されますが、読後に残るのは「では、どうすればよかったのか」という答えのない問いです。救いのなさと喪失感。そして、その中で浮かび上がる問いは、読むたびに形を変えながら、いつまでも居座り続けるのです。
Posted by ブクログ
グレーゴルが虫になってしまったという出来事そのものよりも、疎ましい存在に変わってしまったものへの周囲の態度、そしてグレーゴルがいなければ成り立たないと思われていた生活がグレーゴルなしでも成り立つことが分かってしまっただけではなく、そもそもグレーゴルが与えていたものが重荷だったんだと気付いてしまうこと。そこが恐ろしかった。
Posted by ブクログ
[ブログで紹介]
ふと
「新潮文庫の100冊」
を読もうと思い立った、第三弾です。
ネットオフの「タダ本1か月無料トライアルキャンペーン」で無料(送料のみ)で古本を入手しました。
フランツ・カフカの小説は初めて読みました。
【本書のポイント】
まったく不可解な小説です。
虫になった主人公と家族の関係が冷ややかで、最後にやりきれない思いになります。
時代背景やカフカの家族関係を研究すれば、理解が深まるかもしれません。
1.あらすじ(ネタバレを含みます)
一人で家族を養っているセールスマン、グレーゴル・ザムザはある朝起きると虫になっていました。
同居している家族、両親と娘はぞんざいに扱います。
グレーゴルは弱っていき息を引き取ります。
家族は仕事に就いていて、新しい生活が始まる予感に心が浮き立ちます。
2.感想
虫になって意思疎通ができなくなってしまい、部屋に閉じ込められてしまうグレーゴルは、引きこもり状態を示しているのかもしれません。
ぞんざいに扱う家族は、対処ができない状態を示しているのかもしれません。
そこに同情のような感情はありません。
死後、今後の生活に新しい夢を感じる家族には、いなくなってほっとする感情が湧きあがったのかもしれません。
やり切れない思いにもなりました。
しかし、私も家族内で経験があるので分かる感じもします。
それにしても、まったく不可解な小説です。
グレーゴルの視点で書かれていると思っていたら、死後も書かれていたので違っていました。
解説がいくつか付いていますが、何も答えは得られません。
第一次世界大戦前のチェコスロバキアでの時代背景、カフカと父との関係など、研究すれば理解が深まるかもしれません。
ただ、私にはこれ以上考えるのは不要だと思いました。
(2024.12.26)
※2024.12.8古本をネットオフに注文、12.13到着
新潮文庫の100冊 2024:6冊目
2024.12.17読書開始
2025.6.9ネットオフで売却
Posted by ブクログ
次々と浮かぶ当惑に対して、解決を求めながら読んではいけない作品。
なぜ毒虫になってしまったのか。家族の態度はなぜこんなにも冷酷になってしまったのか。作中の世界では、毒虫に変わることへの(驚きはあるが)不可解さは存在しないのか。カフカがこの作品で伝えたいことは何か。
読者を置いて淡々と展開する物語に、ついていくことができない反面、自分の中での整理がつく前に進んでしまう状況に、焦燥感と同時に臨場感のようなものを感じた。
タイトルの『変身』は、毒虫に変わってしまった主人公を示す。個人的には、稼ぎ手であった主人公に対しての恩を忘れたかのように、冷酷になってしまった家族のことを示しているようにも思えた。
主人公が受ける不条理さを感じながらも、キャラクター全員の心情に目を向けると、主人公以外にも降りかかった不条理に気がつくことができる。