あらすじ
華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!/掲出の書影は底本のものです
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
本を焼いて考えることを禁止して
刺激的な娯楽のみを与えることで
幸せを管理する
ただ国は戦争中で
国民はその事についてあまり考えることもなく
空から突然落とされた爆弾で死ぬ
現代とすごく重なってたくさん考えさせられた
ものを知らず
深く考えないことはほんとうに幸せなのか
配慮のいき過ぎで何も話せなくなってしまうことが本当に良いことなのか
前半と後半で炎の意味が奪うだけ、から与えることができる、になるのも印象的
モンターグは普通の人で
正しいことのためだったとしても
そりゃあ人なんか殺したくないよねってかわいそうだった
グレンジャーもフィーバーも言ってた
「正しい種類のあやまち」という言葉は
すごくぴったりで
ああするしかなかったからあやまちではあるけど同時に正しい行いでもあったよね
この後のモンターグ達の人生絶対大変すぎて辛いけど
箱庭で考えることを取り上げられて常に刺激に飢えていた生活よりはましなんだろうか
Posted by ブクログ
再読、2度目です。前回は宇野氏による旧訳の「早川SF全集13」を読みましたが、今回は伊藤氏による新訳版です。新訳の方が圧倒的に読みやすいと聞いていました。全体的にパキッとした気がします。なんせ前回はハヤカワSF全集とかいうぶっといのだったので…。
まず文章が綺麗。余計な説明0。それでいて頭にフッと画が浮かぶような人物描写。冒頭の「火を燃やすのは愉しかった。」は、旧版でも同じだったと思うんですが、圧倒的に美しい表現だと思います。人間の持つジレンマとか、楽なことに流される表現が上手なんです。2部でいきなりブチギレモンターグに変身するのは何度読んでも「もっと冷静じゃなかったかあんた」って思いますが、自我を獲得したいわゆるイヤイヤ期ってやつなんですかね。
第3章からの鮮やかな急展開、ベイティーは多分モンターグを薄気味悪く思っていたんだろうなと思う。にしても、頭に血が昇って(?ちょっと違うかも)火炎放射器で人を焼くという、この描写になんと心の惹かれること。しかしこれはベイティーの教え。「問題とは向き合うな、燃やしてしまえ」、本の本質に気付いても楽な方に流れてるんですよね。
情報の本質、本というものに気付いてからモンターグは独りよがりになっているような気がします。本を読まぬ人間をどこか見下している。自分もつい先刻までそうであったことを忘れて、逃亡後はそこも鳴りを顰めて、思慮深い所謂知識人のような人間性を獲得しているように見えます。これも本による知性の獲得というやつなんですかね?
水面下でいつの間にやら勃発した戦争、これは今回もよく分かりませんでした、完全に背景描写的なものの一種として見ていました…。次はそこに注目して読みます。
モンターグは、情報の本質、「本」という存在によって命を救われたんだと思います。
Posted by ブクログ
本を焚書する世界の話
主人公は昇火士だがだんだん本に惹かれ、所有してしまう、そして殺人を犯し、追われる。
思考する自由を手近な楽な娯楽で奪う。当事者もそれでいいとおもってる。そうでない人間はおかしいと。
現代に通ずるものがあるとおもって、読み慣れない文章ながら読み進められた。
こんな話1953年に書いていることが凄いとおもった。
Posted by ブクログ
華氏451度の世界では、不快な物を排除し続けた結果、情報は単純化し、人々は快楽をもたらす物にしか関心を示さなくなった。そして、人々はこの世界で起きていることに興味を示さなくなった。人々から好奇心が消えたのだ。その点においてクラリスという少女はこの世界において特異な存在であったと言える。人々から好奇心が失われた世界でクラリスは世界に対する疑問や関心を持ち続けたのだ。クラリスはこの小説における好奇心の象徴であると言える。そしてモンターグはクラリスと関わるうちに、クラリスの持つ好奇心に惹かれていった。真実を知りたいという好奇心がモンターグの心を動かす原動力となったのだ。
そして私も読み進めるうちにクラリスの好奇心に惹かれていった。暫く忘れていた好奇心に火をつけてくれたのだ。この本を読み進めるとどの様な事が書いてあるのだろう、他の本にはどの様な事が書かれているのだろうと。長年忘れていた本への好奇心をクラリスは蘇らせてくれたのである。久々に手に取った本がこの「華氏451度」で良かったと心から思う。
焚書の広まったディストピア
米国のSF巨匠レイ・ブラッドベリ氏の作品。
本が禁制品となり、本を焼く職業である"昇火士"のモンターグが主人公。
本を焼く立場である彼だが、とある少女クラリスの出会いからモンターグに心境の変化が生まれる。
単純な情報統制としての焚書だけでなく、人に処理できない量の情報の氾濫など、
現代にも通じるテーマも含まれたディストピア物の傑作の一つ。
Posted by ブクログ
本の所有を禁止された世界で、本を燃やす昇火士であるモンターグは、本と共に燃える家に残った老女を見て、本に興味を持ちだす。
社会派SFの傑作。1953年に作られた本だが、現代に片鱗が見えつつあるディストピアを怖いほどに言い当てている。冒頭に登場してすぐに消えてしまったクラリスという少女。この少女がモンターグに投げかける言葉がものすごく大きな意味を持っている。
「昔はファイアマンは火を消す仕事だったんだよ」
「叔父がハイウェイをゆっくり走ったら留置された」
「あなた幸福?」
この世界では、テレビは人々が見たくないものを映さないつるんとしたもの(毛穴がない)になっていて、一方的にテレビから話しかけられるだけのものになっている。これによって、人々は自分で考えたり、昔のことを調べたりといったことをしなくなってしまっている。現代でも、メディアは表現規制が進み、人々はテレビ、動画、ラジオを聴き続ける。まるで未来のディストピアを予見しているような世界。
またこの世界では、過去の消防士のことが一般に知られていなさそうだ。おそらく不要な歴史は忘れ去られているが、それが愚かなことであることが不死鳥を例にして述べられている。人類の歴史は繰り返している。もし歴史を知っていればこの不毛なサイクルから抜け出すことができるのに。
最後には戦争に気付かずにテレビを見続けて、爆弾に呑まれる人々と、人類を再スタートさせようとするモンターグたちという構図で終わる。この本を読んで感じたことを胸に今後生きていく読者たちを表しているようだった。
Posted by ブクログ
本が違法となり見つかり次第焚書にされてしまう世界を舞台に、本を燃やす「昇火士」を主人公にした世界。てっきり活字賛美的な話かと思っていたが、そうではない。別に本ではなくて良いのだ。
世界に触れること、そしてそれを人が覚えていたりいなかったりして、それで救えるものがあれば良いじゃないというセンスオブワンダー的なモチベーションを感じた。
文章も詩人のようで極めて感覚的だった。火炎放射器から火を浴びせられる時、当人にはその火は花にも似て見える。
最終章から花がひらくように、色、におい、感触が満ち満ちていた。
Posted by ブクログ
文体がかなり難解だったけど、どの時代にも通じる普遍的なことが書かれていて読み応えがあった。この小説からは、人は進歩の代償に怠惰の習性を獲得していくことを知れた。何も考えないこと、何かを考えること、正反対に思えるそれぞれの過程は、どちらも確かに幸福に近づくための行為であるはず。社会や時代の流れには逆らえないが、選択をすることはできる。モンターグもその1人であったのだと思った。
Posted by ブクログ
何かしっかりしたSF小説を読もうと思い、本書を手に取りました。随所に出てくる巻貝なるイヤホンやTVがけたたましく放送されているラウンジには現代的な描写として受け取れました。スマホ、AI、がある今のテクノロジーの発展からは少しズレますが、焚書せずとも本に興味がなくなる大衆とは正に今現在の情勢かもしれません。
1950年代当時でも未来には戦争はあるということで爆撃機のシーンもあります。本質的に人間は変われないのか、本があれば不死鳥の如く薪を積み上げ火を放ちその中に飛び込むことはなくなるのか、そんな時がいつかくるのか、そんなことを考えさせられます。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
本を法律で禁止された世界。本を燃やす〈昇火士〉のモンターグはある日の仕事終わりにクラリスという少女に出会い、世界のおかしさに気づいていく。
【感想】
冒頭はノリノリで本を燃やしていたモンターグだけど本当はそうじゃなかったんだよね。だから自宅の空調機のグリルに本を隠し持っていたし、後々モンターグの助けとなる老人、フェーバー教授と出会っていたけど報告してなかった。
読んでてハラハラした。モンターグに変わるきっかけを与えたクラリスとのバディで何か始まるかと思いきや、ある日車に轢かれて死んだと妻のミルドレッドからあっさり言われて終わりだし、フェーバー教授と再会して今度こそこのバディでなんとかし始めるかと思いきや色々とモンターグが耐えきれなくて(妻のミルドレッド含め皆が刺激的な娯楽に麻痺して考えることをやめてるのでモンターグがウワーッてなる気持ちはわかる)仕舞いに自宅は燃やされ、〈昇火士〉のベイティー隊長を殺して逃げ回る羽目に。これどう着地するんだ…と思ってたら、都市部でおたずね者となり渡り鳥労働者として漂泊するフェーバー教授の仲間にモンターグが合流したところで話は終わってしまう。
でも現実だって世の中を変えようとしたってすぐには変えられないし、最後、モンターグたちは川を上流に向かって歩き始めるんだけど、これが世界が葬り尽くそうとした〈本〉、先人が蓄積してきた知と記憶を辿り始めたことのメタファーだとしたら。フェーバー教授の仲間の台詞的にも希望をもたせる終わり方のような気がする。
以下、フェーバー教授の仲間の台詞
↓
「昔、キリストより前の時代だが、不死鳥という愚かな鳥がいた。(…)その鳥は、自分を焼くたびに灰のなかから飛びだしてくる。まったくおなじ姿で、ふたたび生まれてくるんだ。われわれも似たようなもので、おなじことを何度も何度もくりかえしているが、われわれにはひとつ、不死鳥が持ちえなかった美点がある。われわれは、自分がいまどんな愚行を演じたか知っているという点だ。われわれは過去一千年のあいだにどんな愚行を重ねてきたか知っているのだから、それをつねに心に留めておけば、いつかは火葬用の積み薪をつくって、そのなかに飛びこむなどという行為を止めることができるはずだ。(…)」
今こうしている間にも戦争や虐殺が世界各地で起きている。ミルドレッドらのように娯楽に目を眩ませ考えることを放棄してしまわぬようにしたい。