あらすじ
華氏451度──この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく……本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!/掲出の書影は底本のものです
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焚書の広まったディストピア
米国のSF巨匠レイ・ブラッドベリ氏の作品。
本が禁制品となり、本を焼く職業である"昇火士"のモンターグが主人公。
本を焼く立場である彼だが、とある少女クラリスの出会いからモンターグに心境の変化が生まれる。
単純な情報統制としての焚書だけでなく、人に処理できない量の情報の氾濫など、
現代にも通じるテーマも含まれたディストピア物の傑作の一つ。
Posted by ブクログ
「書物を燃やして、いろんな考えを制限する」という仕事に誇りを持っていた主人公の隣に引っ越してきた少女が、主人公の考えを変えさせていくというのが大まかな流れで、この少女の出現がこの小説のキーだと思っています。
消火士ではなく、昇火士という名前でちょっと笑っちゃいました。思いっきりのディストピアの世界観の中でのストーリーで面白く読ませていただきました。1953年にこの小説が発表されて70年以上経ちますけど、昔からよくこういう考えを思いつくよなってつくづく感じます。
Posted by ブクログ
今から70年ほど前に書かれた未来の形なので、レトロな未来感はあるけど、それはおいといて面白い。中盤まではファイヤマンとしての生活、社会構造や価値観の掘り下げなので、現代の物語構成に慣れてる人からするとテンポが遅すぎるし、序盤に出てきた少女の後半の影響を期待してしまうかも、そして後半に出てきた老人達や本の記録についてのところは、斬新だし面白いけど、その設定も説明的で少々活かしきれてない気もする(あの結末としては重要ではある)。エンタメ性は低く全体的には退屈なのだけど、そんなこと別にいいや。というくらい哲学、思想、設定がとても面白い。あと、好き期待は分かれるあろうけど地の文の力は圧倒的にすごい。本が読める社会で良かったなぁと思う。
Posted by ブクログ
今年の夏は、なぜかSFを読んでみたい!と思い立ち。
今まで海外文学はほとんど読んだことがなく、
さらにSFというジャンルを受け入れられるのか、
不安はありましたが、
逆に訳わからないものを欲してる!となり。
YouTubeでSF作品を中心に読んでる方が紹介していた一冊です。
面白かったです!
海外のYouTubeチャンネルで概要を見ましたが、
それでも私は楽しめました。
本を持つ、本を読むことが禁じられた世界。
人々はテレビかラジオを聞き、
娯楽を与えられ続け、考えることを放棄している。
そんな世界で主人公のモンターグは昇火士として、
家屋と本を丸ごと焼き払う仕事をしている。
妻のミルドレッドとのやり取りは徒労と侘しさを感じるし、クラリスとのやり取りはもう少し深掘りして欲しかったです(一瞬すぎて)
悩み思考することで、
自分自身を取り戻していく。
そこには大きな犠牲もあって。
最初は全く理解できなかったらどうしようかと思いましたが、全然大丈夫でした!
これが1953年の作品だなんて驚きです。
Posted by ブクログ
本が見つかると燃やされるディストピアの話
巻貝ってワイヤレスイヤホンのこと…
リビングの家族たちって4面ではないにしてもプロジェクターのこと?
なんだか現実と似通ってきていて怖くなった。
P91 ベイティーがしゃべりまくっているところをもう一度読み直したい。
ダイジェストとかショート動画とか面白くてつい見てしまうけど、確かに深く考えないから記憶に残らない。
好きな本が映画化されても気に入らないのは個人的に大事だと思うところが省略されてしまうからかもしれない。
こんな講義をされて昇火士に疑問を抱いている人が納得できるだろうか。全く逆でベイティはモンターグを煽っているように感じた。ベイティこそがそういうことを抱えている人だったのではないか。だから最終的に死にたがっているとモンターグも、感じたのかもしれない。隊長までなったらどうにもならない葛藤とかあったのかもしれないし。そもそもこの人が身近で一番本を読んでそうな人物だった。
P142 フェーバーが必要なものの話をしているところも。
情報の本質、消化時間、行動の正当な理由。
Posted by ブクログ
初めは描写が独特すぎてついていけてなかったがどんどん読みやすくなっていった
たった1週間で人生が180°c変わってしまう話なので、その最中はスピード感があって続きが気になった。
クラリスは私と似ていると思った。しかしミリーの方も 私に似ていると思った。私は両方持っている現代人です笑
同じ30歳ということもあって主人公の雰囲気が私たちの世代と似てました。
現代人の私が見たら大して違和感はないが1950年代の人が当時読んでいたらもっと SF 小説 だったのだろう。最後は原爆が落とされたのかな?そこは1950年代の人ならでは なのかなと思った。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
本を法律で禁止された世界。本を燃やす〈昇火士〉のモンターグはある日の仕事終わりにクラリスという少女に出会い、世界のおかしさに気づいていく。
【感想】
冒頭はノリノリで本を燃やしていたモンターグだけど本当はそうじゃなかったんだよね。だから自宅の空調機のグリルに本を隠し持っていたし、後々モンターグの助けとなる老人、フェーバー教授と出会っていたけど報告してなかった。
しかしハラハラしたな〜〜モンターグに変わるきっかけを与えたクラリスとのバディで何か始まるかと思いきや、ある日車に轢かれて死んだと妻のミルドレッドからあっさり言われて終わりだし、フェーバー教授と再会して今度こそこのバディでなんとかし始めるかと思いきや色々とモンターグが耐えきれなくて(妻のミルドレッド含め皆が刺激的な娯楽に麻痺して考えることをやめてるのでモンターグがウワーッてなる気持ちはわかる)仕舞いに自宅は燃やされ、〈昇火士〉のベイティー隊長を殺して逃げ回る羽目に。これどう着地するんだ…と思ってたら、都市部でおたずね者となり渡り鳥労働者として漂泊するフェーバー教授の仲間にモンターグが合流したところで話は終わってしまう。
でも現実だって世の中を変えようとしたってすぐには変えられないし、最後、モンターグたちは川を上流に向かって歩き始めるんだけど、これが世界が葬り尽くそうとした〈本〉、先人が蓄積してきた知と記憶を辿り始めたことを示しているとしたら。フェーバー教授の仲間の台詞的にも希望をもたせる終わり方のような気がする。
以下、フェーバー教授の仲間の台詞
↓
「昔、キリストより前の時代だが、不死鳥という愚かな鳥がいた。(…)その鳥は、自分を焼くたびに灰のなかから飛びだしてくる。まったくおなじ姿で、ふたたび生まれてくるんだ。われわれも似たようなもので、おなじことを何度も何度もくりかえしているが、われわれにはひとつ、不死鳥が持ちえなかった美点がある。われわれは、自分がいまどんな愚行を演じたか知っているという点だ。われわれは過去一千年のあいだにどんな愚行を重ねてきたか知っているのだから、それをつねに心に留めておけば、いつかは火葬用の積み薪をつくって、そのなかに飛びこむなどという行為を止めることができるはずだ。(…)」
今こうしている間にも戦争や虐殺が世界各地で起きている。ミルドレッドらのように娯楽に目を眩ませ考えることを放棄してしまわぬようにしたい。