あらすじ
霊能者の祖母が遺した予言通りに、インドから来た青年「ハチ」と巡り会った私は、彼の「最後の恋人」になった……。運命に導かれて出会い、別れの予感のなかで過ごす二人だけの時間――約束された至高の恋。求め合う魂の邂逅を描く奇跡の物語。[写真・若木信吾]
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「好きな小説は?」と聞かれたら真っ先に思い浮かぶのが、この本。初めて読んだのは10年以上も前なのに、何度読み返しても引き込まれてしまいます。
高校生のマオと、やがて遠い地へ旅立ってしまうハチ。おばあちゃんの予言通り、やっと出会えたのに、別れの日は刻々と近づいて…お互いを好きなまま、もう一生会えなくなってしまう二人。あまりに辛すぎる展開ですが、最後の日まで恋人としっかり向き合い、全身で別れを受け止める主人公の姿はとても美しく、鮮烈な印象を残します。
恋愛中の人には、愛する人が側にいる幸せを。失恋した人には前を向いて歩く勇気を与えてくれる、そんな力強い小説です。
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Posted by ブクログ
忘れられないエッセンスを閉じ込めたようなお話でした。
「孤児みたいになって。なにがあったのかと思わせる育ち方」をしているように見えるマオと、育った土地インドに一年後帰る、自分を知って生きているハチとの生活はどれも『この一瞬を生涯忘れませんように』と願いたくなるほど澄んで見えました。
些細なことの全てに対してもう2度とこんなことはないと自覚してしまうことが、人生の絶頂と感じる最中にはあると思います。そんな満ち足りていくらでも自分が明るい方へ伸びていけそうな時間をマオは「こんな時間が少しずつ増えていって、私はハチを忘れないが、忘れるだろう。悲しいが、すばらしいことだ。そう思う。」としています。私はまだそんな風に美しかった時間を解放することが出来ませんが、いつか運命を悟ったり身を委ねきれるように生きられる日がくればいいなと思いました。
この本はひらけば何度でも幸せな生活とすてきな未来を思い出させてくれると思います。
Posted by ブクログ
「本当に気の入った人と人同士はいつもこんなふうに追いかけっこをしている。タイミングは永遠に合わない。
そのほうがいい。二人で泣いて何になる。」
スピリチュアル要素が多くて、頁数の割になかなか読むのに時間がかかったけど、日本の自然、インドの自然、街、ビルや人の色彩が鮮やかに浮かんでくる素敵な文章だった。
お母さんと、祖母の遺骨と一緒に定食を食べて2人で泣くシーン、そして最後の小さな家族会議がなんとも言えない辛さと空虚さで泣きたくなった。
夜遅くのミスドであったハチと、一生分かり合えないと思って、それでも一緒に家から逃げたお母さんと、でもやっぱりもう一緒に暮らすことは、生涯ない二人とマオちゃんの別れ。