あらすじ
かつて初恋の少年に送った手紙の一節が、ハワイアンの調べに乗って耳に届いた。「ひとの人生を縫い上げる」キルト作家となった私は、その歌い手とともに、空と海と大地が接するハワイ島最南端の地〈サウスポイント〉を訪ねるが……。世界の果ての、奇跡の恋――楽園の島を舞台に、満ち溢れる生命の輝きと、男と女そして家族の絆を描く。デビュー20周年を飾る感動の長篇。[写真・潮 千穂]
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Posted by ブクログ
ハワイ島もう一度訪れたい。
ばななさんの小説はわたしを癒す。
今回も心が静かに着地していく。
でも、
まだ、足りない、もっと読んでいたい。
p231
でも今は古くから見ていた夢の中でまどろんでいよう、そう思った。やがてその夢の力が私を支える日がくるだろう。そんなふうにこの島は、あの世とこの世がとても美しい結び目でつながっている不思議な場所なのだから。
私はあの日、サウスポイントではっきりとそれを見た。
p229
大丈夫、大人がふたりでいるだけなんだから。これから起こることは、全部自分のせいなんだから。もはや親のつごうではないんだから。
こんな、やわらかくも強い言葉が紡ぎ出される物語が私は好き。
たおやかさ。
退廃的な、うら寂しさを感じたヒロのまち。
日が傾いてて、日陰になった野っぱら公園にも人は少なかった。田舎の貧しさみたいなものもあったな。一度だけ行ったことがある。
ここは、その時の私には、必要ではない場所だった。
今の私が訪れたら
どんなふうに感じるのだろう。
もう、海外はいいや、って思っていたけど
ハワイに確かめに行きたいな。
Posted by ブクログ
ハワイ、人の死、神々しい場所と時間。
私の思うばななさんエッセンスがたくさんのお話で、
あぁーこれこれ、という感じでゆっくり浸れました。
で、
あとがきに「ハチ公の最後の恋人の後日談で、まぼろしハワイと対になる作品」と書かれていて
あーそれだ!そうだった!!と自分の中の既視感に答えをもらえました。(両方とも既読)
ハチ公の最後の恋人は読んでから時間がたちすぎているので、これを受けてまた読み返したいです。
Posted by ブクログ
珠彦くんとテトラの関係、珠彦くんのお母さんであるマオさんの強さに、とても癒されました。ばななさんの作中に出てくる人々の価値観って奇抜だけどあたたかくて好き。
”じっくりとあきらめていくのは、たまになにもかもが昔に戻ったような、これからなにもかも良くなっていくと錯覚させるような希望の瞬間があるぶん、急にあきらめることの何倍も悲しいということを私は知った。”
Posted by ブクログ
あらすじだけ読んだら何てことないんだよね~。小学生のころの初恋の相手に大きくなって再会したというはなし。
だけど、よしもとばななの文章はどうしてこんなに心に染み渡るんだろう。
平易で、優しい言葉で紡がれる、まさに紡ぐという言葉がピッタリの文章が、いつどんな気持ちで読んでも、その時の自分にちょうどいいかたちで寄り添ってくれる。
何か所かで涙し、何度も立ち止まり言葉を反芻しました。
やっぱり、ばななさん好きだわ~。
この作品全体に流れるウクレレの響き、ハワイの光と風に癒されました←聴いたことも行ったこともないけど。
ウクレレ弾いてみたくなったけど、ハワイの自然と溶け合う音と書かれていたから、日本で弾いてもダメダナ・・・
Posted by ブクログ
吉本ばななは、人間の細かい心情だけでなく、自然の繊細な美しさを描くのにも非常に長けていると実感した作品。まだ訪れたことのないハワイに行きたくて仕方なくなった。
現実はそんなうまくいかないよ、と突っ込みたくなるぐらいファンタジーな物語であるが、距離は遠く隔たっていて連絡もしていなくても、強い「念」には人と人をつなぐエネルギーがあるというくだりには、若干の勇気をもらった。
また、同じ状況であっても、不安を感じるテトラと、愛をまっすぐ信じる珠彦、という対比も、愛のよろこびと不安に対する男女の捉え方の違いを表している。
繰り返しになるが、確かに夢物語ではある。だが、いずれ思いを馳せる人と行きたい場所が増えたという意味で、未来に一抹の光をあたえてくれる作品だった。