【感想・ネタバレ】静かなる革命へのブループリント この国の未来をつくる7つの対話のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

編著者の宇野氏は、1978年生まれの評論家。『PLANETS』という
批評誌の編集長でもあるそうです。本書は、その30代後半の若い批
評家による対談集で、対談相手として選ばれたのは、「それぞれの
ジャンルで具体的な手触りをもった、〈今、ここ〉から未来に確実
につながる、進行中の『静かな革命』の存在」を確信させる面々。

具体的には、デザイナー/ツナグデザイン代表・根津孝太(1969年
生)、クラウドワークス社長・吉田浩一郎(1974年生)、社会起業
家/フローレンス代表・駒崎弘樹(1979年生)、建築学者・門脇耕
三(1977年生)、デジタルクリエイター/チームラボ代表・猪子寿
之(1977年生)、楽天執行役員・尾原和啓(1970年生)、メディア
アーティスト・落合陽一(1987年生)、の7人です。

対談のテーマは、「産業とデザイン」「これからの働き方」「政治
と社会運動」「建築と都市開発」「アートとサブカルチャー」「IT
ビジネス」「メディアとテクノロジー」と多岐にわたっていますが、
どれも、〈来たるべき社会〉を構想しようという、強いモチベーシ
ョンに貫かれているがために、非常に刺激的な内容となっています。

最も刺激的だったのが、トリを務めた落合陽一氏。まだ27歳の大学
院生ですが、この人は凄い。ぶっ飛んでいます。テクノロジーの力
で、本気で魔法を起こそうとしている人です。彼の言う魔法とは、
モノ自体を変えるのでも、自分自身を変えるのでもなく、モノの出
す信号を書き換えることによって、モノと自分との関係を変えるテ
クノロジーの使い方のこと。彼のやろうとしていることが実現すれ
ば、人間の認識は確実に進化します。その時の人類は、まさに〈ニ
ュータイプ〉となるのでしょう。こういうテクノロジーの使い方が
あったのか!とびっくりすると同時に、その方向性に、凄く可能性
を感じさせられます。

そういうぶっ飛び感・未来感はないですが、これからのビジネスの
ヒントに満ちているのが、クラウドワークス・吉田氏と楽天・尾原
氏との対話でした。どちらも40代ですが、やはり40代になると、現
実と夢との折り合いがついてくるのでしょうね。ああ、確かにこれ
からこうなっていかないといけないよなあ、とか、こういうところ
にビジネスチャンスがあるんだよなあ、ということを冷静に考えさ
せられます。こういう世代の違いを感じることができるのも、本書
の面白さでした。

これからの社会を考える上でヒントの詰まった一冊です。次の時代
はこういう若者達が作っていくんだろうな、ということを予感させ
る一冊でもあります。キラキラした若者達に追いていかれないため
にも、是非、読んでみて下さい。

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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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「ソニーらしさ」なんて考える必要はないんですよ。それと同じで、
「日本人らしさ」を考える必要もない。この日本の風土で育ってき
た人が一生懸命やれば、それが「日本らしさ」になるんです。日本
らしくあるためにはどうすべきかなんて考えるのは、時間の無駄で
すよ。今、精いっぱいやれることをやれば、それが今の日本らしさ
なんだと僕は思う(根津孝太・カーデザイナー)

動機が怒りから楽しみに変わったことで、自分のなかでも変化があ
ったんです。怒りが動機だったときは、いろいろな人を巻き込むの
に失敗した。怒っている人には誰も近づきたがらないからね。特に、
怒る対象だった行政などは、うまく巻き込むことができなかった。
でも、楽しいと思うようになってからは、巻き込める人が多くなっ
た(駒崎弘樹・社会起業家)

アートによって「カッコいい」という概念をバージョンアップさせ
ることがレバレッジとなって、ゆくゆくは社会全体の価値観が変わ
っていくことになる。もちろん、社会を変えるのはアートだけでは
なくて、思想を使う人もいれば、政治を使う人もいる。僕の場合は
アートを通して「カッコいい」の概念を変えることで、人々がなん
となく直感的に新しい社会の価値観に向かう、みたいな役回りなの
かなと思っているんだよね(猪子寿之・デジタルクリエイター)

やせ細ってしまった中間のコミュニティを、今までとは別のかたち
で太らせるしかない。メディアの肥大に対抗できるのは別のメディ
アではなく、コミュニティなんです。だからインターネットの双方
向性を活かして、趣味やライフスタイルのような共通性にもとづい
たテーマコミュニティをたくさんつくっていくべきなんです(宇野
常寛・評論家)

生活サービスの民主化ってものすごくいいテーマだなあ(…)。
これまでは国や地方が提供していた生活インフラを、それぞれのテ
ーマコミュニティで提供できるということになれば、人々が集まる
理由になってくると思う(尾原和啓・楽天執行役員)

ぼくたちは「ここではないどこか」を仮構する技術=虚構ではなく、
「いま、ここ」を書き換える技術=虚構を求めるようになった。こ
れは実はすごく大きな問題で、僕らより上の世代はどうしても昔の
革命思想に向かうか、脳に電極を挿す自己変革に向かってしまうん
だよ。革命で現実を変えるか、ドラッグや電極で自分を変えるかの
2択になってしまう。しかし今起こっているのは、人間と現実との
関係を変えるテクノロジーの発達なわけだ。これは言い換えれば革
命とは異なる新しい方法での現実の変革方法が生まれたことを意味
するのだけど、20世紀的、映画的、仮想現実的な虚構感の持ち主
には、自分と現実との関係をテクノロジーによって書き換えていく
ことが社会の変革につながるというイメージをどうしても持てない
みたいなんだよね。まだ表面化していないけれど、実はこれは大き
な思想的対立になっていくと思う。
(…)
自分が他ではないこの場所にいることを大切にしたいんです。物理
存在としての人間に立ち戻る、という感じです。(…)
僕としては、「今、ここにいる」こと??「一人で、もしくは誰かと
ここにいること」の価値に立ち戻りたい。
(落合陽一・メディアアーティスト)


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●[2]編集後記

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秋分の日の23日、仕事で東京に行った妻の代わりに、風邪で体調を
崩していた娘の子守りをしていたのですが、様子がどうもおかしい。
ぐったりして、ヒューヒューと苦しそうに息をしています。これは
ヤバいなと思って、救急病院に連れていったら、そのまま入院にな
ってしまいました。どうやら喘息から来る気管支炎のようです。

喘息って言葉、なんかショックですよね。食べ物も気を使ってるし、
東京よりはずっと空気の綺麗なところに住んでいるし、それでも喘
息になってしまうというのは、何故なんだろうなあと思います。ま、
未熟児で生まれたため、もともと呼吸器系は強くはないのですが。

というわけで、今週は娘優先シフトです。面会が9時までなので、
できるだけ娘といられるよう、早い時間にあがり、病院直行です。

久しぶりの病棟、しかも小児病棟に来てみると、ほんと、色々な人
がそれぞれの苦労を抱えて生きているんだよなあと思い知らされま
す。健康な時には見えない世界が、病棟の中にはあります。そうい
う世界を知るためにも、たまにこうやって病院で過ごすのは、決し
て悪いことではないと思います。

一方で、病院って、ほんと病人をつくるところだなあとも思うので
す。薬漬け、チューブ漬けで、柵のついたベッドに閉じ込めて。安
静が一番なのはわかるけれど、これじゃあ生命力が低下していくだ
けじゃないか、と現代医療のあり方に対する疑問もわいてきます。

とまあ、病院にいると、色々なことを考えさせられ、気付かされる
のですが、ここのところ、休日以外、なかなか娘と話す時間もなか
ったので、娘とゆっくり過ごす良い機会になっているのも事実。色
々立て込んでいる時期ですが、実り多い入院時間となるよう、娘に
尽くそうと思います。

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2014年10月05日

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