【感想・ネタバレ】猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷のレビュー

あらすじ

ある日、若き研究者・和野和弥が帰宅すると、妻が猫になっていた。じつは和弥は、古き時代から続く蘆野原(あしのはら)一族の長(おさ)筋の生まれで、人に災厄をもたらすモノを、祓うことが出来る力を持つ。しかし一族の出でない妻が、なぜ猫などに? これは、何かが起きる前触れなのか? 同じ里の出で、事の見立てをする幼なじみの美津野泉水らとともに、和也は変わりゆく時代に起きるさまざまな禍(わざわい)に立ち向かっていく。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書のジャンルは「ファンタジー」よりも、漢字で「幻想小説」と書く方が合っている。そう感じる作品だった。
日常の中で、その一部のように怪異と対峙する。それをサラリと『事を為し』て、何事もなかったかのようにまた日常生活が続いていく。そういった形の一話完結の物語が緩やかに続いていく。

読み始めは、妻に突然家を出て行かれて頭がおかしくなった男の話なのかと思ったが、少し読んでいくと、妻が猫になる事もそれほどおかしいわけではなさそうな雰囲気だとわかった。

怪異と共に過ごす日常のなかで、『郷』のことや『長』のことが少しずつ明らかになっていき、本書の世界観にどっぷりと浸かっていくのだが、
世界観については明瞭な説明はなく、登場人物たちの会話の中から少しずつ染み込んでくるようになっていて、妻の優美子が蘆野原のしきたりをゆっくりと感じ取っていくように読者にも馴染んでいく。

本書の特徴として感じたのが、著者の日本語に対する優れた感性やうまさだった。
物語の穏やかで優しい時間とマッチした言葉選びや文字運びは心地よく、柔らかい文章ながら冗長すぎず、登場人物達のやりとりは短くハキハキとしていてメリハリもあり、どれも気持ちの良いものだった。
また、各話の『事を為す』ときの呪(?)が、実に見事に韻を踏んでいて、言葉のリズムも良くて素晴らしい。アクションで怪異を祓う勇ましさとはまた違った絵になるシーンであった。
各話のタイトルも字面と読みでの言葉遊びがあり面白かった。目次や冒頭にはルビが振っていないので、物語を読んでいくうちにタネ明かしがあり、「なるほどそう読むか」という楽しさもあった。


派手なアクションのない、全体的におっとりとした雰囲気の物語ながら、ところどころで意表を突く(ただゆるやかに流れていくわけではない)仕掛けがあり、飽きさせない作りとなっている。

この意表を突く、予想を裏切るという点について、
タイトルに真っ先に出てくる『猫』に関しては本物の猫のように、捕まえたと思ったらニュルリと腕から抜け出ていくような、捉えどころのないトリッキーな動きをしていると思った。

読み始める前はタイトルから「ペットの猫と妻との生活を描いたお話か?(:猫が主で人間が従か?)」と思って読み出した。そう思っていたので、前述のように、猫を妻と認識する最初のページでさっそく面食らうことになった。
本書の”ノリ”が分からない序盤は「終盤まで、あるいは最後まで妻が猫のままではないか」と覚悟して読み読み進めたのだが、案外早い時期に人間に戻り、その後はコロコロと姿が入れ替わる。「妻が人間に戻ることはあるだろう」と思っていたが、猫と妻を行ったり来たりするのは予想外で、この描写を見てタイトルの意味は「猫だったり、妻だったりする者と暮らす(:猫と妻は背反の関係)なのだ」と思った。
ところが、中盤では唐突に『猫』がもう一匹増える。「猫になった妻の助けを借りながら事を為していく物語だろう」と目星を付けて読んでいたので、『肆』の冒頭で猫が2匹並んでいたのには驚いた。ここでタイトルについても、「猫および妻と暮らす(:猫と妻は並立)の意だったのか」と思い直す。
この子猫(:多美)は、子の望みが薄い主人公夫婦の養子のような扱いで物語が進み、「”猫”であり、長の薫陶を受けたこの子が(物語の後の世界で)蘆野原の長になるのだろうか」と思っていたのだが、最終盤に実子が誕生していることが発覚する。「『猫』になる妻との子供・・、この子も猫になるのか?」と疑ったが、そのような素振りもなく収まり、読み始める前から読み終わりまで『猫』にもてあそばれることとなった。

この『猫』(= 妻の優美子や多美)については、主人公のことがどんどん明らかになっていくのとは対照的に、その素性が全く明らかにならない。そういう意味でもつかみ所のなさというかミステリアスで先が読めない存在であった。


また、物語の最終盤はそれまでの成り行きとは違う、大きくうねるような展開が待っている。
郷を閉じるところで物語が終わると予想していたので、『柒』の冒頭で『祝清』ののちに郷を閉じてから3年が経っていたのは意外だった。
この章では作中はじめて主人公と泉水だけで猫の姿がない。読みながら主人公と同じ寂しい気持ちになる。意表を突かれたのとは別の気分だが、この物語には『猫』の存在が大きいのだなと感じた。それだけに『郷明』の終盤に姿を現した時には嬉しい気持ちになった。

「主人公の和弥が長としての修行を再開しながら郷で暮らしていくエピローグか」とページを開いてみればビックリ、最終節の『偲郷』では郷が再び閉じられたままの世界になっている。彼らの世界が、コチラの現実に繋がるような、不思議な余韻を残しながらのエピローグだった。

残りのページ数が少なくなると、終わるのが惜しいと思うようになっていた。
この世界の続きを読みたいが、後を引く余韻を残してキレイに終わるのが素敵だとも思う。


・・と思っていたのだが、本作の続編『猫ヲ捜ス夢 蘆野原偲郷』が出版されているのを知った。これはうれしい誤算で、早速読みたい本のリストに加えることにした。

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2026年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんかよくわからないけれど、好き。
本当にその一言に尽きる。

好きな理由がわからないんじゃなくて、
話の設定も、裏側も、何者なのかも、全てがわからない。
兎に角謎ばかりなのに、
主人公が猫になった妻をあっさりと受け入れたのと同じくらい、
淡々とした調子でわからないまま話が進んでいくのを
受け止めてました(笑)
多分、主人公の無頓着さ(いい意味で)やそこに起因する描写の数々が
そうさせてるんだろうな……

とても好きなんだけど、
やっぱり作者の思い描く世界観をもっと知りたかったな
っていう矛盾した思いから、☆は4つ。

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2018年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

あれ?梨木さん?と思ってしまった作風。
なるほど、小路さんもこんなん書きはるんやねぇ。好きな雰囲気の作品だけど、最初数ページは予想と違ったので違和感あったかなぁ。すぐに馴染んだけど。

こういう本を読むと、山登りに行った時に出会う廃村なんかが凄く気になるようになる。その土地土地の道祖神や氏神様や道々にたたずむお地蔵さんや祠が気になりだす。

そして日本ってやっぱり多神教がしっくりくる国なんだなぁと思う。

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2014年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

バンドワゴンや花咲シリーズと違っての異次元もの。日本の民俗学的世界を淡々と描く。猫に変身もそのまま請けいる。淡々という感じである。「猫ヲ探ス夢」が続編というか次の世代のはなしとなる。

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2021年09月05日

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