あらすじ
グータラな読書家“バーナード嬢”と、その友人たちが図書室で過ごすブンガクな日々――。『山月記』『かいけつゾロリ』『名探偵コナン』『カフカ短篇集』『ゲド戦記』『かもめのジョナサン』……、古今東西あらゆる本への愛と“読書家あるある”に満ちた“名著礼賛ギャグ”、驚嘆の第6巻!
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誰しも一度くらいは経験があるのではないでしょうか…やたら難しい本や、古典文学を読んで(あるいは読んだフリをして)ドヤったことが…。
そんな読書好き&読書嫌いにオススメの漫画がこちら。
主人公は、本を読むのはめんどくさい!が、なんとしても読書家ぶりたい女子高生・さわ子。
うんちくだけは一人前のさわ子に、遠藤(本好き)や、スミカ(遠藤を好きな図書委員)、しおり(コアなSFファン)がツッコミまくる!という、読書ギャグ漫画…なのですが、さわ子が口にする残念なセリフが、意外に真理をついているんです。
豊富な読書あるあるネタに加えて、4人の友情が深まっていく様子も見どころ。本だけが友達だったしおりが、読書を通じてさわ子と仲良くなっていくさまは胸がじーんとします。
作者がSF好きらしく、SFネタが多いのも◎。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
10周年を迎えた読書あるある漫画「バーナード嬢曰く。」。
刊行そのものは6巻とスローペースだが、その内容は相変わらず濃厚であり、読書(家)あるあるは読み手を飽きさせない。
個別に見ていっても、この巻は実に濃厚だ。
例えば88冊目では、実は名探偵の方のコナンが好きだという長谷川さんが、思わずグッと(オタクムーブを)抑える様が描かれている。
そこでの説明は実にわかりやすい。わかりやす過ぎて刺さり過ぎる読者もきっと居るだろう。(例えば私などがそうである)
しかもその後描かれた「彼女が思い描くコナンファンの理想的な会話シナリオ」に見えるオタク度の高さは凄まじく、実に充実していた。
そりゃ町田&神林コンビも言葉に困るよ。(笑)
89冊目での長谷川&遠藤コンビの会話は、尊い。
そこには読書の美しさと、青春の美しさが共存するあまりに尊い物語があった。
この短い話の中で、どこまでも心打たれる一話だ。
こうしたエモは92冊目や93冊目、あるいは97冊目の町田&神林コンビの対話でも見られている。
特に97冊目「心を読まないで」の青春模様の描写は本当に素晴らしい。
8ページしかない一話の中で、後半の3ページを言葉少なに描く様には圧倒される。
また、未読読者に論破された愛読者が描かれた90冊目「フランケンシュタイン」や、続編を読みたくないとワガママを言い出す91冊目「悪童日記」など、読書家的なネタも豊富である。
中でも98冊目「山月記」は秀逸の極み。
若さゆえに傲慢に振る舞えと論を振る町田に対し、完璧に応えてみせた遠藤少年の山月記☆1.0レビューは本当に秀逸。
これこそ読書感想の正しいあり方だろう。明確な論理があっての星一つは、むしろ絶賛レビューと同質と言っていい。
99冊目「『かいけつゾロリ』と罪の記憶」が描く旧悪の痛みもエモい。
103冊目「続きがなかった話」は、どこか示唆深い話が繰り広げられた一方、そこから推し進める話がない感じなどは少し面白い。
本当に最初からずっと、身の詰まった内容しかないと感心させられる。
そして最後、104冊目「デス博士の島」。
この一話が最後に配置された構成は、あまりに美しすぎた。
引用された言葉があまりに(一部の)読書家にとって温言であり過ぎる上、神林に甘える町田の風情もまたエモの塊である。
読後感をまとめるにふさわしい、本当に美しい一話だった。
本当に驚かされるほど充実した一巻だった。
あるある系漫画は刊行を続けることでネタが尽きていく問題と無縁ではいられないが、この作品はスローペースの刊行ではあれど、ネタの質が安定して良好だ。
そして何より、彼ら四人の関係の充実がもたらす読後感は本当に快い。
彼らが話しているだけで楽しく、その上でネタまで上質なのだから、読者としてはたまらない。
文句なしに星五つ。可能であれば、星を9個くらい送りたい良巻だった。
あまりに素晴らしかったので、一部(山月記の部分とか)を未読の知人に見せたくらいである。素晴らしかった。