あらすじ
超大型SF映画《エンダーのゲーム》の原作短篇版など、全11篇を収録した傑作短篇集!キャラメルボックス代表・演出家 成井豊氏激賞!
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Posted by ブクログ
読んでて、エンタメってこういうものだったって思い出した。とくに「エンダーのゲーム(短編版)」。11才の少年が他の誰にも思いつかない戦術でめくるめく大活躍… って、そう、最近忘れてたけど、そういうのがエンタメだった。リアリティとかどうでもよくて、とにかく面白ければいいんだよ。
「ブルーな遺伝子を身につけて」は、正統派SFっぽい顛末に加えて、宇宙服らしき「モンキースーツ」の語感がツボ。猿のスーツなんて不格好なはずなのに、何故かスタイリッシュ。
「アグネスとヘクトルたちの物語」…ステンドグラスの絵の裏表をひっくり返して見ているような話。どっちも表だしどっちも裏。民族弾圧による死の運命から義両親に助けられた過去を持つアグネスは、同じような立場の人間を救おうとして、その結果数十億の人類を死に追いやってしまう。けれどもその一方で、異種生命のヘクトルたちを過去の自分と同じように死の運命から脱出させる。それが皮肉なのか正統な結果なのか、想像の余地を残す形で淡々と語られて面白い。あとは、原理のわからないものを使ってその結果、という内容は、原発なんかを利用してる現実に照らし合わせると笑えない。
「開放の時」、これが一番好きかも知れない。乱視の視界みたいに、いくつもの世界が重なって現れて、主人公は一番良い世界にあたった時に死ねるって話。奥さんは主人公の死によって子供が居る世界を獲得して、哀しみはするけどほっとする。主人公には救いはないんだけど、ちょっとした達成感とともに死んでいく。複雑な幸福感がある話。
「陶器のサラマンダー」も切なくて良い。「無伴奏ソナタ」は、そこまで。他の短編は面白かったけど上4つと比べるとオーソドックス。でも十分に面白かった。
全体を通して、死と生に敏感な作者なんだと感じる。意味のある生き方に強い関心があると言い換えてもいいかも。その上でしっかり読者を引き込む要素を備えてて、主張とかテーマとかに必要以上に傾倒しないのがかっこいい短編集だった。
Posted by ブクログ
SF短篇集。
SFといってイメージするのはスターウォーズのように超越したテクノロジーを使った戦闘などでしたが、この本の短編はいかにもSFな物語というよりは作者の人生観をSFというジャンルで表現しているような印象を受けました。
宇宙人やタイムマシンが当たり前に出てきますが、それらの登場人物や道具を使って人生の考え方や人の生き方を話に落としこんで、1つ1つの話が教訓や寓話のように生き方の指標を示すような物語になっていると感じました。
11の短編の中では、タイトルになっている無伴奏ソナタとアグネスとヘクトルの物語が気に入りました。人の幸せや向き不向きについて考えさせられる話が少し寂しげで綺麗な話だと思います。