あらすじ
右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジストに、目の前で育ての親を惨殺されたことで、彼の人生は一変する。月の乙女、闇の魔女、海の女魔道師、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。宿敵を滅ぼすべく、カリュドウは魔法ならざる魔法を操る〈夜の写本師〉としての修業をつむが……。日本ファンタジーの歴史を塗り替え、読書界にセンセーションを巻き起こした著者のデビュー作。
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Posted by ブクログ
カタカナ名の沢山出てくる作品は、老化しつつある頭にはなかなか難解で、ついつい後回しにしていた。
初めのうちは何度も登場人物一覧のページに戻ったけれど、それももどかしくなるほどにぐんぐん引き込まれ、ページから目が離せなくなった。
幾つもの非現実的な場面は、美しく恐ろしく真に迫り展開され、闇も光も目の中に満ちていくかのよう。
世界一強力な悪が、深い哀しみから芽吹いたとしても、赦したり放置したりするのではなく、千年の転生の中で背負ったさらに強い闇で根絶する容赦なさ。
正義だけで出来上がったヒーローではないのが、人物像に広大な奥行きを作っている。
こう列挙しても書き切れないな。
すぐにでも再読したい作品。
『オーリエラントの魔道師たち』を読んでて、イスルイールってどんな人だっけと思い、再読。
テイクオク、プアダンの呪法、それに指なしカッシまで出てきて、思わず声を上げそうになる。最初に読んだときには気にも止めてなかったことが、ちゃんと別の物語の中でも活きてて、それを踏まえて読むのも面白い。
Posted by ブクログ
魔術師アンジストに育ての親エイリャと村の幼馴染フィンを殺された主人公カリュドウが「夜の写本師」になり復讐を果たすファンタジー。
カリュドウが写本師になるまでの出会いと別れが辛かった。とりわけ魔術師として修行していたときの。結構インパクト強くて、人の闇、自分の闇との付き合い方。覚悟。
後半は「月の本」。千年もの因縁、3人の魔女の話は、ずっとクライマックスなので息を呑む展開。魔術師アンジストの若き日の話もあり、最終的に救済へ。カリュドウを見守っている魔導師ケルシュがいい。続き読みたい。
Posted by ブクログ
予想以上に壮大なファンタジーでした。読み終えた時には最近味わったことのない重厚な感じで心が一杯に。
物語の面白さだけなら星5つですが、少しわかりにくい描写が何箇所かあったので(カリュドウが闇に染まった時の見た目の変化とか)、星4つにしました。
魔道師に対抗するために、魔道師になるのではなく、魔法を操る「夜の写本師」となる、というのが面白い着想。綺麗な飾り文字で書かれた書物に魔法が宿っているという設定は魅力的です。
カリュドウは夜の写本師としてアンジストと戦ったけど、その後は魔道師になったようですね。
Posted by ブクログ
とても好きな世界観。
呪術や写本の道具も魅力的。
カリュドウが、最初から闇に染まっている、という設定もいい。
残念なのは、カリュドウの人となりがいまいち掴めなかったこと…フィンとの思い出がひとつくらい出てきてもいいのでは?とか、仲間が最後に、お前ひとりで背負うな!って協力するんだけど、いつのまにそんな関係築けてたの?とか。
終わり方はとてもよかった。
地の文がちょっと読みづらいと思ったけど、それについては解説で井辻さんが書いていた。
「ファンタジーにおいて、語り手が魔法のない世界に身を置いて語るのはNGである。語られている世界とひとつでなければならない。このテクスト自体が閉じた魔法書である。」というような内容で、そこまで考えられていたのかと納得。閉じた魔法書って、素敵だなあ。
Posted by ブクログ
魔術と魔術師と魔術書を巡るファンタジー。
「右手に月石。
左手に黒曜石。
口のなかに真珠。
カリュドウは三つの品をもって生まれてきた。」
淡々と綴られる文体ながら、魅力的な書き出しとそれに続く緻密な物語構成が心地良い。
ただ、登場人物の心情が変化する描写、また登場人物同士のいだき合う心情が変化する描写が、あっさりしすぎているように感じられる場面があったのは少し残念。