あらすじ
東勢大学文学部四号館四階四十四番資料室。そこに収められた妖怪学に関する膨大な文献は、絶対城が師匠であるクラウス教授から引き継いだものだった。 相変わらず怪奇現象の相談が後を絶たない資料室に、ある日、独逸語で書かれた文章と謎のスケッチの入った手紙が届けられる。見事スケッチの謎を解いた絶対城。そんな彼の前に、クラウス教授が現れる。久し振りの再会に話が弾む師弟。しかしクラウス教授は突如、資料室を文献ごと返し、妖怪学をやめるよう絶対城に告げるのだった。 四十四番資料室に最大の危機到来。伝奇ミステリ第3弾。
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東勢大学文学部四号館四階四十四番資料室。そこに収められた妖怪学に関する膨大な文献は、絶対城が師匠であるクラウス教授から引き継いだものだった。ある日、四十四番資料室に、独逸語の手紙と謎のスケッチが届けられる。そこに描かれた妖怪の正体とは何なのか。見事スケッチの謎を解いた絶対城の前に、クラウス教授が現れる。久し振りの再会に話が弾む師弟。しかしクラウス教授は突如、資料室を文献ごと返し、妖怪学をやめるよう絶対城に迫り―!?
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作中におけるリアリティをいかに書ききるか、その力量の程が問われる内容だなと痛感し、巧いなあと得心した巻でした。
だってかまいたちがあかぎれ、はまだしも、天狗が蝉だったなんて。でもそれを頷かせる絶対城先輩の説明が凄い!
そして、次は「鬼」ですか~というフラグを立てつつ幕引き。次巻が楽しみです。
いくら健康に良くても巨大な蝉を背中に張り付かせて血液をあげるのは勘弁です……ぞぞぞ。
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あー、面白かった!
お釣りがくるくらい楽しい読書時間だったなぁ。
お約束な展開なのかも知れないけど、それがきちんと定石におさまっていてよい!
読むのがもったいなくて、時間を区切ってする読書もたまらなくいーんだけど、こんな風に助走をつけて一気に読める読書もまた楽しいのだ!
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絶対城先輩の師匠のクラウス・インフォレスト教授が登場。森に暮らしているという冗談を言う。でも、実はそれがクラウス教授の技の秘密を解く鍵だったのだ。クラウス教授が真怪の天狗のはずがないのである。天狗がもともと姿は特定されず山で音を出す妖怪とされたいう民俗学的な事実を上手く物語に取り入れている。他に、山姥、鵺、鎌鼬、わいら、しろまくれという妖怪も物語のテーマとなっている。蘊蓄がなかなか面白いよ。それにしても、湯ノ山礼音のお人好しさにはあきれるが、それがこのシリーズの肝でもあるよなあ。
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恩師が帰ってきたと思ったら、尊敬した師とは変わっていて、、、。
一つ一つの妖怪の話はわかりやすい話でしたが、軸になっている物語は少し辛いものがありました。
全般的に最後の謎解きへの伏線が散りばめられているのも面白かったし、不在の明人さんに代わり礼音の活躍も素晴らしかったです。
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今回は結構有名な妖怪が多いですね。メインテーマが代表格である天狗ですし。全体としてのメインストーリーにページを食われて、今回の鎌鼬編みたいな小解決話が少ないのはちょっと物足りないです。
相変わらず各妖怪の解釈は面白いものがありますが、天狗の正体がこれはちょっとイヤだなぁ。
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師匠から受け継いだ、先輩の巣。
それが師匠により剥奪されてしまった。
突如として現れ、そして取り上げてきた師匠。
確かに借り物なのなら、そういうのもありですが
最後、大学側にはどう説明して終了させたのでしょう。
というよりも、そもそも師匠の破天荒さがすごい。
最終色々分かった時、主人公の気持ちに共感です。
痛くないって言われても…。
そんな師匠がメインの今回でしたが、間にあった
指導員の話。
ああいう存在はけり出してもよろしいかと。
そして最初の最初である、山登り。
これもまた、そのうち謎がとけるのでしょうか?
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【感想】
サクサク読めるし妖怪で楽しいしヒマツブシには向いている作品だが、この巻はなかなかつらい展開とも言える。礼音のキャラクタに救われる部分が大きいかと。あと、絶対城が妙に優しくなってる。
【一行目】みーんみーん、じわじわじわじわ。
【内容】
・今回は山姥、鵺、鎌鼬、わいら、天狗、しろまくれ。ビッグネームが多いかな。
・そして妖怪学の意義。この手の話では避けては通れない。
・この巻は、失意の絶対城と礼音がいかに立ち直るか、って感じ。
・ストーリー的には、山に入る絶対城に付き合うことになった礼音。どうやら過去に何かあったらしい。その後、絶対城の師匠が現れ、妖怪学は危険であるとし、文学部四号館四階四十四番資料室を返せと言う。その意図は?
▼文学部四号館四階四十四番資料室についての簡単なメモ
【いくち】第二巻に登場。
【馬鬼】第一巻に登場。不慮の事故で死んだ馬の霊が妖怪化し不幸を招く。
【大百足】第二巻に登場。
【大蛇】第二巻に登場。
【織口乃理子】国文科准教授。28歳だが20歳そこそこにしか見えないお嬢様っぽい美女。大学創始者の一族だが今は没落。一時期敵対していたが、後に協力者(?)となる。
【鎌鼬】第三巻に登場。有名妖怪。民間伝承系でしぶとく生き残っている。真空説はあり得ない。
【杵松明人】理工学部の三年生。絶対城の友人にして協力者。すごく聞き上手で人あしらいがうまい。元演劇部。
【木村茂吉】小久保荘の営繕担当。節足動物ラヴァー。
【京極夏彦さんとの違い】京極夏彦さんの作品とものごとを解決させる方向性は近いが、テイストは異なり、こっちはおどろおどろしい感じはほぼなくあっさりと軽くてドタバタしてる。コケオドシがないので好ましくはある。
【クラウス・インフォレスト】絶対城の師匠。紳士的にだが、美女はとりあえずナンパする。文学部四号館の正式な持ち主。フィールドワークが好み。密教系古武道の達人。正体は自称・・・。「声を荒げた時点であらゆる議論は終了となる」第三巻p.122。
【コーポ・ネオ苗代】礼音が入居している集合住宅。大学から自転車で二十分。いろいろ不便な位置にあるので家賃はお手頃。
【小久保日奈美】礼音の友人。今はひなびたしかし通好みの温泉宿小久保荘の若女将。
【七人みさき】第二巻にちょっと名前が出てくるけど、個人的には昔からあれがけっこう怖い。なんでかわからないけど。いつかメイン妖怪として出てくるだろうか? まあ、あれを妖怪と呼べるならやけど。
【しろまくれ】第三巻に登場。はしてないけど名前は出た。それに例えたせいで礼音を怒らせた。
【絶対城阿頼耶/ぜったいじょう・あらや】文学部四号館四十四番資料室に住まうワイシャツに黒の羽織で黒色の長身の怪人。妖怪に詳しい学生。バリトンボイス。スポーツは嫌いだがフィールドワークで山歩きには慣れている。改名しているらしく、その名の由来は井上円了の文章のようで、絶対城はあらゆる知識の集まる書庫のこと、阿頼耶は最も深い場所くらいの意。
【蒼空/そら】小学五年生。礼音が通う市営スポーツセンター二階の柔剣道場で合気道を習う受講仲間。船幽霊を目撃してしまった。礼音のことをコーチと呼ぶ。
【付喪神】第一巻に登場。長く使われた道具が変じた妖怪。
【土蜘蛛】第一巻に登場。人を襲う蜘蛛妖怪。けっこう強力な妖怪として描かれることが多い。
【天狗】第三巻に登場。超ビッグネーム。公的記録にも民間伝承にも現れ、歴史も長く、さまざまな様相で描かれる。絶対城先輩の暴くその正体は・・・
【東勢大学】舞台となる私立大学。古い施設を流用して創られており怪しい噂がいっぱい。
【南郷蒼空/なんごう・そら】→蒼空
【鵺】第三巻に登場。その正体は・・・
【ぬらりひょん】第一巻に登場。頭が大きくて背丈の低い老人の姿の妖怪。「妖怪の総大将」的な言い方は後付けの設定だとか。
【春田】市営スポーツセンターで合気道を教えている師範。
【船幽霊】第二巻に登場。
【べとべとさん】第一巻に登場。足音だけがついてくる追跡系の妖怪。あるフレーズを唱えることで去ってゆく。
【星川】海洋生物学専門の気弱そうな女子学生。礼音のライバル? になるかも?
【間刈/まがり】市営スポーツセンターで剣道を教えている警官。厳格で短気な性格。
【見越し】第二巻に登場。
【海晴/みはる】蒼空(そら)の友人。小学六年生。市営スポーツセンターで剣道を習う美少女剣士。鎌鼬の被害に遭った。
【夜行さん】第二巻に登場。
【山姥/やまうば】第三巻に登場。個人的には「やまんば」と呼んでいたが「やまうば」が正式? 絶対城によると民間で広まった伝承ゆえに鬼や天狗に較べより直接的な怖さがある。恐怖をもたらす者であると同時に善性を抱くこともある不可解な存在。
【友香/ゆか】礼音と同じ学部の友人。
【湯ノ山礼音/ゆのやま・あやね】語り手。ヒロイン? 大学一年、経済学部。長身でツルペタ系の女性。たぶん、うまくすれば男装の麗人ふうになれると思う。絶対城先輩はユーレイと呼ぶ。とある妖怪の末裔らしくサンプルとも呼ぶ。能力を解放したら凄いんやけど普段は解放していたくはなく、そのためには絶対城先輩の作る(怪しい)アイテムが必要でほぼ下僕扱いされている。趣味と特技は合気道。
【妖怪】個人的に考えているだけだが、妖怪は概ね、人間が主に自然(および自然現象)と折り合いをつけるため、そのズレを埋めるために発生したのかなと思っているので絶対城先輩のやり方は本来のありように合ってるんだろうと思う。
【妖怪学】井上円了がつくった学問。その意図は妖怪という怪しい存在に理性の光を当て、そのバックボーン、背景に隠されたものを探ること。要するに妖怪なんていないと証明したかったってことかと。それは時として不都合なことを隠蔽してきた権力側にとってまずいことでもあり、それゆえに危険でもあった。
【妖怪学の意義】礼音がいつか誰かの役に立つかもしれないと言って、ある程度絶対城先輩が納得したみたいなのが不思議。そんなもんとはちゃうでしょ? よっぽど弱ってたのかと思ったら、そうでもなかったみたいやし。ちょっとキャラがブレてたかな。
【妖怪の分類】井上円了が提唱したらしい。生物などを見誤った「誤怪」、捏造された「偽怪」、自然現象などを超自然と思い込む「仮怪」(その中でさらに物理的実体に由来するものを「物怪」、心理的要因に由来するものを「心怪」)、そして「真怪」はほんとうの妖怪。
【霊】妖怪は自然発生だが霊は人工的なもので深みが違うらしい。それは、ぼくもそう思ってる。
【わいら】第三巻に登場。名前と姿だけはいくらか流布しているがバックボーンを持たない妖怪。どうやら無名の絵師の創作かもしれない。
【笑い女】第三巻に名前のみ登場。
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段々と妖怪学わかってきたぞ。
今回は先輩の師匠登場。
その師匠とすったもんだあって、最後はとんでもな忠告をして去っていく・・・
次回気になるじゃん
先輩とユーレイも段々と・・・
次回気になるじゃん。
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シリーズ3作目です。
今回も各章ごとに妖怪名がついてますが、
パターン(?)が崩れてきてますね。
ミステリ的要素は影を潜め、妖怪うんちくが全面に出てます。
気が付けば内容紹介からも「伝奇ミステリ」の文字が消えている・・・。
まぁいいですけど。
事件(?)が有っても無くても絶対城先輩のうんちくは続きます。
それと、各章の妖怪談義よりも師弟対決が主題でした。
意味深な前振りの導入部に続いて、偽名での挑戦状。
まぁ先は読めましたが印象的な登場と予想を裏切る人物像。
自らを天狗だと名乗って登場した教授ですが、
絶対城先輩の過去をよく知っていそうでしたし、
前作の終わりからも次はその話かと予想していたのですが。
そこは外れました。
絶対城先輩の過去編は次回以降に持ち越しのようです。
それにしても、「天狗」の話は面白かったです。
強いて云うなら最後のネタバレがちょっと蛇足的かと。
妖怪像を紐解く過程は、歴史の考察が推理のようで良かったのですが。
かくかくしかじかでこれがそうよと実物を出されては、ちょっと・・・。
荒唐無稽さが差し込んできて、
それまで入り込んでいた小説の世界からフッと現実に引き戻されました。
話の流れ上出さずにはおけないネタバレだとは思うんですが。