【感想・ネタバレ】オランダ風説書 「鎖国」日本に語られた「世界」のレビュー

あらすじ

日本人の海外渡航を禁じた江戸幕府にとって、オランダ風説書は最新の世界情勢を知るほぼ唯一の情報源だった。幕府はキリスト教禁令徹底のため、後には迫り来る「西洋近代」に立ち向かうために情報を求め、オランダ人は貿易上の競争相手を蹴落すためにそれに応えた。激動の世界の中で、双方の思惑が交錯し、商館長と通詞が苦闘する。長崎出島を舞台に、「鎖国」の200年間、毎年続けられた世界情報の提供の実態に迫る。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

いやあ、面白かった。

江戸時代日本はどのような情報を得ていたのか?
オランダ人はどのような情報を与えていたのか?
オランダ風説書で抜粋された内容から、日本政府・オランダ人の世界観が見える。当時の世界が見える。

情報もパワーの一種だけど、情報という重要なパワーに焦点を当てている。
想像の何倍以上も、当時の世界観を見渡せる良書でした。

「幕府は「外」の存在を認識した上で、人や物、情報の動きに厳しい制限を加えた。だからこそ、「外」の状況を知るために風説書が必要とされたのである。」

0
2020年07月18日

Posted by ブクログ

世界史上類例がないとも述べられる、200年の長きにわたって継続的にリポートされつづけた国際情勢。それが風説書だった。この新書が論文を下敷きにしているだけあって、そこまでの知識を新書レベルで誰が欲するんだというくらい掘り下げている。

いろいろ改めて気づかされる。
なぜオランダが唯一の西欧の貿易相手国だったかということや、なぜオランダは日本と貿易をし続けたのかということなど。
また、風説書は幕閣や諸藩にとって西洋近代の脅威を感じとる窓口であったと述べられる。とりわけ薪水給与令への転換を見れば清朝の連敗は衝撃であったことが容易に想像つく。

通詞や商館による自身が有利になるための情報操作があったものの、中央がオランダにリポートを課し続けたことは本書が述べるとおり清や朝鮮と異なるところであり、それを受け継いだ国家の体質が19世紀後半以降における決定的な西欧化の違いとなって表れてくるのだと思う。

0
2014年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
日本人の海外渡航を禁じた江戸幕府にとって、オランダ風説書は最新の世界情勢を知るほぼ唯一の情報源だった。
幕府はキリスト教禁令徹底のため、後には迫り来る「西洋近代」に立ち向かうために情報を求め、オランダ人は貿易上の競争相手を蹴落すためにそれに応えた。
激動の世界の中で、双方の思惑が交錯し、商館長と通詞が苦闘する。
長崎出島を舞台に、「鎖国」の200年間、毎年続けられた世界情報の提供の実態に迫る。

[ 目次 ]
第1章 「通常の」風説書
第2章 貿易許可条件としての風説書
第3章 風説書の慣例化
第4章 脅威はカトリックから「西洋近代」へ
第5章 別段風説書
第6章 風説書の終焉

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

0
2011年04月06日

Posted by ブクログ

面白かったが、ところどころ主語述語が分からなくなって、行ったり来たりした。結論で、「風説書は、江戸時代の日本が聞いたオランダ人のささやきでしかなかった」「人間は興味のあることしか知ろうとせず、自分の価値観に合致することしか理解しないのではないか」と書かれている。異文化をどのように取り入れ、取捨選択し、解釈し、受け入れるのか。西欧近代のパワフルな破壊力の正体がなにで、それとは何人たりも無関係でいられないという時代について、色々考えさせられた。

0
2014年05月14日

Posted by ブクログ

江戸時代を通してオランダと江戸幕府の間で取り交わされた
オランダ風説書を解説する一冊。語り口は柔らかく、
非常に読みやすい。オランダや江戸幕府の意図や、
通訳人と商館長の苦労など、大変面白く読めた。

0
2014年03月28日

Posted by ブクログ

江戸時代における海外情報の流通を追った労作である。
通時的な分析によって、徳川幕府の関心の移り変わりが透けて見えるのが面白い。
こうした研究が成り立つのも日蘭が長いこと深い関係を結んでいたからこそだが、オランダの国際的地位が揺れ動く中で関係を維持するために、商館や通詞たちは暗闘を繰り返してきたわけである。したがってこれは、阿蘭陀通詞という裏方の歴史でもある。
「おわりに」でさらっと触れられているが、通詞たちは幕府だけでなく九州諸藩にも情報を横流ししていたらしい。彼らにとってはバイト感覚かもわからんが、通詞たちの情報が多少なりとも九州諸藩の国際感覚醸成に役立って幕末期につながった、と妄想すると面白い。

0
2010年09月06日

Posted by ブクログ

近代以前、海外の情勢を知る手段は限られていました。まして、貿易を経済の礎にしていた国でもなければ、土地から離れた遠い世界の出来事に関心を持つことも少なかったはずです。実際、鎖国的な体制をとった東アジア圏の国々で、オランダ風説書のような仕組みができたのは日本くらいらしいです。そこがおもしろいところでもあるのですが!

本書は、歴史上の細かい出来事ももらさず書いていながら、全体を通してのメッセージもしっかりしています。知識不足で、文章の雰囲気くらいしかわかりませんでしたが、オランダ風説書の魅力が感じられるよい本だと思いました。高校で世界史をやった人も、日本史をやった人にもオススメです。こういう複眼的な見かたができると歴史も楽しいです。

0
2010年07月06日

Posted by ブクログ

「ここでいう『日本文字で美しく書かれ、商館長による署名がなされ』た文書が、オランダ風説書である。風説書は、オランダ人が眼にした数少ない正式な日本文書であった。江戸では老中、ことによると将軍さえ見るかもしれない。そのためとくに緊張感をもって、ていねいに仕立てられた。」(はしがきより)
江戸時代に200年にわたって長崎から江戸に届けられた世界の出来事に関する情報「オランダ風説書」について書かれた本。非常におもしろかった。幕府が世界の情報を熱心に収集しようとしていたという事実と、その意義、あるいはその限界について書かれた本。いろいろ考えさせられた。

0
2018年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本人の海外渡航を禁じた江戸幕府にとって、オランダ風説書は最新の世界情勢を知るほぼ唯一の情報源だった。長崎出島を舞台に鎖国のニ百年間、毎年続けられた世界情報の提供の実態に迫る。
第一章 「通常の」風説書
第ニ章 貿易許可条件としての風説書
第三章 風説書の慣例化
第四章 脅威はカトリックから「西洋近代」へ
第五章 別段風説書
第六章 風説書の終焉
おわりに

著者によると研究すればするほど、風説書の限界が見えてくるという。本書の結論風にあえて言うなら「風説書は、江戸時代の日本が聞いたオランダ人のささやきでしかなかった」ということになるという。

著者の過大評価すべきでないという見方は面白いが、幕府の役人達もなかなかやるというのが率直な感想であった。(初期においては唐人ルートの情報と突き合せたりしている)

シャム王がジャンク船を利用して対日貿易を行っていたとは知らなかった。

通詞が情報を取捨し江戸へ伝えるか決める様子は、情報の流れを知るうえで興味深い。オランダ人もライバルを蹴落とすために、思惑を持って情報を提供しているのが面白い。

やや読み難い気がしたが世界史の視点から徳川日本を知る事が出来る本である。

0
2013年08月13日

Posted by ブクログ

江戸時代は「鎖国」状態などではなかったことはもはや常識になっている。その根拠の一つが「オランダ風説書」の存在だが、それが実際にはどのようなものだったのかが、オランダ語文献の側からも明らかにされているのが本書の特徴だ。その結論が末尾で吐露されているのだが――研究者としての率直な態度に感心。

0
2011年07月29日

「学術・語学」ランキング