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Posted by ブクログ
世界史上類例がないとも述べられる、200年の長きにわたって継続的にリポートされつづけた国際情勢。それが風説書だった。この新書が論文を下敷きにしているだけあって、そこまでの知識を新書レベルで誰が欲するんだというくらい掘り下げている。
いろいろ改めて気づかされる。
なぜオランダが唯一の西欧の貿易相手国だったかということや、なぜオランダは日本と貿易をし続けたのかということなど。
また、風説書は幕閣や諸藩にとって西洋近代の脅威を感じとる窓口であったと述べられる。とりわけ薪水給与令への転換を見れば清朝の連敗は衝撃であったことが容易に想像つく。
通詞や商館による自身が有利になるための情報操作があったものの、中央がオランダにリポートを課し続けたことは本書が述べるとおり清や朝鮮と異なるところであり、それを受け継いだ国家の体質が19世紀後半以降における決定的な西欧化の違いとなって表れてくるのだと思う。
Posted by ブクログ
【内容】
オランダ風説書の通史を、主にオランダ側の視点から整理している。
日蘭貿易に伴う「通常」風説書の成立、風説書の慣例化と実態、オランダ側の情報網背景、江戸幕府の脅威がカトリックの流入から「西洋近代」へと移り変わっていく様、オランダを取り巻く環境の変化とそれを日本側に悟らせないための努力、アヘン戦争以降の東アジア情勢変化に伴う「別段風説書」の成立、黒船来航に伴う開国とそれによるオランダの日本に対する特別な立場の喪失と風説書の終焉。
筆者が考える風説書の意義と、風説書の江戸幕府への影響の限界。
【印象に残った点】
通詞(オランダ側の発言を通訳し風説書としてまとめる幕府側の役人)による情報取捨選択による操作と訳語の限界、オランダ側は自らの優位性を高めたり不利を打ち消すために風説書の中でメッセージを伝えるものの、通詞による情報操作により幕府に伝わっていないことが度々あった。また通詞の特権維持への執着と事勿れ主義は、現代に通ずるものを感じる。こうした
初期は幕府側が他の情報と照合してオランダ側の情報操作に対する揺さぶりをかけるものの、太平の世になることでそのまま情報を鵜呑みにするようになったことは、幕府の平和ボケを感じさせた。そもそも貴重な海外の情報を幕府が有効に活用できていなかったのは、上述の通詞の問題に起因する鎖国体制の限界だったように思われる。こうしたことから、オランダ風説書は現在日本史で取り上げられるほどには政治に影響を与えられなかったのかもしれない。
ある一定の頻度、制度のもとで国際情勢の報告をまとめるという風説書制度の特異性とその世界史的意義。
【感想】
風説書に絞って記述しているためか、日蘭関係のドラマチックな展開によるワクワク感はあまりなく淡々とした記述に感じたが、その分わかりやすく丁寧にまとめられている。
通常風説書は通詞が介在するために情報が操作されていたという視点はなかったため、非常に興味深かった。国家間のやり取りは互いの政治中枢の思考にのみ目線がいきがちだが、実際には現場レベルで情報が歪められたり想定外の影響を受けたりしてその重なりによって歴史が動いている。朝鮮との通好における宗氏の影響を思い出させた。
オランダ側の周辺環境の変化と徐々に相対的に力を失っていく(ナポレオン戦争時には一度本国がなくなっている!)中でも、自分たちの利益を維持しようとするオランダ商人の逞しさと強かさには感動を覚えた。今後風説書だけでなく、日蘭関係全般についてももっと理解を深めたい。
Posted by ブクログ
江戸時代における海外情報の流通を追った労作である。
通時的な分析によって、徳川幕府の関心の移り変わりが透けて見えるのが面白い。
こうした研究が成り立つのも日蘭が長いこと深い関係を結んでいたからこそだが、オランダの国際的地位が揺れ動く中で関係を維持するために、商館や通詞たちは暗闘を繰り返してきたわけである。したがってこれは、阿蘭陀通詞という裏方の歴史でもある。
「おわりに」でさらっと触れられているが、通詞たちは幕府だけでなく九州諸藩にも情報を横流ししていたらしい。彼らにとってはバイト感覚かもわからんが、通詞たちの情報が多少なりとも九州諸藩の国際感覚醸成に役立って幕末期につながった、と妄想すると面白い。
Posted by ブクログ
近代以前、海外の情勢を知る手段は限られていました。まして、貿易を経済の礎にしていた国でもなければ、土地から離れた遠い世界の出来事に関心を持つことも少なかったはずです。実際、鎖国的な体制をとった東アジア圏の国々で、オランダ風説書のような仕組みができたのは日本くらいらしいです。そこがおもしろいところでもあるのですが!
本書は、歴史上の細かい出来事ももらさず書いていながら、全体を通してのメッセージもしっかりしています。知識不足で、文章の雰囲気くらいしかわかりませんでしたが、オランダ風説書の魅力が感じられるよい本だと思いました。高校で世界史をやった人も、日本史をやった人にもオススメです。こういう複眼的な見かたができると歴史も楽しいです。
Posted by ブクログ
「ここでいう『日本文字で美しく書かれ、商館長による署名がなされ』た文書が、オランダ風説書である。風説書は、オランダ人が眼にした数少ない正式な日本文書であった。江戸では老中、ことによると将軍さえ見るかもしれない。そのためとくに緊張感をもって、ていねいに仕立てられた。」(はしがきより)
江戸時代に200年にわたって長崎から江戸に届けられた世界の出来事に関する情報「オランダ風説書」について書かれた本。非常におもしろかった。幕府が世界の情報を熱心に収集しようとしていたという事実と、その意義、あるいはその限界について書かれた本。いろいろ考えさせられた。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
日本人の海外渡航を禁じた江戸幕府にとって、オランダ風説書は最新の世界情勢を知るほぼ唯一の情報源だった。
幕府はキリスト教禁令徹底のため、後には迫り来る「西洋近代」に立ち向かうために情報を求め、オランダ人は貿易上の競争相手を蹴落すためにそれに応えた。
激動の世界の中で、双方の思惑が交錯し、商館長と通詞が苦闘する。
長崎出島を舞台に、「鎖国」の200年間、毎年続けられた世界情報の提供の実態に迫る。
[ 目次 ]
第1章 「通常の」風説書
第2章 貿易許可条件としての風説書
第3章 風説書の慣例化
第4章 脅威はカトリックから「西洋近代」へ
第5章 別段風説書
第6章 風説書の終焉
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