【感想・ネタバレ】「ニート」って言うな!のレビュー

あらすじ

その急増が国を揺るがす大問題のように報じられる「ニート」。日本でのニート問題の論じられ方に疑問を持つ三人が、各々の立場からニート論が覆い隠す真の問題点を明らかにする。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 ニートは「情けない」「甘えている」などの根拠のない精神論が一般大衆の間に罷り通り、膾炙される中、そんな風潮に異議申し立てをしているのがこの本。

 一章では、ニートには、非求職型(仕事に就きたいが、今仕事を探していない)、非希望型(今仕事に就きたいと思わない)など様々な種類があること、各々に様々な背景があって(資格試験準備中、家事手伝い、療養中など)、一概には捉えられないこと、一般の固定観念と異なり、ニートと呼ばれる人の約4分の3が職に対する意欲を持っていることなどが挙げられていまる。

 二章では、ニートを敵視する風潮は、97年の神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)により加熱した青少年ネガティヴキャンペーン(若者バッシング)が形を変えたものに過ぎない、と述べられている。殺人、強姦などの少年犯罪が1960年代以降、減少傾向にあるにもかかわらず、パラサイトシングル、ひきこもり、ニートなどの若者に対する偏見と憎悪に基づく青少年ネガティヴキャンペーンが蔓延している風潮に警鐘を鳴らす。

 三章では、「働かざるもの食うべからず」などニート問題の責任を本人や保護者に求めてばかりで、社会構造に目を向けているものが僅かしかないことが指摘されている。この章は実に痛快だった。

 ニートという語を喧伝することで金儲けしている輩や、ニートを自分より下の立場にいると見なして優越感に浸りたい輩がはびこっているからこれほどまでに、「ニートは情けない」などの戯言がもてはやされているのだろう。

 この本は日本社会がいかにニートに対する偏見と憎悪に満ちていたかを身を以て思い知らせてくれた一冊です。この本はもっともっと多くの人に読まれるべきである。

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2011年06月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ニートのコアとされる「就業意欲の無い若年層」が増加していないという本田の現状分析には手堅さを感じるし、いたずらに心の問題に矮小化しニートの「鍛えなおし」を強調する論に対する内藤の構造批判にも説得力がある。ただ、先に内藤によりニート問題の心の問題化とその背景について分析がなされているので、最後の後藤による様々なメディアにおける言説批判が少々蛇足と感じられた。
一方でニートという言葉が「社会的ひきこもり」と混同されている現状への本書の批判は、残念ながら、「社会的ひきこもり」という現象自体を問題として捉え、再教育を促そうとする声には届かないのではないか?昔からいた裕福な家庭の「道楽息子」(内藤)が、さほど裕福でない家庭にも出現し始めたことへの社会の当惑が昨今のニート批判であるとするなら、ニートの一角を確実に占める「社会的引きこもり」に対する本書なりの処方箋(その必要性の有無も含めて)を示してほしかった気がする。

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2013年12月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ニート」と一般的に呼ばれる人たちの、社会の中での扱いを批評している。
メディア等により、「ニート」が単純に「だらしない若者」を指すような風潮になっており、それは現状を錯誤する原因ともなり、施策の方向性をも謝らせてしまう。
3人の著者により、社会で取り扱われている「ニート」なるものへの統計分析を行い、取るべき施策も提案している。

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2013年09月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『ニート問題の間違い』を本筋として、3人の著者が違ったアプローチで展開しています。
第1部執筆の本田由紀氏では統計データから、
第2部執筆の内藤朝雄氏ではマスコミの煽動から、
第3部執筆の後藤和智氏では新聞、雑誌等のメディアから、
それぞれ述べています。

やはり特筆すべきは第1章です。
ニート問題=個人の心の問題と片付ける風潮を一蹴、つまり『ニート自体は昔から存在しており、近年になって急増した、あるいはニートが突然誕生していない。統計データからは時系列ではニート数はさほど変化していない』点と、『問題はフリーターで、彼らも単純に正職がないからフリーターにならざるを得なかったところが大きい。つまり労働の需給問題である』
と両断。それも客観的資料に基づいているので説得力があります。今まで知らなかった事なので瞠目です。

第2章と第3章については割愛しますが、総じて『最近の若者は』云々を放言する人に読ませたい一冊です。
個人的には第1章だけで十分満足でした!

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2011年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
「ニート」とは、働かず、就学もせず、求職行動もとっていない若者を指す言葉で、日本では二〇〇四年頃より使われ始め、その急増が国を揺るがす危機のように叫ばれている。様々な機関が「ニート」の「人間性」を叩き直そうと「支援」の手を差し押べており、多額の予算が動いている。
このような状況下において、本書では、まず、日本での「ニート問題」の論じられ方に疑問を覚える本田由紀氏が、「ニート」という言葉自体の不適切さを量と質の両面から明らかにする。
また、『いじめの社会理論』の著者である内藤朝雄氏は、「ニート」が大衆の憎悪と不安の標的とされていることを挙げ、憎悪のメカニズムと、「教育」的指導の持つ危険な欲望について解説する。
さらに、ブログ上で「俗流若者論批判」を精力的に展開し注目を浴びている後藤和智氏が、「ニート」を巡る言説を詳しく検証する。
その急増が国を揺るがす大問題とされる「ニート」。
しかしそもそも、その定義自体が妥当なものなのか?
大衆の憎悪のメカニズムと教育的指導に潜む危険な欲望とは?
ニート論が覆い隠す真の問題を明らかにする。

[ 目次 ]
第1部 「現実」―「ニート」論という奇妙な幻影(「ニート」のイメージは間違っている 若者に対して真に必要な支援は何か)
第2部 「構造」―社会の憎悪のメカニズム(青少年ネガティヴ・キャンペーン 佐世保事件にみる諸問題 ニートをめぐる「祭り」の状況 ほか)
第3部 「言説」―「ニート」論を検証する(「ニート」論前夜―「自立しない若者」への苛立ち 「ニート」論はいかにして広まったか 週刊誌における「ニート」 ほか)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年04月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ニート」という言葉は、もうあまり聞かなくなった気がするけれど。

・イギリスの「NEET」=16~18歳、学生でもなく働いてもいない、失業者を含む
日本の「ニート」=15~34歳、〃、失業者を含まない
・少年犯罪は凶悪化も増加もしていない。むしろ終戦直後の方が、いずれの点においても悪い状況にあった
・同書の中でも述べられている通り、「ニート」論に限らず、あらゆる若者バッシングの構造を見抜くヒントが示されている。政治、経済、雇用といった側面から問題解決が図られるべきところを、教育や精神論にすり替え、自己の醜く耐えがたい部分を若者に投影することで溜飲を下げる人々がいるという。これは私自身にも無関係な構造ではない。「周囲の大学生はダメだ」と言って、優越感のようなものとともに思考停止してしまう場面が、正直少なくなかった。彼らを取り巻くマクロな条件を見極めてからものを言うべきではないか。批判するだけなら誰でもできるのである。ただし私は、いかなる大学生とも分け隔てなく付き合え、と言いたいのではない。波長の合う人々と関係を深めていけばよいが、「それ以外」の人々を一様に語ることの危険性を喚起したいのだ。それは多様な生き方に対する想像力をかなぐり捨てる行為であり、ひいては自己の生き方に自ら枠線を引く窮屈な状況を引き起こしかねない。

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2011年08月27日

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