あらすじ
スタンダールの代表作に新訳登場。ナポレオン失脚後のフランス、貧しい家に育った青年ジュリヤン・ソレルは、立身のため僧職に身を投じる。やがて貴族であるレナール家の家庭教師となり、その美貌からレナール夫人に慕われるようになる。ジュリヤンは金持ちへの反発と野心から、夫人を誘惑するのだが……。才知と美貌で激動の時代を駈けぬけた主人公の誇り高き精神を、新たな解釈で生き生きと描き出す。
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Posted by ブクログ
何度も叫んでしまった。「ジュリヤンこのやろーーー!!!」と。
この野郎、一人の親友に恵まれ二人の女性に愛され三人の恩師に助けられ(ピラール神父、シェラン司祭、ラ・モール侯爵)多くの民をその美貌と才知と得体の知れなさで魅了し死んだ後は小説になっちゃって今でも数え切れない人間の心に語り残り続けているというのに、出世?権力?なんじゃそりゃ!人間不信にも程があるし、勘違いも甚だしい。感情に煽られっぱなし。コミュ障。KY。挙げだしたらきりがない。でも憎めないんだ。嫌いになれないんだよ。「死ぬな」って願っちゃうんだよ。愛しちゃうんだよ。君みたいな男を。君だから。だからもう一度叫ばしてもらおう。「ジュリヤンこのやろーーー!!!」と。
Posted by ブクログ
フランスの歴史が少し分からないとつらいけれども
ナポレオンが主人公に多大な影響を
与えてた、と言う事実を知れば
問題なくは読めると思います。
その気質ゆえに家では散々疎んじられていた
ジュリヤン。
一見おとなしげに見える彼は
実は心のうちには「大きな野望」を抱いていたのです。
そして計算高い彼は
一人の夫人を誘惑し、
ついぞは彼女をものにさえしてしまいます。
そして彼はその計算高さ、狡猾さを武器に
地位までも手に入れようとしています。
だけれども脆さも見えるという不思議。
それが下巻では
どうなっていくのでしょうか。
Posted by ブクログ
『赤と黒』はナポレオン失脚後のフランスで片田舎の職人の息子ジュリアンが、立身出世を目論み上流階級の間隙を渡り歩くサクセス(?)ストーリーです。
この時代で出世をするに当たってなによりも必要なものはお金、高い身分、そして縁故でした。その中でジュリアンに備わっていたものは縁故のみ。それも司祭様の教え子であった程度。彼はその一本の蜘蛛の糸から己の才能と美貌で、新たな糸に繋いで登っていくのです。
上巻においてジュリアンを導いてくれた新たな糸はレナール夫人。
司祭様つてでジュリアンの優秀さを知った町長に子供たちの家庭教師にと雇われて、出向いた家の奥様です。金や身分のことしか頭にない夫と対称的に、人としての尊厳をなによりも重んじるジュリアンの純粋さに夫人は惹かれたのでした。
このレナール夫人は上巻におけるもう一人の主人公といっていい存在です。
夫人がジュリアンを導いた理由は恋心(もちろん不倫)にあり、その熱意は並々ならぬものがありました。
なにより私が感じ入ったのは国王様が町を訪問されるという大イベントに、ジュリアンを無理矢理に親衛隊の一人としてねじ込んだことです。親衛隊とは国王様の身辺を警護するもの。本来ならそれ相応の身分のある者しかなれません。かなりの難事だったはずです。
しかし、それを成し遂げた時の夫人の喜びは想像するに余りあります。普段のジュリアンは(夫人と比べれば)あまり良い服を着たりはしません。お金や身分に関係ない部分に惹かれたといっても、ふとした拍子に恋相手の頼りなさを感じてしまうのでした。もしジュリアンが自分に釣り合うくらいの身分だったなら……。そんな悩みを抱える夫人は一時でもジュリアンが国王様の親衛隊の一人として、立派な衣装を着て馬に跨がって颯爽と町の貴族や金持ち達に並び立つ姿に、どれほどの歓喜があったでしょうか。
その後も夫人はかなり賢く立ち回り、ジュリアンを様々な局面から救い導きます。そんな夫人はとても優秀な人物であるように見えますが、物語開始当初つまりジュリアンに恋をする前は全く違っていました。貞淑で従順ではあるものの、不器用で鈍重なただのお嬢様。
夫人の変化や成長が上巻の見所の一つです。
下巻でレナール夫人はどうなるのか、はたまた新たな女性が登場するのか楽しみです。
Posted by ブクログ
ジュリアン・ソレルは、製材小屋の息子だが、体が小さく役立たず扱いをされていた。ジュリアンはナポレオンを尊敬していたが、この時代はナポレオンが失脚したあとの時代。ナポレオン信仰は隠すべきことだったみたい。
ジュリアンはラテン語がとても良くできたので、地元の大物であるレナール家に子供の家庭教師として招かれる。
最初は「度胸試し」のようなつもりで、レナール家の奥様を誘惑しようとするジュリアンだが、奥様との道ならぬ愛の沼に堕ちていく。この時代、姦通は死に値する罪だったようで、奥様は自分の罪に悩み苦しむ。
近所では奥様とジュリアンの関係を怪しむ人が増え、ジュリアンはレナール家を出て神学校に入校することになる。
神学校に入校してから、ジュリアンは優秀さゆえに妬まれたり嫌がらせをされたりしたが、野心と賢さで偉い人を味方につけながら出世していく。そんな中でもレナールの奥様のことを忘れられず、ジュリアンは神学校からの移動の夜にレナール家に忍び込む。奥様はジュリアンと会っていない1年の間、自分の罪を思い知り信仰を深めていたので最初はジュリアンを拒むが、結局二人はもとさやに戻って一夜を過ごした。
侵入者に気付いたレナール家の人たちが発砲する中、ジュリアンはレナール家からゆうゆうと逃げていく・・・というのが、大まかな上巻のお話。
子どものときに「漫画で読む世界文学全集」的本を読んでいて、その中に赤と黒もあった。
その時は赤と黒は面白い話だと思ったんだけど、実際に読んでみると、まぁ難解!!
なかなか話が進まないと思いながら読んでいると、途端に倍速送りされたように急展開があり、理解が追いつかない部分もあった。
特に理解できなかったのは、ジュリアンが神学校に通うことになったところ。
奥様とジュリアンの仲が、レナール氏にも疑われるようになり、奥様が手紙の偽装をしたり色々と動き回るんだけど、その描写がすごーく長い割に、レナール氏がジュリアンの処遇を決めるところはあっさりしすぎてて「読み落とした??」と思うほど。
国王が来訪した際にジュリアンが馬に乗って行進に参加したというのは漫画の本でも印象的だったな。高貴な生まれでないジュリアンにとってこれは「大抜擢」だったわけだが、これはレナール婦人の交渉の結果だったということはこの本を読んで理解した。レナール婦人、大胆だなぁ。
私の記憶では、ラストは死なんだけど、どうしてそこに至るのかの記憶が曖昧でね。
しかし、このまま下巻を読み終えたとしても「???」という感じで終わる可能性もあるな。
漫画や舞台などの二次創作ではジュリアンの女性遍歴を中心に制作されるこのお話。小説を読むと、ジュリアンの内心描写の比重が重くて若干辟易とした。常に周囲の空気や力関係を伺い、人を出し抜いてやろうと考えているジュリアン。
恋愛も、野心を満たすためだったり、度胸試しの側面が強い。
友達から木材事業を一緒にやらないかと誘われると「それもいいな」と思ったり、レナール家を訪問したイタリア人音楽家(ジェロニモって名前だった。ミュージカルの語りべであるジェロニモってこの人?)を見ては「こんな生き方(出世や信仰に縛られない自由な生き方)いいな」と思ったりする。本心のジュリアンは、結構素朴なところがある。それでも、彼を動かすのはプライドと野心なのだ。
この時代の賢い人、頭が回る人ってこんなだったの?と、私は、宇宙人を見ているような気持ちにすらなった。
当時のフランスでは、本心をさらけ出すことができなかったのだろうか。
私のように歴史に疎いと、「???」となるだろう本だ。
追記。ジュリアンが神学校で「マルティンルター」と呼ばれて嘲笑されていた、という表現が、私には特に???だった。
ルターはプロテスタント派を作ったドイツの宗教家だが、当時のフランスでは嘲笑の対象だったということ?
宗教、キリスト教に関する深い造詣がないと、作中と同じ温度で笑うこともできない…悲しみ。自分の狭い世界と教養の浅さを思い知る読書だった。