【感想・ネタバレ】夜間飛行のレビュー

あらすじ

20世紀初頭の郵便飛行に携わる者は、「自分達が歴史を作る」という信念と誇りを持っていた! 南米大陸で、夜間郵便飛行という新事業に挑んだ男たち。ある夜、パタゴニア便を激しい嵐が襲う。生死の狭間で懸命に飛び続けるパイロットと、地上で司令に当たる冷徹にして不屈の社長の運命は――命を賭して任務を遂行しようとする者の孤高の姿と美しい風景を、自身も飛行士だった作家が詩情豊かに描く航空小説の傑作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ぼくは死んでしまったようにするだろう。でもそれは本当じゃない。

欲しいのは個人の幸せではなくて、もっと先にあるもの

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2024年07月25日

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ネタバレ

「星の王子さま」で有名なサン=テグジュペリによる小説。飛行機乗りの経験を活かしたリアリズムにあふれる作品。

夜間の飛行がまだ非常に危険だった時代。新事業に命をかける男たちの、尊厳と勇気の物語。事業の責任者であるリヴィエール社長の、あまりにも厳格なやり方は、強い信念によるものだった、というお話。個人の幸不幸に心を揺らしつつも、あくまで全体の進歩のために意志を貫く。ここに深いテーマ性があり、その勇気に感動を覚えた。

作者自身が飛行機乗りだっただけに、飛行にまつわる描写は詳しい。嵐におそわれたパタゴニア便の、燃料が切れるまでのタイムリミットによる緊張感は、テレビ番組の飛行機事故再現映像を見ているかのような迫力があった。そして、「これラピュタ?」と思わせるような場面があり、実際この小説は参考にされているのではないかと思った。

リアリティあふれる本作は、飛行機というものが世の中に現れて間もない時代の、貴重な記録であり、その時代を生きた人々の勇気を感じられる偉大な作品だ。「星の王子さま」を読んで育った子どもたちが、大人になって次に手にとれるよう、いつまでも読みつがれることを願う。

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2022年06月29日

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ネタバレ

ロマンティックなタイトルだが、語られているのは、自然の脅威であったり、冒険であったり、あるいは、不屈の精神であったりする。サン=テグジュペリ、イコール「星の王子様」とだけ思っていたが、最近読んだ「戦う操縦士」を含め、危険に立ち向かいながら自らの進路を切り開いていく人間精神という極めて崇高なテーマを描く作家として、これまでの読まず嫌いを反省している。特に、本書は、簡潔な記述の中に様々な余韻を残していて、それでいて生々しく、何とも言えない強い印象を受けた。

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2018年07月08日

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南米の地で夜間に飛行機で郵便物を運ぶ新事業に従事するパイロットたちと、ブエノスアイレスで彼らを待つ責任者の一夜の小説。突然の大嵐に見舞われた一機がわずかな燃料を残して通信途絶するという緊迫した展開、冷徹な判断を旨とする責任者リヴィエールの苦悩からくる緊張感はこの短い小説が進むにしたがって張りつめてくる。非常に完成度の高い小説だ。
だが、私がこの小説に心をつかまれたのは空の世界の幻想的にうつくしい描写だった。冒頭から夕暮れの光に満たされる平野が眼下に広がっていて、時に草原にポツンと漂流する一軒家にパイロットは翼で挨拶すると語られる。もうそこで、捕まえられたな、という感じがした。
一番印象的なのは、墜落寸前のパイロットが嵐の雲の上に抜け出て、満天の星と満月に光り輝く雲海に出る場面だ。強い死の香りの中で、静謐な楽園をゆく一機の飛行機。その世界の中で「美しすぎる」とパイロットは思うけれど、私だって思っていた。そう、この小説は美しすぎる!地べたで苦闘する人間の絶望的な戦いを描きながら、同時に空の上の圧倒的な美を見せてくれる対比の残酷さ。それが否が応にも空の美しさを引き立ててしまうのだ。
自分も輸送インフラで働いていたので、リヴィエールが何十年も飛行機一筋で働いていた職員を一度のミスで首にする場面は胸がギューっと痛んでしまったのだが、そこ以外は完璧な小説だった。今からもう一度読もうかな。

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2025年09月21日

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ネタバレ

郵便物を運ぶ飛行機に乗るパイロットと、それを指揮する会社を回す人たちの話。

序章がネタバレのために本編の後ろに回されているが、そこに書かれている時代背景を知らずに読んだので、ただ単にパイロットが使いつぶされた話のようにも思えた。彼らの基準では名誉ある死だったのか、あるいは単なる犬死にのどちらだったんだろうかなどと思った。

主に空を飛んでいるパイロットと、地上でその動向を見守る社長のシーンを行ったり来たりしながら進むが、どちらも緊迫感が感じられる。ただやはり、パイロットの描写の方が好みだった。

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2025年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

時代を思わせる夜間郵便配達の過酷な状態とそれに従事する人々の矜持と心理。
部下に危険を回避するのは臆病で懲罰ものだ、と鼓舞する指導は、現在における日本の雇用の考え方では、亡くなられた遺族の訴訟や再演防止策の策定などで仕事が確実に滞ることもあり、危険なことはさせない。それに対し、ありえないくらい危機管理が希薄だが、現代に置いても戦争をしている当事国なら今もこんな考え方に至ることもあるのかと考える。
後半、郵便配達パイロットのファビアンの消息について、緊迫した情景描写とともに描かれ、最後まではらはらさせる読ませ方は上手い。
郵便配達パイロットの目線での人々の営みを観察し、思いを馳せるところは、皆がそれなりに心のなかで感じている事であり、共感する。
運行業務責任者であるリビィエールの苦悩と孤独も、管理者の辛さを浮き彫りにする。
以前、新潮文庫版の読みにくさに途中で投げ出したが、本作ではとても読みやすく、かつより豊かな表現で描かれていると感じた。
翻訳小説は、役者の方針でかなり変わると痛感させられる。

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2021年10月23日

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