【感想・ネタバレ】県庁おもてなし課のレビュー

あらすじ

とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員・掛水は、地方振興企画の手始めに、人気作家に観光特使を依頼するが、しかし……!? お役所仕事と民間感覚の狭間で揺れる掛水の奮闘が始まった!

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

地方公務員を目指す人、地方公務員の人、地方公務員と関わる人、観光に関わる人全員に読んでもらいたいと思う1冊。主人公の成長や登場人物たちの人間ドラマと共に、地方を盛り上げる仕事の世界に没入できる。

まず、観光業について。

地方は人口が減り、経済を回して生活に必要な行政サービスを保つには地域外からの「外貨」を獲得する必要がある。その重要な手段となるのが観光業。

特段人を惹きつける「客寄せパンダ」になるコンテンツがない地域に人を呼び込むにはどのような視点が必要なのか?不便でも、何もないように見えても、実は人を引き寄せる魅力が地方にはある。そこに住む人にとっては当たり前すぎて特別ではないと思い込んでいるものが、地域外の人にとってはわざわざそこに行く理由になる。

ただ、せっかくのコンテンツもそこにあるだけでは外の人に届かず、その地域の魅力をどのように届けるかが重要。

次に、民間と行政の違いについて。

この小説の中では仕切りに時間感覚や仕事を進める上での壁といった民間と行政の違いが描写されている。

民間人は役所と関わりながら仕事をするとスピードの遅さに苛立つことがあると思うが、行政は仕事の仕組みそのものが非効率を強いられており、「両手を縛られている」ような状態。「こうすれば目的を達成できる」「これは無駄だから変えるべき」とわかっていても、それができないもどかしさがある。行政組織の中で何が起こっているのか、この本を読めば理解することができる。

残念なのは、この小説が刊行された2011年から14年経った今も、多くの組織課題は解決しておらず、地域を良くしたいと思う公務員の足枷になっていること。

地方自治体だからこそできる仕事もあれば、逆に地域のためになるのに自治体ではできない仕事、やりにくい仕事もある。

どこまで行っても、それを知って自分はどう動くのかということにはなるが、この本はリアルな描写で地域を盛り上げる視点を授けてくれる。


0
2025年06月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

有川浩さんの地元愛にほっこりし、観光に関する知見の深さと清遠さんを通じて出てきたアイディアに感心した。この人小説家だよな?観光の人じゃないよね?県庁で観光振興をするならこんなことを実現させてほしいという希望が詰まった一冊。お役所感覚の民間感覚とのギャップには驚いたけど、少なくとも登場するおもてなし課には清遠さんをを退職に追いやったような「内なる敵」が存在せず、主人公掛水がだんだんと活きのいいカツオのように成長して逞しくなっていくのがよかった。個人的に、役所が主催するイベントの運営に携わったことがあったり、興味があったりするのだが、あとがきにもあるように1番は「お客様視点」に返ることという文章が身に沁みた。ユーザーに寄り添えない都合は解消しなければならないって、すごく難しいのだけどその通りだと思う。この本からは、「企画」の根本を教えてもらったと思う。そして、小説家1人でここまで構想しちゃう有川さん恐るべし。いい本に出会いました。
有川浩さんの前期作ばっかり読んでたので、吉門喬介という新たな性格のキャラクターが出てきたことにワクワクした。三匹のおっさんもフリーター家を買うも、空飛ぶ広報室も、早く読みたい。

0
2024年11月23日

mac

ネタバレ 購入済み

民度を測るはトイレにあり

一部ご紹介します。
・観光地の偏差値は、トイレによって決まる。
観光地として成熟しているところはトイレに困らない。
水洗で清潔、和式洋式バリアフリーと取り揃えて、紙も切らさないのが標準仕様。
客商売で一番の肝は水回り。
たとえ部屋がボロでも水回りさえよければ『うらぶれた宿』で押し通せる。

逆にトイレや風呂が汚ければ、その他の条件がどんなに良くても全て否定される。
居酒屋でも、トイレを男性用と女性用で分けるところは好印象を得られやすい。
客の印象に一番強く残るのは、生理的な欲求だからだ。要は食事と排泄。この二つはセット。
総じて、我慢が利かないことのほうが人間は採点が厳しいものだ。
空腹は我慢できても、便意は我慢しがたい。
切羽詰まったところへ汚いトイレに当たったら、その土地の評価は大暴落だ。

0
2022年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「おもてなし課」が高知県の観光発展のために奮闘するストーリー。田舎の人が「自分たちの町には何もない」と町の魅力に気づけていないところはすごく共感できた。どの田舎の町でも、同じように考える人は多いと思う。
掛水や多紀、吉門や佐和のやり取りも次の展開が気になってしまい、有川さんの書く文章は好きだなぁーと改めて感じた!
普段あまり関わることのない「県庁」や「観光」という分野に触れることができて、とても面白かった♪

0
2025年09月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高知県の県庁で働いている掛水が徐々に「お役所の人」から成長していく物語。

お役所の仕事に関しては全く知らない状態だったので、読んでいて勉強にもなった。
民間の人から見ると非常に堅いし動きはスローペースに見えるという点は初めて知ったが何となくイメージしやすかった。

そんな中でも「おもてなし課」という比較的自由な課でどのように観光を推進していくかが課題となっていたが、
多紀との恋愛要素があり、清遠や吉門と徐々に距離を縮めて親睦を深めていく場面があり
読んでいてほっこりする場面が多かった。

清遠が出した高知県丸ごとレジャーランド案は、そのように「何もない」状況を活かすのかと感心した。
物事は捉えようによってポジティブに変えられるなあと思った。
確かに観光地に旅行に行ったとき、馬路村のような秘境と呼ばれる場所は不便であるからこそプレミア感が出ると感じる。

今度高知県に是非足を運んで自然を満喫してみたいと思える小説だった。
個人的には、おもてなし課存続の危機!などハラハラする場面があるとより没頭して読むことができると感じた。

0
2025年01月18日

「小説」ランキング