【感想・ネタバレ】不見【みず】の月 博物館惑星Ⅱのレビュー

あらすじ

地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館〈アフロディーテ〉。そこには全世界の美術品や動植物が収められ、データベース・コンピュータに直接接続した学芸員たちが、美の追求に勤しんでいた。そんな博物館惑星に赴任したばかりの新人自警団員・兵藤健は、インタラクティブ・アートの展示管理や「不見(みず)の月」なる絵画の盗難にまつわる謎など、さまざまな事件に対処するが──『永遠の森』に続く《博物館惑星》シリーズ第2作。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

もう20年近く前になるけれども、メトロポリタン美術館に行く機会があり、現代アートのエリアに、黒く塗られた大きな四角い作品があった。それがいったいなんなのか、かなり近づいて見ていたら、警備の方に「近くだと直線なのに、離れてみるとサイドが歪んで見える作品なのだ」と教えてもらったのをふと思い出す。

これもひとつの美術作品なのだというのが、当時高校生だった自分にとってすごく面白かった。
同時に、それを「美しい」とは思わない人もいるだろうなとも思う。

「美とはなにか」という問いに正解はないとしても、AIに“理解”させるというのはひとつのゴールになるだろう。
その試行錯誤の過程が、この作品では丁寧に描かれていく。

それにしても先見の明というのか。
この作品が出たのが2021年。2022年にChatGPTが登場する少し前。
画像生成系のAIが流行っていたくらいのタイミングだろうか。
そのなかで、前作からの流れをしっかりと汲みつつ、今読んでも違和感がない物語を紡ぐなんて偉大過ぎるでしょう。

生成AIに感情を教えることはできるのか、なんて、今まさにテーマになる領域だし。

久しぶりに前作を読んで、続きが出ているのを知ってすぐに読んだけれども、
19年空いたとは思えないくらい、同じ雰囲気をまとっていて、
それでいてしっかりと作品内でも時間が経っていて、
あぁみんな変わらずにやっているなと、なんだかほっとしたりする。

私の好きなお仕事小説のひとつでもあるんだよな。
みんな自分の限界に悩んだり、同僚といろいろやったり、上司を頼ったり、ときにやらかしたりしながら、頑張ってるよね、と感じられるのも、この作品の好きなところ。

0
2025年05月22日

「SF・ファンタジー」ランキング