【感想・ネタバレ】うたかたの日々のレビュー

あらすじ

青年コランは美しいクロエと恋に落ち、結婚する。しかしクロエは肺の中に睡蓮が生長する奇妙な病気にかかってしまう……。愉快な青春の季節の果てに訪れる、荒廃と喪失の光景を前にして立ち尽くす者の姿を、このうえなく悲痛に、美しく描き切ったラブストーリー。ヴィアンの代表作であり、20世紀フランス文学の「伝説の作品」が、鮮烈な新訳で甦る! 映画『ムード・インディゴ~うたかたの日々~』原作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと夢日記を読んでいる感覚だった。

「コランは道を走っていた。 「きっとすばらしい結婚式になるぞ……。明日、明日の朝だ。友だちはみんなきてくれる……」  クロエに通じる道だった。 「クロエ、あなたの唇はやわらかい。あなたの顔は果物のようにつやつやだ。あなたの目はしっかりとものを見ている。そしてあなたの体はぼくを熱くしてくれる……」  ビー玉が道を転がり、子どもたちがそのあとを追いかけてきた。 「あなたに十分キスしたという気持ちになるまでには、何カ月も、何カ月もかかるだろう。あなたに、あなたの手に、あなたの髪に、あなたの目に、あなたの首にキスしたいというぼくの想いが尽きるまでには、何カ月も、何年もかかるだろう……」  小さな女の子が三人いた。まん丸の輪舞曲を歌いながら三角を作って踊っていた。」

こんなふうに人を想えたら素敵だなーと思う

「明日は一緒に森に行こう、またあのベンチを訪れるんだ、彼女の手はぼくの手の中に、彼女の髪はぼくの髪のそばにあって、枕には彼女の匂いがして。ぼくはいつでも彼女の枕を取り上げる、夜は決まって枕の取り合いになるんだ、ぼくの枕は詰め物をしすぎだと彼女はいう、頭を載せてもまん丸なままだって。そこでぼくは自分の枕を取り戻す、そこには彼女の髪の匂いが移っている。ぼくが彼女の髪の甘い匂いをかぐことはもう二度とないだろう。」

「あの人、岸辺にいるのよ」ハツカネズミはいった。「じっと待っているの。そして時間になると、板を渡っていって真ん中で立ち止まる。水の中をのぞきこむの。何か見えるんだわ」
「たいしたものは見えないだろう」猫はいった。「睡蓮の花くらいかな」
「そうよ」ハツカネズミはいった。「あの人は睡蓮が水面まできて自分を殺してくれるのを待っているの」

由希さんのオススメは全部良いな

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2023年09月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表題どおり、この小説はなによりも美しく、なによりも儚いもの、つまり「きれいな女の子との恋愛」と「デューク・エリントンの音楽」に捧げられている。

ひさしぶりに読み直して感じたのは、精緻に描かれたコントラストの妙。物語は、街から色彩の消える冬に始まり生命が躍動する新緑の季節に終わるのだが、登場人物たちの世界はそれとは反対に、徐々に色を、そして音楽を失ってゆく。彼らはいってみれば、彼らの住む世界との「同期」に失敗したのだ。その残酷さと不条理さ……。

破天荒なファンタジーのような顔をもつこの小説をはたして「読める」かどうかは、ボリス・ヴィアンの「感性」にどこまで肉薄できるかにかかっているような気もするが、そのいちばんの方策はまず、解説で訳者が言うように「奇天烈さをごくりと飲み込」んで、そこに繰り広げられる「いっさいを受け入れる素直さ」をもつことだろう。

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2011年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

愛に全てを注ぎ込む二人の男のその行く末。
一人は一人の女を愛した。女が元気な時には彼女を楽しませる為に、病気を得てからは治療の為に持てるものを全てを注ぎ込んだ。
もう一人は思想を愛した。そしてその思想を生み出す思想家を絶対視するあまり、彼に関するもの全てを蒐集せずにいられなくなり、自分を愛してくれる女も捨て、破滅へと向かって一直線に進んでいく。
淡々と進行していく物語。美しい黄昏のような小説。

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2012年03月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初はただただ不可思議な物語世界に混乱するばかりだったが、よく夢に見るような世界なんだと思うようにしたらだいぶ読みやすくなった。
夢の中ならちょっとくらいおかしなことも起こるから。

クロエが病気になって以降、ただの幸せな夢の中から、悪夢の中に入っていくようだった。私は悪夢パートの方が読みやすく感じた。そう考えると、現実は基本的に悪夢なのかもしれない。

数年後に読むとまた感想が変わりそうな1冊。

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2024年01月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

マスターピースにはマスターピースとして語り継がれる理由があるとあると思うのですが、解説を読んで納得しました。きちんと時代背景とヴィアンの生涯を作品に昇華させていますね。

解説ではこのポップで独特な筆致を「言葉遊び」と「記号表現の遊び」と文学的な論理で詳しく解説していますが、要はファンタジックで絵本のような世界観を受け入れられるかどうかだと思います。僕も読み始めはどうかと思ったけど、意外と面白かった。

古典作品は難しい翻訳がつきものですが、これは訳者が頑張ったのか、結構サクサクと読めますね。一度目は予備知識なしで読んで、二度目は時代背景やヴィアンの生涯を理解した上で読みたくなります。

読むきっかけは映画化ですが、ポップでファンタジックな切り口監督のはミシェル・ゴンドリーと非常に相性が良かったと思います。コランとクロエの出会いのシーンなどは、原作と違って、映画的な別の味わいがありました。ただ一点不満点を言うとすると、コランとクロエの配役…ロマン・デュリスとオドレイ・トトゥはさすがにないかと。もうちょっと若くてカッコいい俳優いなかったんですかね?ってまぁ、この辺りは制作側のジャッジで色々あるんでしょうけど…。

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2013年11月03日

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