【感想・ネタバレ】炎立つ 参 空への炎のレビュー

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ネタバレ

前九年の戦さが終結し、安倍一族は滅亡した。
安倍を支えた貞任と経清という二本柱の壮絶な最期に涙腺が緩んだ。特に経清の最期といったら……頼義との愛憎が安倍を巻き込んだと言っても良いのでは、とすら思う。
しかし、あれだけの強さを誇った一族が身内の裏切りによって呆気なく敗れてしまうのだ。
敵を手引きした身内も一族と血統の行く末を案じて浅慮の結果、敵方と内通したという遣る瀬無さ。
一概に敵と味方、善と悪に分けることのできないうねり。これがヒトなんだなぁ、こうして歴史が作られてきたんだなぁと妙に感じ入ってしまった。

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2022年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

奥州藤原氏を描いた歴史小説第3巻。
前九年の役、出羽清原氏の参戦・安倍氏内部の裏切りによる安倍氏の滅亡まで。

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2014年08月16日

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ネタバレ

平安後期の陸奥を舞台にした全五巻の長編。
第一巻~第三巻はいわゆる前九年の役での安倍氏と藤原経清、源氏を巡る話。
第四巻は藤原経清の遺児、清衡が後三年の役を通じて安倍氏の血を再興するまでの話。
第五巻は奥州藤原氏が滅亡する際の源義経との関わりを描く話。
率直に言えば、第一巻~第三巻が最も見どころ(読みどころ)がある。個性の際立つ安倍貞任、藤原経清、源義家の交流と戦場での邂逅に心踊らされ、それぞれ異なる立場での苦悩に多くを考えさせられた。史実として知られていることが少なく著者の自由な想像力を働かせる余地が多かったのだと思う。読者として既に多くを知ってしまっている戦国・幕末あたりの題材と比較して自分にこの時代の知識が少なかったのも先の展開の予想がつかない面白さにつながり、あっという間に読み切ってしまった。

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2012年08月26日

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ネタバレ

1051年前九年の役の物語、戦争終結。熱い武士の美学と、戦に勝つための策謀が活き活きと描かれる。おもしろい。


 何がいいって、蝦夷の地は朝廷に敗れた者の流れ着いた地という設定がきちんとあるというところだよね。
 そういう背景を背負っているからか、ジワジワくるものがある。そう、あらゆる情景がジワジワと読み手に作用していく、そんな作品。


 美学について考えさせられる。


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p16 清原氏
 安部氏は頼義との戦ののち、朝廷に恭順する姿勢を貫き、和議の手前まで我慢し漕ぎつけた。このまま安倍氏が存続できるようになれば、そこから力を十分に貯めて朝廷に匹敵する勢力を東北に気づくことができると考えていた。
 しかし、もしそうなると困るのは清原氏である。安倍が強くなるということは、東北に勢力を持つ清原氏は潰されるか飲み込まれるかのどちらかである。だから、もし安部氏が朝廷と和議を持つようなら、頼義としてもピンチだが、清原を味方に引き入れる最後のチャンスになるのである。

p32 内部分裂
 貞任の母:瑞乃が貞任の考えを裏切ることをした。
 瑞乃は、今後の安部氏の本流が自分の血を継ぐ者でなくなることを恐れた。安倍頼良の側室の娘(結有)を婚姻を結んだ藤原経清が安部氏の中で重役に着くようになり、経清に安部氏を乗っ取られるのではないかと考えるようになった。血筋の良い経清は新たな陸奥国主になることが予想される。そうなれば、安部氏が経清の配下になるということ。瑞乃の孫である千代童丸が経清の子:清丸(奥州藤原三代の藤原清衡)の配下になるなんて悔しい、そんな風に甘んじるくらいなら源頼義と戦をしてどさくさに紛れて千代童丸が党首になれるように仕組んでやればいい。そういうことで、金為行(千代童丸の祖父)と安部氏の朝廷との和議不成立を画策、清原氏との内通を図った。
 実に恐ろしきは、手ごわい敵よりも、愚かな味方であるなぁ・・・。

p46 罪
 安倍頼時(頼良)は金で罪を造った。その金によって敵を作り東北の地の平和を乱した。安倍貞任は力で罪を作った。その強すぎる力は恐怖を産み敵を作って、これから戦を始めさせる。誰が悪いわけではない。持ちすぎる「力」が罪を作るのである。まさに「悪」は「力」だ。
 これから清原が東北を納めるようになれば、そこからは清原が「悪」である。清原武則は一笑に付した。

p54 都母ノ石碑(ツモノセキヒ)
 坂上田村麻呂が東北を津軽まで平定した暁に、「日本中央」の文字を刻み込んだ。それが朝廷の力の証になったが、それから百年もすると津軽の地は朝廷の入り込めない地となった。そして今の安部氏がいる。

p61 蝦夷の祖先
 金売吉次は言う「この国は我らが開いた国だった。我らの祖先は出雲を本拠としていたが、帝の勢力に追われて諏訪や津軽に逃れた。斐伊川という川が出雲に流れているが、斐伊を本拠とした民ということで祖先は斐の本の民といわれた。陸奥に大國主を祀った神社が多いと思わなかったか。物部の祭神は蛇、素戔嗚が倒した八岐大蛇も蛇だ。大國主とて元は「大穴持」、火炉を持つ者よ。」
 物部氏の子孫の吉次は追われた者と言うこと。騙りだね。これ、QEDで読んだ。

p62 長髄彦
 安倍の祖先は安倍長髄彦だという。神武天皇の東征で最後まで戦った近畿の豪族である。敗れて東北に逃れてきた。

p244 戦馴れ
 源頼義の強さは何か。それは経験による忍耐強さにあると経清は読んだ。若さゆえに戦の勝機を逃すことがある。我慢できず無謀な戦闘をしたり、兵を死なせたショックから精神を病んだり、作戦失敗で早々に諦めてしまったり…。頼義は経験から陸奥で12年も耐えて、この戦までこぎつけた。戦のチャンスを12年かけて熟成させたのである。こんなことができるなんて、稀代の強者よ。
 経清は戦慄した。

p366 女のせいで
 貞任は母の瑞乃、妻の流麗のために頼義との戦に臨むことになった。女の情念のために、東北の民の命が何千と失われた。
 女は正義に生きる。それも、気色悪いほど清廉潔白な正義に生きる。その清さが毒となって、息を断たれる者が出る。
 女は…こわい…。

 とはいえ、これは貞任も悪そうだ。流麗と会話をしなかった貞任も悪い。交流せずに、理解し合おうとするから、相手の気持ちを捏造し合うことになって、狂気に行き着く。男は黙って…がカッコイイし、当時の武士はそういうもんだろうけれど、、、
 貞任、あなたに見習いたいと思う。

p372 青い炎
 厨川の柵に籠城した安倍軍は義家の策の火攻めに遭っていた。流麗らは火消しの祈祷をすることにになった。それが流麗のせめてもの罪滅ぼし…、ウウッここ切ない。
 祈祷で護摩にくべられた呪符を燃やすと青い炎が上がった。これは呪符の裏に燐を塗り付けてあったからだが、演出としてこういう化学的なことが行われていたんだなぁ。これがきっと魔術なんだろうなぁ…。

p433 伝承
 あとがきで作者は語る。義家が厨川の柵を攻めるために陣を張った八幡の森を訪ねたら、森はとっくに削られてバイパスができていたとのこと。それに対して、、、
 伝承と歴史は違う。だから史跡指定もされずに簡単に森が削られてしまったのだおうが、やはりさびしい思いを味わった。八百年の隔たりと言うことよりも、わずか2,3日張っただけの陣跡など無意味という判断だろう。こうして伝承はますます薄れていく。中央から抹殺された地方の歴史は地名や伝承に手がかりが隠されている。なのに地名を変え、伝承を持つ場所を破壊する。それを行いながら地方文化の復権を叫んだとて意味がないのではないかとつくづく感じた。せめて文字の上だけでもそれを果たしたい。それがこの巻の大きな支えとなったのは確かだ。

 ほぇ~。

p435 差別
 「東北人はどんな逆境にもめげず黙々とわが道をゆくエライ人。スバラシイデスネー。」
 こう言われるのは褒められてると思っていたけど、よく考えたら、まるきり使役する側の理想だって。

 騙りだね。「君達は偉いねぇ~。働くのが好きなんだねぇ~。さすがだよぉ。じゃあこれもお願いしちゃおうっかなぁ~。」ブラック企業のやり口だ。東北人にそうあれと、言葉で、言霊で縛りをかけている。やべぇ。




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 炎立つの炎とは

 QEDの読みすぎな僕からすると、タタラ場の火炉のことを指しているのかなと思う。製鉄民だった東北の人々が蜂起する。それは再びタタラ場に火が灯って、燃え盛る火炎となって朝廷の下まで燃やし尽くさん勢いを持つということなのかな。

 今回の吉次とかの言葉でぐっとそう思った。





 しかし、、、弱い。真面目すぎるからかなー。弱みに付け込まれて、炎は鎮火してしまう。昔からそうなのかもな、そう思ってしまう。敵を騙す強さを持っているから、朝廷は権力者になれているのだろう。

 やはり「強さ」=「悪」で、「弱さ」=「美」なのだろう。武士としての在り方・美学を貫けば、悪い敵には勝てっこないのだ。
 その美しくあることが東北の民には強制されているというのは…心が痛くなった。

 美しさは、個人が持つもの。「他人に美しさを持たされる」この状態を見つけたら恐ろしさを覚えるようにしよう。

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2015年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

R4.8.7~8.27

(感想)
前九年の役、完。
じっくり丁寧に描いてきました。
あと2巻で、藤原3代の興隆がどう表現されるのか、楽しみです。

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2022年08月27日

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