【感想・ネタバレ】病の皇帝「がん」に挑む(下)人類4000年の苦闘のレビュー

あらすじ

20世紀に入り、怪物「がん」と闘うには「治療」という攻撃だけでなく、「予防」という防御が必要であることがわかる。かくて、がんを引き起こす最大の犯人として、たばこが指名手配されたが……人類と「がん」との40世紀にわたる闘いの歴史を壮絶に描き出す!
1964年1月、アメリカ公衆衛生局長官はひとつの報告書を発表した、「たばこはがんの主要な原因である」と。たばこ産業にとって、この報告書はまさに爆弾であった。この時から全世界に覇権を広げるたばこ会社と、「がんの予防」を推進する人々との熾烈な戦いが始まる。そしてまた、巨大企業、患者、医師、研究者とのあいだの壮絶なドラマは、がんを治す「新薬」をめぐっても行なわれていた。 その一方で、分子生物学の進歩は、がんの根本的な原因を明らかにする。異形の怪物の原因は、我々自身が体内に持つ遺伝子の突然変異の蓄積によるものだったのだ!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

そして下巻はがんの予防、そしてついに来ましたがんのメカニズム解明。

細胞分裂の開始と終了を司る遺伝子が変異するのが原因、てことで分裂のアクセル踏みっぱなし、かつブレーキが壊れた状態になってまうらしい。そりゃワサワサ増えるわな。。。で、その遺伝子を標的にした、副作用の少ない分子標的薬がついに出回り始めました、という現状でこの大作は締めくくられとります。

最後まで読んでふと思ったのが、実は"がん"って病気とは違うんとちゃうか、と。もちろん発がん物質のような外部要因もあるけど、普通の細胞分裂でもDNAのコピーミスが発生して、そこからがん、ってのも確率的にありうる話やからなあ。

あらかじめ生命の設計図に記載されてる、自分の別バージョンみたいなもんとも言えるなあ、とそんなことを考えさせられました。もちろんできれば発症したくはないけど(-_-)

がんを知るにはホント最適な本やと思うので、あまねく人にぜひオススメ!

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2014年02月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ガンがエジプト/ペルシアなど古代文明で認識(ペルシア王妃が乳がんを切除)されて、そのかにのような固さ、広がった形からcancerと名付けられてから、現代までの経緯を著者自身の臨床経験と交えて熱く語る今年一番の力作。
特に20世紀は寿命が伸び、タバコなどの発がん性物質もより一般化して来たガンの世紀となった。一方治療も手術は過激ともいえる、できるだけ切除する方法、化学療法は大量のカクテル療法を行い、正常細胞を死ぬまで追い込むあるいはがん化させるリスクを十分冒して対抗した。その背景は、遺伝子に異変を引き起こすガンの仕組みが明らかではなく、対処療法にとどまったことだ
21世紀の後半にかけて
1.増殖シグナルの自己否定、2.増殖抑制シグナルへの不応答、3.アポトーシスの回避、4.無制限な複製力、5.持続的な血管新生、6.組織への浸潤と転移
と行った特徴が明らかになった。がなかなかこれらの知見に対応する治療法が生まれず/認可されず、時間の限られた患者との間での摩擦が高まった(エイズも同様)。しかし1980年代後半から、増殖シグナルを抑制する分子標的薬ハーセプチンの研究/認可が進むなど局所疾患、急激な成長、生体の機能の利用(血管を持ってくるなど)へ対応した治療法が出て来ており、完治数がこの20年で毎年改善していることは医学の勝利への希望が高まっている。

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2013年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

がんの分子標的薬は、がん遺伝子を直せく不活性化するものと、がん遺伝子によって活性化されるシグナル経路を標的とするものがある。

現在は、がんゲノム解析プロジェクトが進んでいる。
がんゲノムの変異には、ドライバー変異とパッセンジャー変異がある。ドライバー変異はがんの増殖を直接誘発しており、当該がんの標本上で繰り返し起きている。パッセンジャー変異はランダムで無害だ。
また、これらの変異による繋がりを「がん細胞の活性化経路」として分類し直すと、11~15(平均13)種類の経路となる。

今後がんのメカニズムが明らかになると、がん医療には三つの大きな方向性がもたらされる。
一つめは治療の方向性で、13種類の経路のうちいくつかを標的とした阻害剤は既に臨床で利用されている。
二つめはがん予防の新たな方向性で、活性化経路への影響を調べることで新たな発がん物質の検出方法が発見される可能性がある。
三つめはがんの挙動全体の説明で、異常遺伝子と経路に関する知識を統合することで新たな知識と発見ひいては治療的介入のサイクルを一新させる可能性がある。具体的には、がんの不死性は造血幹細胞のような正常な生体の再生を真似ているという説がある。

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2020年02月23日

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ネタバレ

癌の歴史がよくわかった。ハーセプチンやグリベックの話まで登場してナイス!
癌が遺伝子の疾患だということがよくわかった。

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2016年03月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

後半は喫煙やアスベストなど、公衆衛生学上の知見によるがん予防、バップテストなどによる早期発見など、本格化するがんとの戦いが描かれる。

HBVなどのウイルスやピロリ菌などの細菌による、環境因など、様々な要因によってがんが起こる原因として、細胞の分裂をつかさどる遺伝子の変異(がん遺伝子)や、暴走を制御する遺伝子(がん抑制遺伝子)の変異が明らかになり、これらは数百も見つかる。がんを起こすのは通常、こうした遺伝子一つのみの異常ではなく、複数の遺伝子が障害されることによる。一つの遺伝子異常を抱えたまま静かに増殖する細胞群の中に、2つ目の異常が起き、3つ目がおき、、、がんになる。

タモキシフェン、ハーセプチン、グリベックなど、薬物療法の開発は進み、がんゲノムシークエンスにより、複数の遺伝子が障害されてがんが発生するメカニズムも明らかになっている。現状はまだ、がんは手強い存在であるが、今後は明るい(?)と思わせる書きぶり。

・がんのウイルス(鳥に肉腫をおこすウイルス)を最初に見つけたのはペイトン・ラウスであった。30歳の時に見つけたが、当時はその発見を冷笑され、87歳になってようやくノーベル賞を受賞した。

・乳がんの手術は時代とともによりラジカルな術式に移っていき、それはより広範で、身体的な代償を支払う手術であったが、1981年に大規模な臨床研究の結果が発表され、単純乳房切除術と長期予後は差がないことが示された。今日では、根治的乳房切除術が施行されることはほとんどない

・スクリーニング検査の指標として生存期間を設定するのはよくない。全く同じ時期にがんが発生した場合、鋭敏なスクリーニングでがんがみつかり、5年後に亡くなったケース、スクリーニングを受けずに同じ時期に亡くなったケース、二例を比較すると一見、スクリーニングにより5年、余命が伸びたように見えるがこれは間違い。このバイアスをリードタイムバイアスという。

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2014年05月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

がんと人類の歴史。
がん「闘う」とは何か。
その言葉だけでは言い表せない。
治療により失うもの、得たもの。

あるいは、何か理由があって備わった機能なのか。

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2025年08月03日

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