あらすじ
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように……。若者の祈りに応(こた)えて、北海道の小さな牧場に、一頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇(ドラマ)が、幕を開けた――。
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Posted by ブクログ
北海道の静内、渡海千造の営む小さな牧場のトカイファーム。
そこへ息子の渡海博正と同い年で大学生の和具久美子が大阪から和具工業の社長であり、父の和具平八郎とともに、今、生まれようとする仔馬を見にやってきます。
生まれてくる仔馬はウラジミールとハナカゲの子のサラブレッドで、のちに和具の秘書の多田により「オラシオン」スペイン語で祈りと名付けられます。
仔馬は平八郎が三千万円で買いとり、平八郎は久美子に隠し子がいるという秘密を母に内緒にするかわりに譲ります。
久美子は父の隠し子の誠が同じ血液型の血縁である父からの腎臓を提供され手術をしないと生きられない病気であると知り、誠の入院先の病院に逢いに行きます。
そして久美子はオラシオンを誠の生きがいになればと思い誠に「譲る」と言います。
平八郎もまた妻には秘密にしていますが、身辺整理を始めます。
博正が久美子に見惚れていると姉に「あの娘はお前の手に負えるような娘じゃないよ」と言われたのは確かにと思いました。
行動力があって世慣れていて、口が達者。でも愛すべきキャラクターだと思います。
他にも子どものいない和具の秘書の多田。
騎手の増谷、奈良などの登場人物がいます。
久美子と誠の義姉弟がどうなるのか。
オラシオンのサラブレッドとしてこれからの活躍ぶりを期待して下巻へ続く。
Posted by ブクログ
言わずと知れた宮本輝の名作。
競走馬を中心にして、さまざまな人間模様が描かれる。
一人ひとりの個性が強烈に出ていて物語の世界観に入り込むことができる。
Posted by ブクログ
競馬は夢を買うというセリフが出てくるが、夢だけではないということが上巻だけでもよくわかる。冒頭の出産シーンから産まれた子馬が成長する物語かと思ったが、そうではなく子馬を取り巻く人間たちの話に展開していく。牧場主の息子と子馬のシーンには感動したが、そこからはお金が出てくる現実の話。最後にはショッキングなシーンが出てきてビックリした。
Posted by ブクログ
昔映画で観たことのある作品。
競馬のことをよく知らなかったり、主要人物の久美子に共感できなかったりと、読み始めはあまり進まなかった。
しかし、後半からの秘書の多田の内面の描写や、騎手の奈良に起こった出来事のあたりからぐいぐい引き込まれた。
一度は自分の犯したことから堕ちかけた奈良の今後の成長に期待。
Posted by ブクログ
同僚の書評に魅せられたのが動機。サラブレッドの誕生・育成の過程を主軸に、それに関わる生産者・馬主の人間模様が複雑に絡み合い、ほぼ一気に読破してしまった。ただ、主役の馬のダービー優勝で終わっていたのが、やや物足りなさを残した。しかし、その大仕事を成し遂げたことが、その後のことが全て上手く行くことの暗示と捉えれば、下手に具体化しない方が余韻を残していいのかも?
Posted by ブクログ
感想
競馬にまつわる馬主、調教師、厩務員、騎手などの人間関係も泥臭く書かれている。競馬を題材にした人間関係が書かれている。
和具の娘の久美子が人生舐めたお嬢様という感じでどうも気に入らない。今後の話のキーになるほど重要な人物なのだろうか?
あらすじ
渡海ファームの跡継ぎの博正は高校を卒業したばかりの18歳。この年は、渡海ファーム期待のハナカゲのお産、姉のお産、飼い犬のお産と忙しい年だった。どのお産も上手くいき、渡海ファームはハナカゲの子のクロに多大な期待を寄せていた。
和具は大阪の2代目社長で会社を大きくした功労者だ。馬主はもう辞めようとと考えていたが、クロと出会い、馬主になる。和具は、愛人の息子が腎不全で移植しか助かる道がないと知って、自分の腎臓をあげるか迷う。ちょうどその頃、娘の久美子からクロがほしいとねだられて、息子のことも打ち明けて、クロを譲る。クロは和具の秘書によってオラシオンと名付けられる。
最近頭角を現してきた騎手の奈良と4連勝中のミラクルバードを巡る話。騎手の乗り方や実力だけではない世界の話。