あらすじ
1945年8月15日、玉音放送。国民はそれぞれの思いを抱えながら、日本の無条件降伏を知る。国境の島・占守(シュムシュ)島では、通訳要員である片岡らが、終戦交渉にやって来るであろう米軍の軍使を待ち受けていた。だが、島に残された日本軍が目にしたのは、中立条約を破棄して上陸してくるソ連軍の姿だった。――美しい北の孤島で、再び始まった「戦争」の真実とは。戦争文学の新たなる金字塔、堂々の完結。
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Posted by ブクログ
1945年8月15日、終戦。しかし、夏は終わっていなかった。日本はポツダム宣言を受諾した。日本軍の武装解除後、ソ連が占守島へ侵攻。アイヌ民族を占守島から追放した戒めであろうか。この理不尽な戦闘が起きてしまった。日本軍、ソ連軍ともに多くの死者を出した。鬼熊然り、片岡然り、正義感にあふれ、勇敢な方々が散ってしまった。日本は絶対に日米開戦はしてはいけなかったということに尽きる。戦後75年、占守島の史実を目の当たりにして、日本を守ろうとした先人への敬意と、武力で解決できることはあまりにも小さいことを認識した。
Posted by ブクログ
いやぁ、戦争は救いがないな…
わかってはいても、そう思わざるを得ない終わり方。
占守島について、終戦後何があったか事前知識なく読んでいたので、片岡も普通に召集されなくて良かった…なんて思っていた私がバカでした。
天国のように美しく花咲き乱れる占守島と、無条件降伏をしたあとに味方がいないままソ連に挑むしかなかった人たちの落差がもう辛い。
占守島の悲劇を小説にするにあたり、日本兵だけでなく大本営の参謀や、赤紙を届ける人、疎開した子ども、そしてソ連の兵士たちそれぞれの視点からの戦争を描く。
この小説に出てくるこの一節
「戦争の犠牲者をひとかげらにしてほしくない。100人の戦死者には100人の人生があり、千人の戦死者には千人の勇気があった」
が、作者が伝えたかったことを表しているに違いない。
そして子どもたちのシーンで出てくる宮沢賢治の
「星めぐりの唄」
美しい言葉には、救われることもあるのかもしれないと感じる。
Posted by ブクログ
登場人物の視点から、さまざまなシーンが次々と描かれるので、私のような短期記憶力保持者、には集中して読むことをお勧めする。暑かったこの夏。どうしても読んでたさおきたかった作品。まさか、故郷北海道からさらに遠い、あの島々でこんな歴史があったとは知らなかった。ラストにロシア人兵士の視点から、登場人物の最期が語られるシーンは読んでいて胸が痛んだ。
いつか、今年のような、暑い夏に読み返したいと思った。タイトルに反し、もう夏が終わる。
Posted by ブクログ
暗い内容で気が滅入り、読む終えるまでに何ヶ月もかかってしまった。
入れ替わり立ち代わりそれぞれの立場の人間が語り手となっていく手法だったが、読みづらいと感じたときもあった。
占守島の戦いのことは全く知らず、たまたま聞いていたラジオ番組のゲストが著者で本書の紹介をしていたため、手に取った。
日本でこの戦いの知名度は低いが、教科書に載せても良いのではないだろうか。
結末は救いがなく、心が重くなった。
生き残った人々はシベリアに送られ、無事に帰国できたかどうか胸が痛い。
娯楽のための読書はすばらしいが、ときどき本書のようなジャンルを読むことは大事なことなのかもしれない。